2015/03/19 医師が語る最新内視鏡システム導入メリット
平成5年 高知大学医学部医学科卒業。同年京都府立医科大学消化器内科入局。平成12年からは京都九条病院勤務となり、平成17年には 京都府立医科大学大学院医学博士を取得。平成23年より 、現在の御幸町診療所に勤務。
古都、京都を訪れる人で賑わう三条大橋界隈。御幸町診療所は、そこから徒歩数分、御幸町通りに面した一角にある。平成25年4月に診療施設を大幅にリニューアルした際、専門である消化管内視鏡検査をスタートするために、EVIS LUCERA ELITEと上部消化管汎用ビデオスコープ(GIF-XP290N)、大腸ビデオスコープ(CF-HQ290I)を導入。それを期に、一般内科に加え消化器内科領域の診療にも精力的に取り組んでいる。EVIS LUCERA ELITEを使用した感想について、岩瀬 豪先生に伺った。
私は京都府立医科大学附属病院や京都九条病院時代を通して、20年以上にわたり消化器内鏡による診断や治療に携わってきました。そして、平成25年に父が院長を務める御幸町診療所で開業することとなり、ルーチン検査を実施するに際して、近年確立されてきたNBI併用拡大観察を念頭に置きLUCERA ELITEの導入を決めました。購入に当たっては、上部ビデオスコープについては経鼻が必須で、下部ビデオスコープも含め、癌・非癌の鑑別に寄与できる画像のクオリティを必要としたことから、NBIはどうしても必要な装備であると考えました。もっとも大腸のルーチン検査におけるNBI併用拡大観察は、粘膜構造や血管を観察する上で必須であると考えていましたが、上部消化管の観察について、ESDのような治療における腫瘍の範囲(demarcation line)診断には有用であっても、日常のルーチン検査においては、どの程度必要なのか明確に認識してはいなかったというのが正直なところです。しかし、1年半使用した経験から、今では胃粘膜の表面構造をNBI併用観察することは、病変部、非病変部を認識する上で極めて重要であると考えるようになりました。
なぜ、私がこのように考えるようになったかというと、ある限局した発赤調の病変をGIF-XP290Nで経験したからでした。これまでは、疑わしい場合は生検により組織を取り、病理診断を行うのが通常の方法でした。しかし、このビデオスコープの観察深度は3 ~ 100mmと広く、5.8mmという細い外径からは信じられないような超近接画像を、NBIのクオリティで観察することを可能にしています。GIF-XP290NによるNBI併用観察を行うことで病変の表面構造がクリアな画像で観察でき、整った構造で異常な血管を認めないことから限局性胃炎と診断し、経過観察としました。そうしたことで、出血もなく、診療時間も短く食事の制限もないなど、医療サイドだけではなく患者さんにとっても、得るものは大変に大きいことを実感しています。
食道のルーチン検査における早期食道癌の診断においても、GIF-XP290NのNBI併用観察は非常に有用だと思います。例えば、これまでは平坦型や非常に浅い陥凹の病変を疑うような場合には、食道の攣縮に伴って出現する畳模様の消失に注意したり、ルゴール散布を行ったりしていました。しかし、経鼻的アプローチを行うようになってからは、患者さんの挿入によるストレスが軽減したことにより、畳模様の出現も減少した印象があります。
ルゴール散布は、検査の後半に行うので、やはり患者さんのストレスは大きく、できれば避けたいと考えていました。この点についても、LUCERA ELITEの明るくなったNBIのおかげで、Brownish areaなど情報が増えた分、ルゴール散布や生検の頻度が減り、検査時における患者さんのストレスは減少したように感じます。
当診療所では、診療所をリノベーションする際に、スペース効率などを考慮してX線透視台を廃棄しました。したがって、下部消化管内視鏡検査では、透視台に代わる装置としてUPD-3を導入しています。このUPD-3の使用法は簡単で、スタート時の位置合わせを微調整すれば、後はリアルタイムでスコープの位置が表示されていきます。表示される位置情報は当初考えていたよりも有用で、今までは常に頭の中で形状を考えながらスコープを挿入していたのが、今では予測した位置を簡単に確認できるので非常に助かっています。これは医師にとってだけではなく、検査の進行状況を患者さんに説明する必要がある看護師にとっても同様で、非常に好評を博しています。
