2016/06/02 医療機器の導入を考える
医療機器は年々バージョンアップされ、次々と高機能のものが出てきます。専門技術を持つ医師としては、高性能の機器をぜひ使用したいと考えるものですが、医院開業において、不動産の次にお金がかかるのが医療機器です。今回は医療機器を導入する際のチェックポイントをご紹介します。
開業時に導入すべき医療機器とは
先生の目指す医療のスタイルや、地域の特性によって必要な医療機器は変わります。専門性の高いクリニックを目指すのであれば、高機能の機器が必要でしょう。プライマリケアに徹して、病診連携を重視したいと考えるのであれば、軽装備にすることもできます。また、経費を抑えるために開業当初は必要不可欠なものに絞り、経営が軌道に乗ってから追加購入する方法もあります。
開業時の医療機器購入費は、内科系の場合、2,000~3,000万円が相場だと言われています。消化器内科を例にすると、標準的な装備は下記のようなものがあります。これらの機器はデジタル化が進んだことで、診療情報が電子カルテ等と連動し、効率が向上しています。
<消化器内科で導入される標準的な医療機器>
・デジタルX線撮影機器(CR/DR)
・内視鏡システム
・超音波診断装置
・心電計
・画像ファイリングシステム
採算性をチェックする
医療機器の導入に際しては、当然のことながら採算性の検討が必要です。例えば、下記の内視鏡の例は月に14人、超音波診断装置の例は月に19人検査をすれば収支的に釣り合います。
項目 | 単位 | 胃内視鏡検査 (胃・十二指腸ファイバースコピー) |
超音波検査 (断層撮影法 胸腹部) |
---|---|---|---|
(A)1人当たり医業収益 | 円 | 11,400 | 5,300 |
診療報酬点数 | 点 | 1,140 | 530 |
診療報酬 | 円 | 10 | 10 |
(B)1か月の患者数 | 人 | 14 | 19 |
1か月の医業収益(A)×(B) | 円 | 159,600 | 100,700 |
1か月のローン支払い額 | 円 | 150,000 | 100,000 |
収支 | 円 | 9,600 | 700 |
※1か月のローン支払い額は一例です
ただし、機器を置くためにはスペースが必要ですので、家賃や建築費の増額につながりますし、検査技師を雇えば人件費が発生します。先生が目指す医療と経済性とのバランスをはかりながら機器を選ぶ必要があります。
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超音波診断装置 | デジタルX線撮影機器(CR/DR) | 内視鏡システム |
購入するか、借りるか
医療機器の入手には、ローンを組んで購入する方法と、リースで借りる方法があります。どちらが有利かは一概には言えず、機器の耐用年数や、金利なども関わってきます。販売業者からの情報だけでなく、金融機関の担当者、事業計画書で関わった税理士などとも相談し、全体の資金計画の中で検討しましょう。
購入を選択された場合は、複数社から見積りを提出してもらい比較検討することが重要です。最近では中古の医療機器を購入するという選択肢もあります。多くの医療機器の販売会社がありますが、導入して終わりではなく、保守などで長い付き合いとなります。単に金額だけでなく、担当者から適切なアドバイスが受けられるか、導入後の保守やサービス体制が整っているか、経緯基盤がしっかりしているという点もチェックしましょう。
一方のリースは、ローンに比べて審査が通りやすいメリットがあります。しかし、支払い期間が一般的に5年と短く、トータルの支払い額は購入よりも多くなります。リースと購入の違いについては、こちらの「リースの仕組みと購入との違い」をご覧ください。
初歩的な失敗を避ける
医療機器の導入は建築・内装工事と密接に関係します。医療機器の設置時によくみられる初歩的な失敗として次のような例があります。
× 搬入経路が確保されていない
大きな機器は建築の途中で設置しないと、後からドアを壊して搬入しなくてはならなくなります。
× 適切に電気工事が行われていない
電気容量が足りない、機器を置く周辺にコンセントがない、コンセントが医療機器用ではなく家庭用だった、といった問題がしばしば発生します。
× 開業後に購入する予定の機器のスペースが用意されていない
開業が軌道に乗った頃に医療機器を追加購入するプランがあるのでしたら、そのためのスペースが必要なことも忘れてはなりません。
医療機器の導入にはこのようなトラブルが発生しがちですので、開業予定の物件の建築・設備関係者と医療機器関係者を一同に集めて事前に入念な打ち合わせを行うことが必要です。