クリニックの売却相場から税金、具体的な手続きまで徹底解説
「クリニックを売却したい」
「引退後のセカンドライフを充実させたいが、何から手をつければいいか分からない」
現在、このようなお悩みをお持ちの開業医の先生は年々増加しています。国内約10万件ある診療所のうち、院長の年齢が60歳以上の診療所は約56%を占め、そのうち約70%で後継者が不在であるという実情があります。
この状況は、地域医療の維持という社会的課題でもありますが、同時に開業医の先生方にとっても重要な問題です。引退の選択肢として「閉院」と「継承(第三者への譲渡を含む)」がありますが、特に「継承」は経済的なメリットだけでなく、地域医療や従業員の雇用を守る有効な手段として注目されています。
本記事では、クリニックの売却・譲渡を検討されている先生方に向けて、売却のメリットや譲渡価格の相場、税金、さらには具体的な手続きまで、エムスリー医院継承サービスの知見を交えて徹底的に解説します。
1. クリニックの売却・譲渡(継承)のメリット
1-1. 閉院と継承の比較
開業医がリタイアする際には、主に以下の2つの選択肢があります。
- 閉院: 診療所を閉鎖すること。
- 継承(第三者への売却・譲渡): クリニックを第三者の医師に引き継いでもらうこと。
「閉院」と「継承」には、それぞれメリット・デメリットが存在します。
| 継承(売却・譲渡) | 閉院 | |
|---|---|---|
| 経済的 メリット |
譲渡利益を得られる | 多額のコストと手間が発生する |
| 老後資金 | 閉院費用が不要になり、譲渡利益を得られるため、老後資金を増やせる可能性がある | 解体や原状回復などの費用がかかるため、老後資金が減る可能性がある |
| 患者・ 従業員 |
患者の通院、従業員の雇用を維持できる | 患者や従業員に影響がある |
| 手続き | 閉院時の面倒な手続きが不要になる | 各種行政手続き、契約解除、医療機器の処分など、煩雑な手続きが必要になる |
1-2. クリニックの売却・譲渡の3つのメリット
継承のメリットをさらに詳しく見ていきましょう。
メリット1:老後資金を増やせる
閉院にかかる多額のコストを回避できるだけでなく、譲渡によって利益を得られる可能性があり、老後資金を確保することができます。とあるケースでは、閉院をする場合は約1,200万円の出費があったのに対し、医院譲渡を実現した結果、約1,900万円の利益を得られた事例もあります。
メリット2:面倒な閉院手続きの負担を減らせる
閉院の場合、行政手続きや契約解除、医療機器の処分など、煩雑な手続きをすべて自身で行う必要があります。一方、継承の場合、原則として内装や建物はそのまま引き継ぐことができるため、それらの手間やコストが不要になります。また、医院継承の専門家であるコンサルタントが、手続きをサポートしてくれる場合があります。
メリット3:患者・従業員にもメリットがある
「医院を譲渡すると、従業員が解雇されるのでは?」と心配される先生もいらっしゃいますが、一部の例外を除き、医院継承時には全従業員の雇用維持が実現できます。また、患者さんも通院を継続できるため、地域医療の基盤を維持することに繋がります。
2. クリニックの売却・譲渡価格の相場と算定方法
2-1. 譲渡価格はどのように決まるのか?
