クリニックの継承の事前準備、手続きを解説
「そろそろ引退を考えたいが、何から手をつければいいか分からない」
「閉院か継承か、どちらを選べばいいのだろうか」
もしこのような悩みをお持ちなら、きっとこの記事がお役に立ちます。
開業医として長年、地域医療を支えてきた先生方にとって、ご自身のクリニックを次の世代に引き継ぐ「医院継承」は、人生の集大成ともいえる重要な決断です。しかし、その手続きは複雑で、多岐にわたる専門知識が必要となります。
この記事では、クリニックの医院継承の手続きについて、個人事業と医療法人のケースに分けて、具体的な手順や注意点を詳しく解説します。
1. 医院継承の現状と第三者承継の必要性
1-1. 開業医の高齢化と後継者不足の現状
日本の開業医は高齢化が進んでおり、60歳以上の院長が全国の診療所の約56%を占めています。そして、そのうち約70%は後継者が不在であるという実態がエムスリーの調査で明らかになっています。この後継者不足は、少子高齢化・人口減少社会において、地域医療を維持していく上で大きな社会課題となっています。
1-2. 医院継承の2つの種類
クリニックの承継には、主に「親族内承継」と「第三者承継」の2つがあります。
- 親族内承継: 院長のご子息やご親族がクリニックを引き継ぐケースです。
- 第三者承継: 外部の医師にクリニックを譲渡するケースです。
親族内に後継者がいない場合、円滑な引退のためには、第三者承継が不可欠な選択肢となります。
2. 個人事業のクリニックを継承する場合の手続き
個人事業のクリニックを継承する場合、法律上は「廃業」と「開業」の手続きが必要になります。ここでは、主な手続きを6つのステップに分けて解説します。
2-1. 廃業と開業の手続き
承継元の院長は、クリニックを廃止するための「診療所廃止届」を保健所に提出します。
また、税務署には「個人事業の廃業届出」などの提出が必要です。
一方、後継者は新規に「診療所開設届」を保健所に提出します。
2-2. 保健所や金融機関との事前協議
- 保健所
クリニックの廃止・開設手続きについて、事前に相談し、必要な書類や手続きを把握しておきましょう。 - 金融機関
借入金がある場合は、金融機関に事業承継の意向を伝え、保証人の変更や返済計画について協議します。
2-3. 事業用資産の引継ぎ
建物や医療機器、備品などの事業用資産を後継者に引き継ぎます。
2-4. 従業員の引継ぎ
後継者が従業員を継続雇用する場合、雇用契約を再締結する必要があります。従業員の雇用条件は、譲渡前の条件を実質的に下回らないよう、譲渡契約に特約を入れるケースが一般的です。
2-5. カルテの引継ぎ
カルテは、医師法により過去5年間の保管義務があります。患者の同意を得た上で、後継者にカルテを引き継ぎます。電子カルテの場合、データの保管方法にも注意が必要です。
2-6. 患者や取引先への告知
閉院の約3ヶ月前を目安に、患者さんや取引先に継承を丁寧に説明し、信頼関係を維持することが大切です。
3. 医療法人のクリニックを継承する場合の手続き
医療法人の場合、法人格ごと引き継ぐのが一般的です。個人事業とは異なり「廃業」と「開業」の手続きは不要ですが、以下の点に注意が必要です。
3-1. 社員や理事長の変更手続き
社員総会で役員変更を決定し、法務局で登記手続きを行います。
3-2. 役員退職慰労金の支給
承継元の理事長への退職慰労金を支給する場合、その金額や支給方法について定款に基づき検討します。
3-3. 借入金の保証人変更
医療法人の借入金について、旧理事長が個人保証している場合、保証人を後継者に変更する手続きが必要です。
3-4. 基金の返還または譲渡
基金制度を設けている医療法人の場合、基金の返還や譲渡について検討します。
3-5. 出資持分がある場合の対応
出資持分のある医療法人の場合、出資持分の評価・算定を行い、対応を検討します。
4. 円滑な医院継承のためのポイント
4-1. 早期相談が重要
理想的な形で引退を実現するためには、余裕を持った準備期間が不可欠です。突然の病気などで急な継承を希望する場合、良い条件での譲渡が難しくなることがあります。信頼できる後継者を見つけ、患者や従業員に丁寧に説明するためにも、2〜3年前から準備を始めることをおすすめします。
4-2. 適切なアドバイザーの活用
医院継承を個人で行うのは非常に困難です。
譲渡価格の算定、法務・税務の知識、後継者探索のノウハウといった専門的な要素が必要不可欠だからです。そのため、適切なアドバイザーに依頼することが成功の鍵となります。
アドバイザーを選ぶ際は、以下の3つの要素を全て兼ね備えているかを確認しましょう。
- 医院M&Aに関する財務・法務面に精通していること。
- 厳重な秘密保持体制を確保していること。
- 後継者探索の手法やノウハウを有していること。
5. エムスリー医院継承サービスのご紹介
エムスリーは、34万人以上の医師会員がいるm3.comを運営しています。その豊富なネットワークを活かした「エムスリー医院継承サービス」は、先生にとって最適な後継者を見つけるお手伝いをします。
エムスリーが選ばれる3つの理由
- 国内最大級の医師会員基盤
約34万人の医師会員の中から、貴院に最適な後継者を探し、ご紹介します。 - 秘密厳守での対応
経験豊富な専門家が、情報漏洩のリスクを防ぎます。 - 一貫したサポート体制
マッチングから契約締結まで、継承の専門家が一貫してサポートします。
エムスリーのサービスを利用した譲渡の成功事例として、短期間での譲渡成功例や、開業希望者が少ない地域での譲渡成功例などがあります。
- 【短期間での譲渡成功事例】
理事長の急逝に伴い、早急な後継者探索が必要だった東京都の呼吸器内科クリニックの事例では、初回相談からわずか2週間後に候補者との面談を実施し、約6ヶ月で継承が完了しました。 - 【開業希望者が少ない地域での譲渡成功事例】
福島県の皮膚科クリニックの事例では、他社で1年間見つからなかった後継者が、エムスリーの約34万人のデータベースを活用し、隣接県まで範囲を広げて探索した結果、半年間で4件の申込があり、無事に継承が実現しました。
6. まとめ
クリニックの医院継承は、開業医としての集大成です。
その手続きは多岐にわたり、複雑に感じられるかもしれません。しかし、ご自身の想いを実現し、築き上げてきたクリニックを次世代に引き継ぐために、ぜひ一歩を踏み出してください。
「具体的な検討はまだ」という先生も、まずはご相談いただくことを強くおすすめします。
エムスリー医院継承サービスは、秘密厳守で、先生に最適な後継者を探索するお手伝いをいたします。
「譲渡価格の簡易査定」や「無料個別相談会」も随時受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。



