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開業物件

2012/03/30   物件形態、選んだ理由とメリット

地域性やその土地の事情、住民の行動スタイルによって大きく左右される物件形態。果たして多くの先生は、どのような物件形態を選び、またどの程度地域になじみ、質のいい診療・医院経営へとつなげているのか。
最終回は、第1回・2回同様アンケート結果からその実状について探っていきます。先生の理想や要件を満たす物件形態は、一体どういったスタイルなのでしょうか---

開業医200人の物件形態
先生が選択した開業物件形態は?
シェアが大きいのは 「ビルテナント」「戸建て(購入)」

新たな開業手法として戸建て賃貸や高齢者事業を意識したスタイルに注目が集まる今日ではあるものの、アンケートでは、ビルテナントと戸建ての購入者を合わせると、全体の半数以上を占めました。

戸建てレント・賃貸も、新しい手法と言えどまずまずのシェアを獲得。これからの増加も予測できるでしょう。
また、第三者継承は医療モールと同率、となかなかの健闘ぶり。

移り変わりの激しいこの時代において、それぞれの物件形態にはどんなメリットがあるのでしょうか---詳しく見ていきましょう。

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その物件形態で開業した理由は?

多くの意見をいただいた中で、それぞれ下記のように大きく2~3つのポイントに絞られていました。

その物件形態で開業した理由は? ビルテナントの開業物件を探す 戸建ての開業物件を探す 継承の開業物件を探す 戸建ての開業物件を探す 医療モールの開業物件を探す 継承の開業物件を探す 物件形態の良かった・悪かった点

・開業までの時間が短くてすむ。すでに存在している物件なので開業のイメージがつかみやすい (40代・循環器内科)

・駅から近い (70代・精神科)

・建物そのもののメインテナンスまで考えなくてよいこと。 (50代・心療内科)

・他の施設があるため患者が待合の時間を利用して買い物などできる。 (40代・耳鼻咽喉科)

・月々の賃貸料が負担になる。 (40代・心療内科)

・共同利用のトイレなど不審者が入る。 (40代・耳鼻咽喉科)

・思ったように内装工事ができない。 (40代・外科)

・2階なので,待合室などの中の様子が外からでは分からず,やや入りにくいようだ。 (30代・耳鼻咽喉科)

・賃貸料がかからない。 (40代・消化器科)

・自分の思う通りにカフェ風にできた (40代・精神科)

・家主との関係を気にしなくて済む。 (40代・皮膚科)

・患者の流れが見える構造になっており、全体把握が容易。 (40代・眼科)

・不動産税、初期費用がかかる。 (40代・整形外科)

・後に引けないプレッシャーがある。 (40代・眼科)

・場所の変更が出来ない。 (年代・診療科不明)

・患者さんとご近所さんが同じで近隣での買い物などに気を使うこと (30代・皮膚科)

・取引先や、金融機関の信用があること (50代・内科)

・古くからの患者がついていること。 (50代・脳神経外科)

・周辺に認知されやすい (50代・内科)

・自分のスタイルができない (40代・消化器内科)

・古い職員いうこと聞かず (70代・内科)

・建物の耐震工事が必要だった。 (年代・診療科不明)

・水道管、配管関係、空調設備等の修理が多く、診療中に並行して治さねばならず大変。親子で診療スタイルの違いでぶつかる。 (40代・循環器内科)

・金銭面でも運転資金、什器備品代だけで、おもったより資金面で楽でした。 (50代・産婦人科)

・建物に対する、修繕費用等考慮しなくてよい (40代・耳鼻咽喉科)

・開業しやすい (50代・産婦人科)

・継承を考えずに済む (40代・内科)

・医院の作りではなかった (50代・循環器科)

・いつまでも払い続けることのストレス (40代・整形外科)

・階段の配置など (40代・脳神経外科)

・すぐに他科受診を行え、結果もすぐわかる (50代・眼科)

・患者の立ち上がりがよかった。 (30代・皮膚科)

・お互いに増患作用あり (50代・耳鼻咽喉科)

・駐車スペースが多い 資金管理がラク (40代・内科)

・ある程度細かい決まり事があること. (50代・皮膚科)

・話し合いの多さ (40代・産婦人科)

・患者数が増えて手狭となったが、拡張ができない (40代・内科)

・固定費がやや高め (30代・皮膚科)

・患者を引き継ぐことができた。 (50代・眼科)

・初期投資が非常に少なく済んだ。 (40代・新生児科)

・診療がスムーズに受け継がれて、軌道にすぐに乗った。 (50代・内科)

・たてものが古臭い (40代・内科)

・前経営者の時代のイメージが地元で残っていること。 (40代・糖尿病科)

・「しがらみ」が多い (50代・脳外科)

・前の職員がひどい (50代・耳鼻咽喉科)

判断基準のポイントはやはり初期費用

「戸建てを購入」以外のどの項目にもあがってきた回答として、‘初期費用の軽減’があげられました。当然ながら、金銭面の融通は外せない条件として、物件形態に大きくかかわってきます。

また、どの物件形態も一長一短ではありますが、初期費用が軽減できても賃料を支払わねばならない「ビルテナント」「戸建てをレント・賃貸」「医療モール」については(概ね、レアケース除く)、長きにわたる金銭的且つ精神的負担と、自分の思い通りに進められない側面が、しばしば出てきそうです。
また、初期費用がかかっても賃料を支払う必要がない「戸建てを購入」については、とにかく自分の思い通りのスタイルにできるということが最大のメリットであり、「継承」については、地域の信用が既に備わっていることや患者さんをそのまま引き継げるなどの恩典がついてくるようです。

また、物件形態別に、エリア分布の割合を集計したものが下記のグラフです。地方によって各物件形態のシェアが大きく異なることがわかります。やはり診療以外の要因として‘地域性’というのは避けられないものなのでしょう。

グラフ開業物件形態を選ぶポイント

これから長い間、診療のみならず生活をし、先生の診療方針が少なからず根づく場所---
何が外せない条件でどういった理想像を描くのか、またどのリスクを回避し、どんなメリットを得ようとするのか。
冷静に、且つポジティブに自分自身でじっくりと考察・調査することが、有意な選択の秘訣だと言えそうです。

【アンケート概要】

対象

m3.com医師会員 開業医

調査方法

m3.com医師会員向けインターネット・アンケート

調査期間

2012年2月9日~12日

サンプル数

201件

次回予告

4月以降の特集につきましては、診療報酬改定や物件選びに関する企画を予定しております。
次回は2012年4月13日(金)掲載予定です、お楽しみに!

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