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2011/02/25   「就業規則」を整備し規律ある職場づくりを

「就業規則」を整備し、規律ある職場づくりを◆Vol.5

絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項、任意記載事項とは


2011年1月20日 菅原 由紀(川口社労士法人・社会保険労務士)


ポイント

 職場の憲法と言われる「就業規則」。就業規則を整備することが、規律ある職場づくりの一歩となります。就業規則は、ひな型などをそのまま使うのではなく、院長先生の経営理念と医療機関の実態に合わせ、労基法などの法令に則った就業規則を作成することが必要です。また、一度作成したらそれで終わりというわけではなく、必要に応じて見直しをすることが大切です。

就業規則とは

 就業規則とは、事業場で働く従業員の労働条件や、働く上で守らなければならないルールを具体的に定めた規則のことを言います。常時10人以上の職員(パート職員、アルバイトを含む)を使用する医療機関は、就業規則を作成し、職員代表者の意見書を添付して、所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません(労基法第89条、90条)。

 職員10人未満の医療機関では、労基法上は、就業規則を作成する義務はありません。しかし、勤務条件を明確にすることにより職員との無用なトラブルを避けることができますし、職場の規律を決めることで職場秩序が保たれ、円滑で効率的な医院経営が期待できます。このため、労基法上の義務がない場合でも、就業規則を作成することが望ましいと言えるでしょう。

就業規則に定める内容

 就業規則に定める内容には、労基法上必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、定めがあれば必ず記載しなければならない「相対的必要記載事項」があります(労基法第89条)。さらに、例えば就業規則制定の趣旨・就業規則の解釈の基準など、その内容が法令又は労働協約(注)に反しないものであれば、院長が任意に記載できる「任意記載事項」があります。

(注)労働組合のある事業場で、労働組合と使用者で労働条件その他に関する事項について書面を作成し、両当事者が署名しまたは記名押印したもの(労働組合法第14条)

絶対的必要記載事項
1.始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては、就業時転換に関する事項
2.賃金(臨時の賃金などを除く。以下この項において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
3.退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的必要記載事項
4.退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
5.臨時の賃金など(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
6.労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
7.安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
8.職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
9.災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
10.表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
11.以上のほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

就業規則の作成と職員への周知

 就業規則は、院長先生(事業主)が作成するものですが、職員の知らない間に、一方的に厳しい労働条件や服務規律などが定められることのないように、労基法では、就業規則を作成したり、変更する場合には、職員代表の意見を聞かなければならないこととしています(労基法第90条)。ただし、文字通り意見を聞けばよく、同意を得る、または協議を行うことまでは要求されていません。また、法的には職員代表の意見に拘束されるものではありません。しかし、職員代表の意見については、円滑な労使関係の観点からもできる限り尊重することが望ましいと言えます。

 また、就業規則は、職員の労働条件や職場で守るべき規律などを定めたものですから、職員全員に知らせて(周知)おかなければ意味がありません。周知方法としては、医院内の見やすい場所に掲示するか、あるいは職員がいつでも見ることができるような場所に備え付ける、職員に交付する、などがあります。

就業規則の効力

 就業規則は、労基法などの関係法令または当該医療機関の労働協約に反することはできません(労基法第92条)。効力は、法令、労働協約、就業規則、労働契約の順に強くなります。ただし、法令の水準を上回る労働条件を就業規則に定めた場合は、就業規則が優先されます。