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2012/03/16   患者数、調査結果と現実の差

当てになる・ならない---大きく意見が分かれる「診療圏調査」。計算方法は企業によって異なるようですが、そこから割り出された数字をどう活用しているのかは、先生(医院)によりさまざまです。
では、診療圏調査で出てきた‘患者数’と実際の患者数は、一体どの程度合致しているのでしょうか。
またその‘差’の要因は何なのでしょうか-----アンケート回答から探っていきます。

診療圏調査の結果と実際の患者数
グラフ:診療圏調査結果の患者数と現在の患者数を比べると?
「とても多い/多い」が約半数に及ぶ

左記のアンケートは、開業場所を選定するにあたり診療圏調査を実施した先生(全体の53.2%)に伺ったものです。
診療圏調査の結果と比べ、多い(とても多い、少し多い)と回答した先生が半数近くを占め、少ない(とても少ない、少し少ない)と回答した先生は3割強に留まりました。
‘変わらない’と回答した先生も含めると、約7割弱の先生が、診療圏調査の結果を軸に患者数を把握し、医院経営の指標としていることがわかります。

また、診療圏調査をどこで実施したかについては、機器・薬剤卸が3割強と最も多く、機器卸やハウスメーカー等に関係しない独立した開業コンサルティング会社と続きます。
さらに、表記にはありませんが複数機関で実施した先生も17.8%という結果に。

診療科にもよりますが、その地域の環境を把握するための診療圏調査は、一つの指標として役立てることができる、ということは間違いないでしょう。

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それでは具体的に、診療圏調査の患者数とその後の患者数の増減について、考えられる要因を伺いました。

患者数、調査と現実の差はなぜ? とても多い/少し多い 変わらない とても少ない/少し少ない

さらに、もっと詳しい要因について見ていきます。

予想外に土地が開け住民が増えた (40代・皮膚科)

在宅を積極的に行っているから (40代・内科)

消化器科を標榜した(クリニック名に入れた)ことにより市内全域より患者さんがくる (40代・消化器科)

駐車場を確保したため、遠くから来院される (30代・皮膚科)

団地の存在を軽視していた点 (50代・外科)

競合する医療機関のDrが高齢で閉院されたから。 (30代・耳鼻咽喉科)

専門性の事情で遠方からも集患できているため。 (40代・糖尿病科)

とくに競合する診療所が近くになく、診療圏調査通りの患者が来ているものと思われます。 (40代・新生児科)

期待値ではなく、現実に即して事前評価したため (40代・消化器内科)

はっきり分からない。診療圏調査が正確であったためか。 (30代・精神科)

単に距離だけでなく、道路・川等の環境条件や近隣競合医院との兼ね合いも考慮して調査をお願いしたため。 (40代・小児科)

クリニック周辺の人々への周知が悪かった。 (40代・消化器内科)

新規の患者が主体であり、通院先を変更して受診する患者は少ない。 (40代・眼科)

地域全体に過疎化が進行しており、ベースのデーターが少し古い気がした (40代・内科)

患者負担の増加という面もあるかと思います。 (40代・眼科)

診療圏調査の後で、近所に同じ科の診療所が2つ開院した。診療圏調査そのものが正確でない。(40代・循環器内科)

まだしっかり浸透していない(PR不足?).標榜科(耳鼻咽喉科)への馴染みが少ないような印象がある. (30代・耳鼻咽喉科)

キーになるのは好立地に加え‘専門性’の打ち出し

今回のアンケート回答の約半数の先生が診療圏調査をおこない、その中で7割弱が「とても多い/少し多い~変わらない」という回答となりました。診療圏調査より多くの患者さんが来院している理由として、「道路や施設ができた」「競合が閉院した」など、想定外の好材料をあげる先生も多く見られましたが、興味深いのは「専門性を打ち出した」という意見。
その地域にない診療科を打ち出すことで印象に残り、集患や認知へと繋がっていくものと考えられます。

また、「変わらない」の項目で多くの先生が回答しているように、診療圏調査の調査方法は調査会社任せにせず、自身の気になる点を明確にし、さまざまな角度から考察していくことが大切なようです。

「とても/少し少ない」要因は、さまざまに分散していたように見受けられました。急速に進む過疎化や移り変わる医療制度、先の読めない競合医院の様子など、医院経営の落としどころをどことするのか…
昔からそのエリアに住んでいる患者さんがいれば、地域の様子(歴史)などを聞いてみるのも、何かヒントにつながりそうです。

(1)地域の特性を把握し、(2)診療科は専門性をアピール、(3)診療圏調査はさまざまな視点からおこなう
--- 今回のアンケートからは主にこの3点が重要と言える結果となりました。

【アンケート概要】

対象

m3.com医師会員 開業医

調査方法

m3.com医師会員向けインターネット・アンケート

調査期間

2012年2月9日~12日

サンプル数

201件

次回予告

費用削減や早期開業に適した形式など、医院の開業スタイルもさまざまになりつつある今日。第3回(最終回)は、「選択した開業物件スタイル」とその理由についてご紹介していきます。2012年3月30日(金)掲載です、お楽しみに!

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