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2011/06/02   解雇予告金の支払い、解雇制限要件

職員の解雇--解雇予告金の支払い、解雇制限要件◆Vol.11

辞職・合意退職・退職勧奨・解雇の違いとルール


2011年3月9日 菅原 由紀(川口社労士法人・社会保険労務士)


 ポイント

 労働契約関係の終了を意味するものには、辞職、合意退職、定年退職、解雇などといった様々な形態があります。とりわけ解雇は、他の労働契約関係の終了の形態に比べて労使紛争のなる可能性が高いため、労働基準法上の適切な解雇の手続き、解雇が禁止されている場合、有効な解雇要件などを理解しておくことが必要です。

 退職

 退職には、職員の一方的な意思表示によって労働契約を解消する「辞職」(自己退職)と、労働者と使用者(経営者側)が合意して労働契約を解消する「合意退職」があります。その他にも、雇用契約期間満了による退職、定年退職、死亡退職などがあります。

 「辞職」は、一般的には「退職届」が職員から提出されて行われます。職員の一方的な意思表示で退職の効果が生じるものですので、使用者の同意や承諾は必要ありません。

 「合意退職」には、希望退職、退職勧奨などがあります。いずれも使用者側からの労働契約の合意解約の申し入れであり、職員に退職を強要するものではありませんので、承諾するかどうかは職員が決めることができます。合意退職は、「解雇」には該当しません。合意退職は、一般的には「退職願」が職員から提出され、使用者が承諾することによって退職の効果が発生します。退職日は双方の話合いで自由に決めることができます。

 「希望退職」は、職員と使用者との双方の合意に基づいて労働契約を解約するものであり、一般的には使用者が通常の退職より有利な条件を提示することによって、その条件で退職する職員を募集するものです。

 一方、「退職勧奨」とは、使用者が職員に積極的に退職を促すものです。ただし、その際に、暴行、長時間の監禁、名誉棄損行為、執拗に退職を迫るなど、その手段・方法が社会的相当性を著しく逸脱するような場合は「退職強要」となり、損害賠償請求の対象にもなりますので、注意が必要です。

 解雇

 解雇とは、労働者の意思にかかわりなく、使用者の一方的な意思によって労働契約を終了させることです。解雇の種類には、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇がありますが、今回は普通解雇(以下、「解雇」と言います)についてご説明します。

 解雇は職員にとって重大なことですから、使用者が職員を解雇するためには、「合理的な理由があり、社会通念上相当である」ことが必要とされ、解雇予告を行うことや解雇制限規定に反しないことなど、法律で制限がされています。

 職員を解雇するには、就業規則や労働契約などの記載されている解雇事由に該当することが必要です。解雇の手続きとしては、30日以上前に解雇を予告しなければなりません。30日以上前に解雇予告をしない場合は、予告に代えて30日分の平均賃金を解雇予告金として支払うことが必要です(労基法第20条)。平均賃金とは、給与の最終締切日から過去3カ月分の給与総額を、その3カ月の総日数で割った金額のことです。なお、解雇予告期間は、予告に代わる平均賃金の支払いにより、支払った日数分短縮されます(表1参照)。

 契約期間が2カ月以内の職員の契約期間内や、試用期間(14日以内)中の解雇等には、解雇予告はいりません。ただし、労災(業務災害)で休業している期間と復帰後30日間、産前産後休業している期間と復帰後30日間の職員を解雇することはできません(労基法第19条)。

 使用者が悪質な懲戒理由等によって職員を解雇するなど、解雇予告をしたくない場合は、労働基準監督署長から「解雇予告除外認定」を受けることにより、予告の手続きを省くことができますが、懲戒解雇の場合でも、原則として解雇予告が必要です。