2016/05/12 ≪先輩開業医の体験談≫新規・継承開業で3院の黒字化に成功
経歴
平成4年 | 日本大学医学部 卒業 |
平成4年 | 日本大学医学部第三内科 入局 |
平成10年 | 日本大学大学院医学研究科 修了 |
平成10年 | アメリカ国立癌研究所 客員研究員 |
平成18年 | 日本大学医学部 内科学講座 消化器肝臓内科部門 兼任講師 |
平成18年 | 医療法人宏裕会 青木クリニック 院長 |
平成20年 | くりはら内科クリニック 開設 |
平成4年に日本大学医学部を卒業し、同大学病院で医師としてのキャリアをスタートしました。一時は学位の取得のため、大学院で基礎研究に没頭していた時期もありました。私は、父親が開業医でしたので、家業を継承することは何となく意識していました。ちょうど卒後10年ほどして、このまま大学病院で病院勤務を続けていていいのかと迷う時期があり、開業について考えるようになりました。
結局、卒後14年目の平成18年、勤務医を退職して父親の診療所で働き始めました。ところが、いざ仕事をしてみると、親子でも仕事のやり方は違います。次第に自分の好きなように医院を経営したいと感じるようになりました。
2年ほどは父親の診療所に専念していましたが、このままでは開業医として働いていてもやりがいが無いということで、父親には分院を開設するという提案をして、平成20年に埼玉県新座市栗原に「くりはら内科クリニック」を開設しました。
その後、他の方からお話しをいただいて第三者からの継承による医院開業も行いましたので、新規開業、親子間継承、第三者継承の3種類の開業を経験しております。
私は、医院の成功には開設する場所が一番大切だと考えています。
患者が診療所を選ぶ理由は、「自宅からの通院利便性」が1位です。これは様々な調査機関がアンケートをとっていますが、ほとんどの場合はこの通院利便性がトップになります。例えば、先生方の専門的な知識、これまで培った技術、患者さんに対する親切なサービスや接遇、丁寧な説明といった努力を積み重ねても、この「場所が良い」ということを簡単に逆転することはできないのです。この点は、これまでの医院経営の中で痛感しております。
医院にとって良い場所というのは、簡単にいうと、昼間の人口密度と競合の医療機関の状況という、2つの要素だけで決まります。医院の経営的に成功とされる1日40人の来院という数字から逆算して、患者さんを集められる立地とはどのような場所かということです。
私は実際に自分で開業する場所を探しました。人口密度の参考として鉄道沿線では1日の乗降客数が非常に参考なります。当時、自宅から通える沿線だった西武池袋線の主要な駅をインターネットで調べると1日の乗降客数が分かりました。その数字を基に、この辺が有望と当たりをつけたら、今度は競合医療機関も検索してマッピングしました。そのような方法で条件を絞っていき、実際に物件を見つけて業者と交渉を行い、開業しました。
開業資金の借り入れは一般的な金額よりも少額で事業計画をたてました。
ご存知の先生いるかもしれませんが、一般的な内科診療所は、5,000万円から6,000万円の開業資金が必要とされます。私は、手持ち資金と銀行からの融資を合わせても、それよりも少ない額でした。
ところが当初の想定より患者さんの来院が少ない日が続き、結局は銀行から追加融資を受け、総額としては一般的な開業資金とほぼ同額を借り入れることになりました。
黒字化したのは開業から8カ月後です。黒字化とは、収支的にトントンになり、僅かでも私自身の給料がいただける状態です。その頃から生活も何とかでき、医院にも患者さんが安定して来院してくれるようになりました。
集患についてはホームページ、広告や看板、内覧会という一般的な手法がありますが、全て実施した経験があります。まず、広告や看板は率直に言うと必要ないと思っています。実際に駅看板、電柱の巻き看板、釣り看板、野立て看板など何種類か試しましたが、全く効果はありませんでした。
次に、ホームページを作る場合は、先生のお好みもあると思いますが、あまりいろいろな情報を載せすぎると患者さんが見づらいのでシンプルなほうが良いと思います。ただ、ホームページを作って終わりではなく、多くの患者さんに自分の医院のページを見てもらえるように、SEO対策に費用をかけたり、リンクをはってもらう取り組みやtwitter、ブログなどをとりいれたほうが良いと思います。
年代的にみると、若年層は、インターネット経由でどれだけ集めるかになります。一方で、中高年層は口コミが重要です。あの医院の先生は良い先生という評判が広まれば、患者さんは来てくれるようになります。ただ、口コミが形成されるまでには3年はかかると思っていただいたほうが良いと思います。
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