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2011/02/25   労働・休憩時間決定の注意点

労働時間・休憩時間決定の注意点◆Vol.6

職員が院長先生の指揮命令下にある時間はすべて労働時間


2011年1月26日 菅原 由紀(川口社労士法人・社会保険労務士)


ポイント

 労働時間は賃金とともに重要な労働条件の一つです。職員を働かせることができる労働時間は、労働規準法によって休憩時間を除き、原則として1週40時間(10人未満の病院・医院等保険衛生業は44時間)、1日8時間までが原則です。ただし、例外的な措置として、変形労働時間制を採用することもできます。労働時間制の仕組みを理解し、医療機関の実態に合った制度を導入することが大切です。

労働時間とは

 労働時間とは「使用者の指揮監督下にある時間」を言い、始業から終業までの拘束時間から休憩時間を除いた時間のことです。つまり、職員が院長先生(事業主)の指揮命令下にある時間はすべて労働時間となります。

 

法定労働時間と所定労働時間

 一方、所定労働時間は、それぞれの病院・診療所で職員の労働すべき時間として実際に決めた時間のことです。法定労働時間と所定労働時間は必ずしも一致する必要はなく、所定労働時間は、法定労働時間の枠を超えない範囲でどのように決めても構いません。

 

変形労働時間制

 変形労働時間制とは、一定の周期で繁忙期・閑散期がある場合、労働時間制の例外的な措置として、「1カ月」など、一定期間を単位として、週当たりの平均労働時間が40時間の法定労働時間を超えないことを条件に、1週あるいは1日の所定労働時間が法定労働時間を超えることを認める労働時間制のことです。その期間内の所定労働時間を平均して週法定労働時間を超えなければ、特定の日または週において法定労働時間を超える所定労働時間を設定して働かせることができます。

 変形労働時間制には、1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制およびフレックスタイム制などがあります。ここでは、病院・診療所で多く導入されている1カ月単位の変形労働時間制をご説明します。

1カ月単位の変形労働時間制

 1カ月単位の変形労働時間制は、1カ月以内の一定期間を平均し、1週間当たりの所定労働時間が法定労働時間を超えない定めをした場合、特定の週または日に40時間(44時間)または8時間を超えて働かせることができるというものです。なお、1カ月単位の変形労働時間を採用するためには、労使協定または就業規則で定めて、所轄の労働基準監督署へ届出なければなりません(労基法第32条の2)。

休憩時間

 院長先生は、労働時間が6時間を超える場合は途中で45分以上の休憩を、8時間を超える場合は途中で1時間以上の休憩を与えなければなりません(労基法第34条)。休憩は基本的に全員に対して一斉に与えなければいけません。ただし、病院・診療所等の保健衛生業については、休憩時間の一斉付与に関する規定が適用されないため、交代で休憩を取らせることもできます。

 休憩時間中、労働者はその時間を自由に使うことができます。つまり、休憩時間とは、労働から離れることを保障された時間を言います。従って、自由に利用することを保障されない手待時間は休憩時間には当たりません。