2016/07/14 開業物件選びのチェックポイント
クリニックの物件形態には、ビルテナント、医療モール、戸建てなどいくつかの種類があります。それぞれ特徴がありますので、自分が志向する医療と照らし合わせて、長所が生きる開業の形を選択するのがベストです。
物件形態を選ぶ際は、先生が目指す医療との相性を検討するべきです。例えば、乳腺外科など専門性の高いクリニックを志向するのであれば、広い地域から患者さんを集めなくてはならないので、駅に近いビルテナントが向いているとされます。一方で、在宅医療をやりたいのであれば、診療所と住居が一緒になった戸建て物件がよいでしょう。なぜなら、先生が住んでいるということが、患者さんや家族に大きな安心材料となるからです。
医療モールの場合は地域住民に認知性が高いため、安定感をもって開業の一歩を踏み出すことができ、志の高い医師たちが集まることが、医療モール成功の鍵といえます。開業スタート時の安定感を優先したいのであれば、継承物件もよいでしょう。患者さんがよくついているクリニックであれば、手堅い物件です。
物件形態 | 特徴とチェックポイント |
ビルテナント | 複数の業種が入居するビルの一区画を賃借して開業する形態。人通りが多い駅前等に立地することが多く、通勤導線が重要視される。ビルが事務所仕様の場合、建築基準法の規定により診療所として用途変更が必要になり初期費用が増えるケースもある |
医療モール | 複数の診療科目が入居するビルで1フロアを賃借して開業する形態。来院患者複数の診療科を受診できる。自宅に近い医療機関を利用する傾向にあるため、夜間人口(在住人口)が多いエリアを選ぶことがポイント。駐車スペースが共有される点もメリット |
戸建て | 戸建を購入して開業する形態。立地選択の自由度は高く、最初から設計できるため外装や内装に拘れるほか、駐車場なども確保しやすい。多額の初期投資が必要となるが、住宅街に開業すれば地域に根差した医院として住民への診療が可能となる |
戸建て(レント) | オーナーが所有する土地に、戸建を建築したうえで貸借して開業する形態。内装や外装の設計においては戸建同様に意向を反映しやすいが、将来的な転用を含め長期的な視野での開業計画が重要となる |
継承(第三者継承) | すでに開業している医院を第三者として引き継いで開業する形態。開業準備が短く、必要な運転資金も少ないうえ、既存の患者やスタッフを引き継げる点も大きい。一方で法務上、財務上のリスクも継承するため事前の調査が重要となる |
標榜科目をどうするかは重要な開業戦略であり、物件選びとも密接に関係します。専門の診療科だけでは集患が難しいため、3~4科目の標榜が一般的です。それにより、間口を広くすることの一定の効果は期待できますが、一方で患者さんには専門医志向もあるため、バランスを考えなければなりません。 また、近隣クリニックの標榜科目との関連もありますから、近くで開業している医師へ配慮して、標榜科目を検討する必要があります。医療モールでは診療科目はお互いに限定されます。
少しでも安い予算でという考えに傾きすぎ、狭い物件を選んでしまうケースがみられます。診察室や待合室のほかに、自分が休息するための部屋やスタッフルームも必要ですし、将来的に導入を考えている機器があれば、そのためのスペースも考慮せねばなりません。
開業が軌道に乗ってから、狭すぎたと後悔される先生は数多くいますが、開業後の数年間を見据えた上で、価格と広さのバランスを検討することが重要です。
また、駐車場についても同様で、特に郊外型クリニックでは、駐車場が不可欠であり、駐車場と診療圏の広さは比例するとも言われます。患者さん用の駐車スペースは確保したが、職員用のスペースを忘れていたという計算違いもよくあるのです。
医療物件の経験が少ない不動産会社では、内科医院に隣接している物件を内科に勧めたり、電力供給が不十分でクリニックが開業できない物件を紹介したりするなど、基本的なミスが発生します。医院経営に精通している経験豊富な不動産会社に仲介を依頼しましょう。
ご家族のご協力がなければ、医院開業は順調に進みません。
契約が決まりかけた物件が、奥様の反対でとん挫することも珍しくありません。
医院の開業場所や、ライフプランなどご家族と十分に話し合った上で物件探しを始めましょう。
物件は、自分の目で見ることも最も重要ですが、奥様、親兄弟、先輩開業医、看護師などにもチェックしてもらい、違う視点から意見を述べてらうことも大切です。客観的な助言を与えてくれ、思わぬ落とし穴を指摘してくれることもあるでしょう。