クリニックの売却・譲渡価格は、主に「譲渡対象資産」と「営業権」の2つの要素で構成されます。
- 譲渡対象資産: 土地、建物、医療機器など、目に見える資産のことです。
- 営業権: クリニックのブランド力、地域での評判、患者数、収益性など、目に見えない無形の価値のことです。現在の収益性や立地、譲受希望者の多さ(担い手の母集団)によって変動します。
譲渡価格は、これらの資産価値に、収益性や立地、診療科などの要素によって変動する営業権を加えることで算出されます。
- 事業譲渡の場合: 譲渡価格 = 譲渡対象資産 + 営業権
- 持分譲渡・基金譲渡の場合: 譲渡価格 = 法人の純資産 + 資産調整勘定(営業権に相当)
2-2. クリニックの譲渡価格に影響を与える3つの要素
譲渡の実現可能性や価格に影響を与える要素は以下の3つです。
診療科の医師(担い手)の多さ
診療科によって譲受を希望する医師の数が異なります。医師数が多い診療科(内科など)は譲受希望者が多く、医師数が少ない診療科は譲受希望者が少ない傾向にあります。
現在の事業の収益性
クリニックの利益が高いほど、営業権の評価額も高くなり、譲渡価格も高くなります。
医院の立地(至便性)
交通の便が良い場所や、政令指定都市のような至便性の高い場所にあるクリニックは、譲渡価格が高くなる傾向にあります。
2-3. エムスリーの譲渡価格が高くなる理由
エムスリーの医院継承サービスでは、他社と比べて高額な評価額(譲渡価格)を実現できたケースもあります。その理由は、34万人以上の医師が登録するエムスリーの圧倒的な医師会員ネットワークにあるからです。多くの譲受希望者を募ることで、高額な営業権評価額を実現できる場合があり、より良い条件での売却に繋がります。
3. クリニック売却時にかかる税金
クリニックの売却・譲渡の形態は、主に「事業譲渡」と「医療法人出資持分譲渡・基金譲渡」の2つに大別されます。どちらのスキームを選択するかによって、課税される税金の種類や金額が大きく異なります。
3-1. 個人事業(事業譲渡)の場合
個人事業主のクリニックが事業譲渡を行う場合、譲渡で得た対価は「事業所得」や「譲渡所得」などとして総合課税の対象になります。
- 課税対象: 譲渡で得た対価から、譲渡にかかった経費や取得費を差し引いた金額。
- 税金の種類: 所得税、住民税、個人事業税など。
この場合、個人の所得税率(最高45%)が適用されるため、譲渡対価が大きくなるほど税負担も重くなります。
3-2. 医療法人(持分譲渡・基金譲渡)の場合
医療法人の場合、持分譲渡または基金譲渡のスキームが一般的です。
- 課税対象: 出資持分の譲渡対価。
- 税金の種類: 譲渡所得として、申告分離課税が適用されます。所得税および住民税が課税されますが、税率は合計で20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)と比較的低く抑えられます。
- 課税対象: 基金の譲渡対価。
- 税金の種類: 原則として非課税となりますが、法人の含み益が大きい場合は課税される可能性があります。
出資持分譲渡(平成19年以前に設立された医療法人):
基金譲渡(平成20年以降に設立された医療法人):
3-3. クリニック売却時の税金対策
クリニックの売却における税金は、譲渡スキームによって大きく変わるため、事前に専門家に相談することが重要です。
エムスリーでは、経験豊富なコンサルタント専門家が、個々の状況に合わせて最適な譲渡スキームを検討し、税負担を最低限に抑えるようサポートします。
4. クリニック売却・譲渡の具体的な流れと成功のポイント
4-1. 第三者継承の全体像
クリニックの売却・譲渡は、以下のような流れで進められます。
- 譲渡の相談・簡易査定: まずは医院継承の専門家であるコンサルタントに相談します。この際、直近の確定申告書や決算書を用意しておくと、簡易的な譲渡価格の算定がスムーズに進みます。
- 仲介契約の締結: 秘密保持契約を結び、案件情報を登録します。
- 後継者探索: コンサルタントがエムスリーのネットワークを活用し、最適な後継者を探します。
- 候補者との面談: 後継者候補が見つかったら、実際に面談を行い、人柄や理念が合うかを確認します。
- 基本合意の締結: 譲渡の条件について基本的な合意を形成します。
- 最終契約の締結・譲渡実行: 買収監査を経て、最終的な契約を結び、譲渡を実行します。
4-2. 失敗しないためのポイント
クリニックの売却・譲渡を成功させるには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 早めの行動: 理想のご勇退を実現するためにも、できる限り早く行動することが推奨されます。譲渡まで現状の経営を維持する必要があるため、余裕をもって準備を始めることが、理想的な譲渡に繋がります。
- 信頼できるアドバイザー選び: 医院M&Aに精通し、厳重な秘密保持体制と豊富な後継者探索ノウハウを持つアドバイザーを選ぶことが重要です。
- 複数の候補者と会う: 多くの候補者と面談することで、希望譲渡価格から値下げすることなく契約に至るケースもあります。
5. まとめ:まずは無料相談から理想のリタイアを
本記事では、クリニックの売却・譲渡について、閉院との比較から、譲渡価格の相場、税金、そして具体的な手続きまでを解説しました。
リタイアを意識し始めたら、まずはご自身の想いを整理することから始めてみませんか?「いつまで診療を続けたいか」「リタイア後は何をしたいか」。具体的な答えがまだ見つからなくても、専門のコンサルタントに相談することで、ご自身にとって最適なリタイアプランが見えてくるはずです。
エムスリー医院継承サービスは、秘密厳守で、先生に最適な後継者を探索するお手伝いをいたします。
「譲渡価格の簡易査定」や「無料個別相談会」も随時受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。



