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経営情報

2012/04/13   2012年 診療報酬改定と開業医

特別企画 診療報酬改定と開業医

日本経済は依然として厳しい状況にあります。その中で、なお安心・安全で質の高い医療を国民が受けられる環境を整えていくために、平成24年度診療報酬改定は、おおむね5,500億円の診療報酬本体の引き上げがおこなわれます。
今回の特集は『診療報酬改定』に注目。3月中旬におこなわれた三井ホームのセミナーから、今後診療所にどんな影響があるのか、医院経営はどのように方向づけていく必要性があるのか---診療報酬改定に'打ち勝つ'秘訣を模索していきます。

平成24年度 診療・介護報酬の決定

改定率では1.38%のプラス、医科で1.55%、歯科で1.70%、調剤で0.46%のプラスとなっています。一方、薬価等では1.38%のマイナスとなりました。結果的に全体改定率は0.004%とごくわずかのプラスとなっており、これは実質的には改定率0%と受け止められ、院内処方の多い診療所の場合、明らかにマイナスとなってくるでしょう。

平成24年度診療報酬改定の概要(厚生労働省PDF)平成24年度診療報酬改定の概要(厚生労働省PDF)   医療維新 特集 2012年度 診療報酬改定

開業医への影響

改定内容について、主に開業医と関わりが多いと思われる点についてピックアップしていきます。

在宅での看取りの促進

在宅医療の推進に伴い、在宅等における看取りを含めたターミナルケアの充実がより進められていきます。これからはなるべく自宅で終末を迎えていただきたい、そのために看取りに至るまでの医療を充実させようという考え方です。例えば死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護・指導がターミナルケア加算の必須の算定要件だったものが、2回目については死亡日の訪問看護・指導も含まれるようになります。

訪問看護の充実

訪問看護ステーションの見直しもおこなわれました。従来は曖昧だった"介護"との線引きを明確にし、"看護"の専門性を高めて訪問介護施設との連携を強化していくべきであるとの考えです。例えば、在院日数を短縮して在宅医療を選択しようというニーズに応えるため、退院に向けた医療機関と訪問看護ステーションの共同のカンファレンスが評価されるようになります。

介護報酬の改定

介護報酬の改定に触れておきましょう。というのも、診療所のあり方にも影響があるからです。今回の改定では介護報酬もプラス改定となりました。この背後にあるのは、施設から在宅介護へのさらなる移行を図るという考えです。
医療行為が少し伴う老健施設であっても、そこは自宅ではないので安定したら自宅にお帰りいただくという考えです。これは診療所にとっては、かかりつけ医になるチャンスといえるでしょう。それを裏付けるように、24時間定期巡回・随時対応サービスなどの在宅サービスの強化が図られ、例えば深夜に看護すると点数が付くようになりました。

がん治療・認知症医療の推進

がん治療、認知症治療の推進のため、これらの領域の医療技術の促進と導入を図ることができるよう、その評価の充実を図ることが打ち出されました。例えば認知症の確定診断は難しいですから、そのために専門医に紹介して診断してもらい、その後に自院で継続治療する。あるいは認知症治療病棟に預かってもらって安定化させてから自院に帰してもらう。こういった連携が今まで以上に評価されます。

開業医への影響
外来リハビリテーションの評価

外来でのリハビリテーションについては、これまでは毎回医師の診察が必要となっていましたが、状態が安定しているなど医学的に毎回の診察を必要としない場合、いわゆる無診察医療が認められるようになります。そして医師の包括的な指示のもとにリハビリテーションを提供できるよう、評価体系が見直されます。

今後の対策と医院経営

この改定をうけて今後有効と思われる経営戦略について、もう一度整理しておきましょう。

地域連携を強化

今回の改定で病病連携・病診連携という言葉は一切出てきません。それに代わって出てきたのが、介護も含めた「地域の連携」です。つまり地域全体を見て医療行為をおこなうということです。
それに合わせるように「機能に見合った役割分担」という言葉もよく出てきます。地域の施設がそれぞれの役割を明確にして、お互いに協力していこうという姿が、今後の医療のあるべき姿とされているようです。

在宅をおこなう

先に述べたように、在宅に関する項目が強化されている以上、見過ごすことはできないでしょう。'かかりつけ医になるチャンス'という捉え方もできますので、今後の情報収集は必須とも言えそうです。

その他、「薬価を下げるように努めてみる」「スタッフに点数がつかない分一人一人のスタッフをじっくり育ててみる」など、長い目で見た場合の対策も、効果的かもしれません。

まとめ

厚生労働省は、今回の改定を「平成37年(2025年)にあるべき医療のイメージを見据えての第一歩」と位置づけています。
例えば現在1.07万床ある一般病床がこのまま増えていくことをよしとせず、平成37年には高度急性期22万床・一般急性期46万床・亜急性期床35万床と分けていくことを目指しています。

こうしたことを踏まえ、在宅医療をさらに推進するとともに、従来の病病連携・病診連携にとどまらず地域内での様々なつながりを強化していくことが求められるようになるのではないでしょうか。自院だけで抱え込むのではなく、地域で協力して医療に取り組む時代へ、本格的な一歩を踏み出したといえるでしょう。

<ご協力>三井ホーム株式会社 医院開業実践ゼミナール          
セミナー講師:川原経営総合センター 監査支援室 室長 長岡秀和 氏