2014/02/13 【開業後の経営戦略】 物件・立地の選び方
開業を志す先生方が最初に直面する課題は「開業地の選定」でしょう。開業地の選定が、開業後の医院経営を早期に軌道に乗せる大きな要因となっている昨今では、その重要性が以前にも増して高まっています。
今回の特集では、診療圏調査を元に、先生から人気の高いエリアと、穴場の郊外エリアのケーススタディからどのような経営戦略が立てられるかご紹介したいと思います。
データ/コメント提供:三井ホーム、メディヴァンス
診療圏調査とは
診療科によって想定される診療圏内の人口、人口構成、競合医療機関などの基礎データをもとに、疾患毎の受療率から 1 日当たりの来院患者数を推計するものです。 もちろん、診療圏調査から導き出した来院予測数値だけで開業地を選定することはできませんが、いくつかの物件を相対的に比較する上では非常に有効と言えます。
各診療科ごとの安定的な経営を行うための標準値を参照にしながら、 (下図参照) ケーススタディを見てみましょう。
先生から人気の高い東京都世田谷区。
東京都内の閑静な住宅街では、どのような特徴があるのでしょうか。
※都心などの人口・診療所の多いエリアは診療圏を 500m に設定。
東急大井町線「九品仏駅」近くの物件。
半径 500m 内の人口は 10,000 人以上ととても多いが、同様に既存診療所も 60 件以上と、かなり多く存在する。
その為、いずれの科目においても、1 日あたりの推計患者数は標準値には及ばない。
このような場所で開業する場合、内科をはじめとした一般の診療科目では開業後の経営が難しいと考えられ、専門特化した科目を検討する必要があるといえる。
先生からの開業希望が比較的少ない、駅から離れた郊外の物件。
こちらも同様にどのような特徴があるのか見てみましょう。
※駅から離れた郊外のエリアは、診療圏を 750m に設定。
西武池袋線「東久留米駅」から徒歩約 20 分の物件。
半径 750m 以内の人口は 14,000 人以上と、ケーススタディ①の世田谷区よりも多いにもかかわらず、既存の診療所が4件とかなり少ない。
そのため、内科をはじめ複数の科目で標準値を上回る推計患者数を見込むことができる。
但し、駅から離れた場所なので幹線道路などに面した認知され易い立地であることや、車で来院を見込んでの十分な駐車場の確保を必要といえそうだ。
診療圏調査を利用した物件・立地の選び方はいかがでしたでしょうか?
今回のケーススタディでも取り上げましたが、とくに近年、都市の中心部では医療機関数が増加し、内科系を中心に開業後の経営環境が厳しくなってきています。
今回のケースのように、診療圏調査から郊外で開業して成功した先生の事例もございます。
エリア | : | 三鷹市深大寺 | |
立地 | : | JR 中央線の駅から徒歩 20 分以上。住宅地の中の幹線道路 (バス通り) に面した土地。 | |
状況 | : | 昨年秋に開業。標榜科目は内科、小児科。 開院日から半月で平均来院数 26 人 / 日、次の半月では 30 人 / 日、翌月からは 50 人 / 日 (インフルエンザの予防接種も含む) と順調な立ち上がりで推移している。院長も金銭的な不安を感じることなく、診療に集中できている。 |
上記事例のように、駅から離れた住宅地には人口が多い割には既存診療所が少ない為、開業後の経営がスムーズにいくケースがあります。
地域密着型の診療を目指す先生方にとって、ひとつのモデルケースとなるかと思います。
開業を志す先生方は、徒にご自身の「好みの場所」に固執せず、診療圏調査を活用することで大局的な開業地選定をして頂き、医院経営を成功させて頂きたいと思います。