2016/05/26 医院開業に適した時期とは?
ここ数年、首都圏での新規医院開業件数は増加の一途をたどっています。開業を検討されている先生や、すでに開業準備中の先生の中には、1年のうちいつ頃開業するのがベストなのか、開業に適した時期が気になるという声もお聞きします。今回は東京都内で過去5年間に新規開業したクリニックのデータから、開業に適した時期や、その要因についてご紹介いたします。
上のグラフは、東京都内で1年間に新しく開業した医院・クリニックの数を表したものです。2012年を基準とすると、2015年までの3年間で新規開業が約2倍に増えています。2012年は、前年に東日本大震災があったため新規開業は例年より減少しました。その反動もありますが、翌2013年は一気に前年比1.5倍に増えています。この傾向は首都圏(1都3県)共通で、神奈川県、千葉県、埼玉県では、ここ数年でクリニック間の競争が激しくなっています。
過去5年間の月別の新規医院開業件数を見ると、最も多い月は4月、次いで5月となります。6月以降は8月に谷があり、9月~10月にもう一度ピークを迎えた後は、3月に向けて少しずつ減っていきます。開業が多い月は、開業に適していると考える先生が多いと考えられますが、それぞれどのような要因があるのでしょうか。
4~5月の開業が多い理由として、医局人事の時期と重なり、多くの先生にとって退局がしやすいことが挙げられます。いざ開業しようと思い立っても、医局の都合ですぐには退職ができないといったケースは珍しくありません。先輩開業医の中には、3月一杯で医局から籍を外れ、4月から直ちに開業する先生や、4月の1ヶ月間は準備・移行期間に当て、5月から開業するという先生も多いようです。
診療科の半分を占める内科の開業を考えた時に、9月~10月は良いタイミングとされています。11月頃から風邪やインフルエンザの患者が増加するため、この時期に開業すれば2か月ほどの医院運営で、医師もスタッフも業務に慣れる期間が確保できるため、多数の患者が来院してもさばくことができるためです。また、予防接種は10月末頃から始まるため、その需要を捉えることもできます。逆に、繁忙期にいきなり開業すると、対応の不備などから患者の悪評を招く恐れがあります。
一つは、診療科によって異なるベストな開業時期を見極めるということです。診療科によっては、上記の開業時期が必ずしも最適とはいえません。例えば、耳鼻咽喉科であれば、花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎の患者が急増する春先を見据えて、年始に開業するという考え方もあります。
もう一つは、物件の契約開始日に注意するという点です。開業物件は内装工事等の関係もあり、6か月前から契約することが一般的です。4月に開業したいからと、1年前から物件を押さえておくことは困難です。物件の契約が足を引っ張り、本来希望していた時期の開業を逃したということが無いように、逆算したスケジュールを想定することが重要です。