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税理士・公認会計士

2021/03/26   「コロナ禍で大幅減益」開業医が知るべき4つの税制扱い

「コロナ禍で大幅減益」開業医が知るべき4つの税制扱い

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開業医の先生はもちろん、確定申告をされる勤務医の先生も多いことから「税に関する悩み」は医師にとっても身近なトピック。コロナ禍が訪れたこともあり、様々な公的な支援策が講じられているとは聞くものの、ご自身にもそれが適用されるのかどうか分からないといったお悩みをお持ちの先生も多いのではないでしょうか。
そこで本企画では、医師から寄せられる税に関するお悩みについて、医師からの相談実績の多い現役税理士の方にうかがいます。

【今回のご質問】
コロナ問題で収益が大幅に減っています。何か対処法はないでしょうか。(開業医、40代男性)

今、開業医が知っておくべき4つの税制取り扱い

【今回答えてくださった方】
沓掛 伸幸(くつかけ のぶゆき)

税理士法人TOTAL代表社員(税理士・CFP・医業経営コンサルタント)
開成高、一橋大卒。明治安田生命(相)を経て2007年税理士法人設立に参画。医療機関をサポートするTOTALグループを全11拠点にて展開。

新型コロナウイルス禍によりクリニックの経営は大きな打撃を受けています。融資や助成金、給付金などで緊急対策が取られていますが、税制上でも様々な対策が打たれています。個人の確定申告期限が全国的に延長されたのは、記憶に新しいですが、東日本大震災の際でさえ期限の延長は、被害甚大の5県に限定されたことを考えると、今回の対策が非常に思い切ったものであることがうかがえます。新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策のうち、今年度の新たな税制上の取扱いにつき紹介します(2020年8月4日時点)。

1.納税の猶予制度
納税時期を遅らせる「納税の猶予」は、従前から地震や台風で建物に被害を受けるなどの「財産の損失」が生じた場合に認める制度がありました。今回は、要件等が大幅に緩和されています。

(1)要件
新型コロナウイルスの影響により、2020年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べ概ね20%以上減少し、一時に納税することが困難な場合。

(2)対象となる国税
①2020年2月1日から2021年1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税等ほぼすべての税目(印紙で納めるもの等を除く)。
②既に納期限が過ぎている未納の国税(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡って適用可能。

(3)担保・延滞税
従前は、制度適用にあたり、担保の提供が必要となり、延滞税(利息)も発生しましたが、今回の制度は、担保不要、延滞税も免除となっています。なお、納期限までに申請が必要で、猶予期間は1年間となっています(2020年8月4日時点の取扱い)。

2.(医療法人)法人税につき欠損金の繰戻しによる還付の特例
欠損金の繰戻しによる還付は、前年度黒字で法人税を納付した法人が、経営悪化などで当年度に赤字になった場合に、その前年度に納付した法人税の還付を受けることができる制度です(一定の場合は前々年度の納付分も対象)。
なお、今まではこの制度の要件に該当する場合でも税務調査の可能性が高まるなどの理由から制度の適用をためらうケースも多くありました。しかし、今般の非常事態においては、資金繰りなどを優先して考慮し、柔軟に考えるべきかと思います。

3.テレワーク等のための中小企業の設備投資税制
クリニック・医療法人(役職員1000人超は除く)が、一定のテレワーク等のための設備の取得等をした場合に、設備の取得初年度に取得価額全額の減価償却費を計上する取扱い(即時償却)又は取得価額の10%(資本金が3,000 万円超の法人は7%)の税額控除を受けることができる制度です。なお、設備の取得前に国の確認、認定が必要ですのでご注意ください。

4.固定資産税等の特例
クリニック・医療法人(役職員1000人超は除く)が所有する償却資産、事業用家屋にかかる固定資産税・都市計画税が軽減されます。要件と軽減額は次のとおり。

2020年2月~10月までの任意の3カ月間の売上高を前年の同期間と比較
① 30%以上50%未満減少の方 2分の1
② 50%以上減少の方 ゼロ

なお、制度の適用にあたっては、2021年1月31までに所定の申告が必要です。また、固定資産税については、一定の生産性向上のための設備投資に対する特例も拡充されています。


いかがでしょうか。本企画では引き続き、現役税理士の方に「医師の気になること」を掘り下げていただく予定です。
そのほか、税務に関してご相談されたい先生方は是非こちらからお問い合わせくださいませ。