医療法人・病院のM&Aを成功させる６つのポイント

現在、多くの開業医の先生が、ご自身の引退や後継者不在の問題に直面しています。厚生労働省の統計によると、日本の診療所医師の約56%が60歳以上であり、そのうち後継者が不在の診療所は約70%にも上ります。このような状況から、事業承継の選択肢として、親族内承継だけでなく、第三者への事業承継（M&A）がますます重要になってきています。

本記事では、医療法人・病院のM&Aの最新動向や特徴を解説するとともに、M&Aを成功させるために不可欠な6つのポイントを詳しくご紹介します。

1. 医療法人・病院のM&Aの現状と動向

近年、医療法人・病院のM&A件数は増加傾向にあります。この背景には、以下のような社会的な要因が挙げられます。

開業医の高齢化と後継者問題

先述の通り、多くの開業医が60歳以上となり、引退を考える時期を迎えています。しかし、親族に医師がいない、あるいは継承の意思がないなどの理由で後継者がいないケースが多数を占めています。これにより、せっかく築き上げた医院を閉院せざるを得ない状況が生まれています。

地域医療への影響

後継者がいないまま閉院が増加すると、その地域の医療提供体制が弱体化し、住民が医療を受けにくくなるという深刻な問題につながります。このため、地域医療の維持という観点からも、M&Aによる事業承継の重要性が高まっています。

譲受希望者の多様化

以前は、医師個人が開業医を目指すケースが主流でしたが、現在は勤務医や医業法人の分院展開など、多様なニーズを持つ譲受希望者が増えています。これにより、M&Aの選択肢が広がり、マッチングの可能性が高まっています。エムスリーのデータによると、毎年2,500件以上（2022年12月1日〜2023年11月31日）の継承希望医師から問い合わせがあるという実績もあります。

2. 閉院では得られないM&Aの大きなメリット

メリット1：経済的なメリット

閉院の場合、建物の解体費用や医療機器の処分費用、従業員への退職金など、多額のコストが発生します。それに対し、M&Aでは譲渡による利益を得ることができ、より豊かな老後生活を送ることが可能になります。実際に、閉院では1,200万円ほどの費用が発生するのに対し、M&Aでは1,900万円ほどの利益を得られるケースもあります。

メリット2：手間やコストの削減

M&Aでは、原則として建物や医療機器をそのまま引き継ぐため、閉院時にかかる解体費用や医療機器の処分費用が不要になります。また、M&A仲介会社を利用すれば、煩雑な手続きもサポートしてもらえます。

メリット3：患者・従業員・地域医療への貢献

医院が存続することで、長年通院してくれた患者さんは安心して診療を継続できます。また、従業員の雇用も維持されるため、共に医院を支えてくれたスタッフを守ることができます。これは、先生が築き上げてきた地域医療への貢献を未来へとつなぐことになります。

3. M&Aを成功させるための6つのポイント

ポイント1：譲渡希望時期から逆算して早期に準備を始める

M&Aは、多くのケースで募集開始から譲渡完了まで1年半から2年程度の期間を要することが多く、それ以上の期間を要するケースも多くあります。理想的な譲渡を実現するためには、引退を検討している時期の2〜3年前から余裕をもって準備を始めることが重要です。急な病気などにより、急いで後継者を探さなければならない状況では、良い後継者と出会うことが難しくなる可能性もあります。