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人材

2011/02/10   職員の募集・採用時の注意点

職員の募集・採用時の注意点◆Vol.3

優秀な人材の確保は医療経営の安定・発展のための重要課題


2011年1月5日 菅原 由紀(川口社労士法人・社会保険労務士)


ポイント

 職員の採用について、誰を採用するかは自由です。求める職員像を明確にし、採用のミスマッチを防ぎましょう。しかし、募集方法、採用とその手続きなどについては、労働法上注意すべき点があります。また、職員を採用するに当たって準備しておく事項、取り揃えておくべき書類等がありますので注意が必要です。

職員募集の方法

 優秀な人材を確保することは、医療経営を安定・発展されるための大変重要な課題です。職員の選考に向けて、行き当たりばったりの採用にならないよう、求める職員像を明確にし、募集条件を検討し、スケジュールを設定します。

 職員募集の方法については、一般に次のような方法がありますので、それぞれのメリット・デメリットを勘案しつつ、場合によっては同時に複数の媒体を利用するなどして、妥協することなく院長先生が求める人材を採用しましょう。また、公共職業安定所等を通じて募集する場合、要件によっては厚生労働省が行っている助成金を受給できる可能性がありますので、求人の際には公共職業安定所の窓口で相談してください。


1. 公共職業安定所(ハローワーク)を通じての募集
2. 学校を通じての募集
3. 許可を受けた民間の職業紹介機関を通じての募集
4. 新聞折り込み広告・求人雑誌・フリーペーパーに求人広告を行う文書募集
5. 事業主又はその雇用する労働者が求職者に直接働きかけて勧誘する直接募集
6. 第3者に労働者の募集を委託する委託募集
7. 親戚や知人などの縁故を通じて募集する縁故募集

選考・採用の注意

 採用選考について、厚生労働省では、事業主が公正な採用選考を行うよう強く指導をしています。応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適正・能力のみを基準に採用選考をすることとし、応募者の適正・能力とは関係のない、家族状況や生活環境等の事柄で採否を決定しないことを求めています。従って、本籍、家族の構成・職業、思想・信条等について面接時に質問をしたり、情報を収集することのないよう注意することが必要です。

 採用結果の通知は、なるべく早く行い、またできるだけ面接時に期日を指定し、その期日までに通知するようにして下さい。不採用者へは、個人情報保護の要請から履歴書・職務経歴書等募集時に提出された書類を返送することをおすすめします。

採用内定と取り消し

 一般的に採用内定がなされたということは、「解雇権留保付労働契約」が締結されたということになります。「解雇権留保付」とは内定取消を留保するということで、例えば、学校を卒業できなかった、業務上必要な資格が取得できなかった、病気やけがで働けなくなったという、内定者側の事情で当初の雇用契約が履行できなくなった場合に、解雇権を行使し、採用をやめるというものです。

 すなわち内定の取り消しは、解雇権留保付とはいえ、既に締結された労働契約を解約することですので、解約理由は雇用者側の一方的な理由ではできず、客観的合理的に社会通念上相当と認められたものであることが必要なのです。

<職員の求人募集から採用までにおける要検討事項、作成必要書類と留意事項>

事項 要検討事項 作成必要書類 留意事項
1、職員の募集 ・職員選考
スケジュール
・募集条件の決定
・募集媒体の選定
●求人票
(公共職業安定所を通じて募集する場合)
・年齢制限を課す場合には、理由を記載する必要あり
2、採用選考 ・選考基準の確立
・面接で聞くべき事項を具体化しておく
採用選考で避ける事項
・本人に責任のない事項(本籍、出生地等)
・家族のこと(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産等)
・住宅状況、生活環境に関する事項
・本来自由であるべき事項(宗教、思想、支持政党、人生観、購読新聞、生活信条等)
3、採用時 ・採用時の提出書類
 誓約書  
 身元保証書
 資格証明書の写し等
●労働条件通知書
または雇用契約書
●労働者名簿
●賃金台帳
・非常勤職員採用の場合でも通知義務あり
・書面での記載義務事項

【有期労働契約の場合】
・原則契約期間最長3年まで
・高度な専門職および60歳以上の人は最長5年まで
・更新および雇い止めに関する基準