CF-HQ290Iに搭載されているDual focus機能も有用です。大腸におけるNBI併用拡大観察は癌・非癌を鑑別する際の非常に有用なツールとなります。Near focusモードは、スコープの手元スイッチ一つで粘膜構造や毛細血管の高精細な近接拡大画像を容易に得られる点が気に入っています。このような点は、オリンパスの長年にわたり内視鏡を開発してきたノウハウを感じさせる部分だと思っています。
CF-HQ290Iは、RIT(Responsive Insertion Technology)という受動湾曲、高伝達挿入部、硬度可変機能を標準装備(図1)しているため下部消化管検査において非常にスムーズな挿入性が得られます。たとえば、左半結腸はUPD-3を見ながらできるだけ腸を延ばさ ないように挿入し、ループを描いたとしても、その直線化はナビで確認しながら行えます。脾彎曲部はスコープの特徴である受動湾曲や硬度可変を利用することで、挿入性は予想以上に向上します。右半結腸の挿入も、高伝達挿入部のおかげで、それほど短縮操作を行わなくても可能になった印象があります。観察、引き抜き時の前半も、硬度は3のままだと楽ですし観察後半は高度0-1に戻して行っています。CF-HQ290IはUPD-3対応スコープのため、スコープ先端にセンサーが組み込まれているので先端部外径が13.2mmとやや太めなことが気になりましたが、デモ機を持った時のバランスの良さを実感し、迷いは一気に吹き飛びました。実際、見た目にはやや太いスコープですがRITによる挿入性の向上で太さを感じなかったと話す患者さんもいます。
高度な機能を持つ内視鏡システムは、スクリーニングを行う診療にこそ適しています。「さらに言えば、NBIを用いた精度の高い診断については、初期段階で癌・非癌を振り分けるようなケースにふさわしいと考えています。」当院でも内視鏡による消化器検診を行っていますが、通常の画像ではなかなか判断しにくい症例も、NBI併用観察をすることで病変部位を視覚的かつ直観的に判断することができるようになりました。特に上部消化管の検査では、粘膜構造が詳細に確認できることから、非常に有用なツールとして活用しています。
この腸上皮化生が認められた症例(写真1 ~ 3)は、LUCERA ELITEシリーズに適した症例と考えられるのでご紹介します。
1)上部消化管の腸上皮化生の診断
腸上皮化生は、胃粘膜を腸の形質を持つ粘膜に変化する現象です。胃の肛門側約3分の1を占める幽門腺領域の加齢に伴って起こり得る変化です。最近ではヘリコバクターピロリ菌の慢性感染により惹起されることがわかってきました。胃の口側3分の2を占める胃底腺は、加齢と共に偽幽門腺へ変化し、萎縮、腸上皮化生していくことが知られています。この腸上皮化生から胃腺癌が発生すると考えられていることより、胃の検診において、その組織像を認識することが重要です。
この腸上皮化生の症例を、GIF-XP290Nを用い、白色光で観察したのが写真1です。これに対してNBIで観察したのが写真2で、さらに超近接して観察したのが写真3です。写真3の背景粘膜の表面構造は、胃底腺の奇麗な円形ではなく、脳回状であるので、幽門腺であることがわかります。幽門腺領域に多巣性に発生した白色調の腸上皮化生がよく認識できます。幽門腺、胃底腺、偽幽門腺とその境界や腸上皮化生を、GIF-XP290Nを用いたNBI併用観察で比較的容易に確認することができるようになったわけです。今まで病理で語られていた世界が、実際の内視鏡画像で確認できるようになったのは驚きです。
2)下部消化管において大腸腫瘍に対するNBI拡大観察
私はCF-HQ290Iを用いていますが、上部消化管以上に、大腸のルーチン検査におけるNBI併用拡大観察は、粘膜構造や毛細血管を観察する上で必須であると考えています。写真4は、S状結腸ポリープを白色光で撮影したものです。これをNBIで見ると、その表面構造を鮮明に確認することができます。さらにワンタッチ操作で45倍に拡大できるNear Focusで見ると、写真5のように表面構造がさらに明確に確認できます。
このようにLUCERA ELITEを導入して1年半。NBI併用観察の活用で、クリニックにおける消化管内視鏡検査の新しい価値を見出すことがきました。診療所での内視鏡検査は、初期段階で癌・非癌を振り分ける診断の精度と並び、患者さんの苦痛をできるだけ軽減させることが大切で、患者さんの検査嫌いを解消するひとつの方法としてストレスの軽減は非常に重要です。このような理由から、NBIや拡大観察による診断精度の向上や苦痛軽減は日常のルーチン検査においてこそ必要であり、非常に有用なツールであると思います。
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