長崎耳鼻咽喉科医院が建つのは、遠く立山連峰を望む自然豊かな富山県滑川市。同医院は現院長の長崎孝敏先生のお父様が開設されたもので、昭和41年の開院以来、市内で唯一の耳鼻咽喉科診療所として地域の方々の健康を支えてきました。
先生は平成8年、現在地へ医院を移転する折にお父様より医院を継承され、約18年を経て医院の建て替えを計画。それを機にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の併設に踏み切られました。
「初めから具体的な構想があった訳ではありません。ただ、父の代から約48年にわたり地域医療に従事してきたので、建て替えを機に何か医療に関連する事業を興し、さらに地域に貢献していきたいという想いはありました。そんな折、三井ホーム が医療・介護施設に関するセミナーを開催することを知り、家内に勧められて参加。それが大きな契機になりました」 と先生はおっしゃいます。
建て替えにあたり先生ご夫妻は、当初、一般的な賃貸住宅を併設することも検討されたのですが、医院に併設するならもっと付加価値のある形にしたほうがやりがいがある、との想いからサ高住に着目されたと言われます。
また、奥様が看護師の資格をお持ちで、福祉・介護事業の必要性を強く感じておられたことも大きな要因となりました。
「現在、世の中の流れは確実に高齢化にシフトしてきています。国もさまざまな施策を講じてはいますが、施設自体が不足しているうえに、ケアできる人間が少ないのが現状です。であれば、まずは私たちが率先してこの事業に参加することで何らかの力になれたら、と思うにいたりました」と、奥さま。
それでも先生ご夫妻は、決断するまでにかなり悩まれたのですが、そんなお二人の背中を押したのは、お子さまたちの存在でした。
「この仕事は、一旦引き受けたら途中で投げ出すような無責任なことはできません。しかし、私たちがやれるのは、せいぜい後10年くらい。だから慎重にならざるを得なかったのですが、幸い、娘が公務員として介護系の仕事に従事するようになり、息子も医師を目指して医大に入学するなど、後を任せる目途がついたことで一歩踏み出すことができました」と、奥さまはおっしゃいます。
建て替えに際しては、隣地を買い増して広さを確保し、敷地内に医院を移転する計画を採用されました。
そこで、建築中も旧医院で心療を継続できるよう、まずはお母さまのご自宅兼医院であった建物のうちご自宅部分を解体し、診療所部分を残したまま新たな建物を建築。その完成後、旧医院を解体して駐車スペースなど外構を整備するという形で工事が進められました。
完成した建物には、医院のほか、計13の個室と広い共有スペースを有する全館バリアフリー仕様のサ高住が併設されました。サ高住は "医院の隣にある安心して暮らせる住居" という意味を込めて「となりのアンジュ」と命名。その運営は主に奥さまが担当され、先生は専門性を活かして難聴・嚥下障害・めまいなど高齢者に多い疾患の診療を通じて入居者の充実した生活をサポート。その他の疾患に関しては、入居者のかかりつけ医と連携を図ることで、入居された方がより大きな安心が得られるよう体制を整えています。
こうして、新たな事業に使命感を持って参入された長崎先生ご夫妻。今、この新しいステージで”より密度の濃い地域貢献”の実現に向けて日々邁進されています。