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2011/01/01   「使用者」「労働者」とは

「使用者」「労働者」とは◆Vol.2

使用者には労働法履行・民事上の損害賠償責任が発生

2010年12月22日 菅原 由紀(川口社労士法人・社会保険労務士)


 労働契約は、「働いてください」という事業主の意思と、「働きます」という労働者の意思の合意によって成立します。ただし、労働基準法には労働契約をする上での最低基準が定めらており、労働契約においてこの最低基準を下回る部分は無効となり、労働基準法の定める基準になります。また労働基準法上の「使用者」には使用者責任があります。

特に知っておくべき労働基準法

 労働法関連法規の上で、人を雇う上で特に知っておくべきは、労働基準法です。労働基準法はすべての事業を適用事業として、広く労働者を保護の対象とするものです。労働基準法(以下、「労基法」)では、賃金、労働時間、休日、休憩その他の労働条件に関する最低基準が定められています。

 雇用関係は、使用者が労働者を雇用することで成立しますが、その労働条件は当事者間で全く自由に取り交わすという訳にはいきません。例えば、1日8時間の勤務時間の中で休憩時間は30分で良いと労働者が承知したとしても、労基法では使用者は最低45分以上の休憩を与えることが義務付けられています(労基法第34条)。従ってこの場合の休憩時間は、当事者間の合意内容に関わらず45分となります。つまり、労基法は強行法規のため、労基法を下回る取り決めは、たとえ労使が合意していたとしてもその部分は無効とされ、労基法の基準に引き上げられることになります。また、最低基準である労基法の違反には罰則の適用があり、主に労働基準監督署がその監督指導を行っています(労基法第117条-第121条)。

労基法の労働者、使用者とは

 労基法の適用・保護の対象となる「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法第9条)と定められています。 労働者であるか否かは契約形態によるものではなく「使用従属性」の有無を実態で検討し判断されます。

 一方、「使用者」とは、「事業主又は事業の経営担当者その他事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」(労基法第10条)と定められています。 労基法の「使用者」は、職種や職位によって決まるのではなく、権限の実態により判断されます。つまり「経営担当者」とは、事業経営一般に対して責任を負う人のことを指し、「その他事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」とは、人事・給与・労務管理等の業務において、権限を与えられている人を言います。よって、このような権限を与えられている人であれば、職種や職位に関わらず、その与えられた権限の範囲で「使用者」になるのです。

 従って、例えば医院・診療所の看護師長や事務長等は日常業務の指揮、責任の任があり、「使用者」となりますが、同時に労務を提供することにより賃金を支払われる者でもあるため「労働者」でもあるということになりますので注意が必要です。

使用者責任とは何か?

 院長はもちろん、権限と責任の範囲内で「使用者」となる者の、「使用者」としての行為に対しては、次のような責任が発生します。「使用者」は労基法を中心とする労働法だけを守るのではなく、民事上の損害賠償責任も負うことがあるということを認識しておく必要があります。

○ 民法に定める損害賠償義務の対象としての民事上の責任
労災事故、過労死等の安全配慮義務違反による使用者責任、セクシュアルハラスメント・パワーハラスメント等の職場環境保持義務違反による使用者責任

○ 労基法等による履行義務違反の対象としての刑事上の責任
法定労働時間の遵守、割増賃金の支払い、年次有給休暇の付与、就業規則の作成等に対する使用者責任

 <医院・診療所での「使用者」と「労働者」の範囲のイメージ>


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