2012/03/02 その場所に開業した理由
クリニック開業のスタートともいえる、開業形態とその立地。経営を成り立たせていくからには、この選定がキーポイントとなります。本特集では、3年以内に開業した先生約200名にアンケートを実施、その実状について意見を伺いました。
多くの開業医が開業している場所は、またそれぞれの利点や弱点は-----
理想の開業を実現するために、医院経営向上のヒントにつなげるために…第1回は、開業場所にスポットを当ててお届けいたします。
開業する場所には自身の出身地や地元を選択した先生が半数近くと大半を占めました。
継承ではなくとも、この場所を選択するということは、精神的な安定や居心地に重点をおく先生が多いともいえるでしょう。
また、患者さんを引き継ぐといった意味合いから勤務地の近くを選んだ先生は3割強。
それなりのハンデがあっても落下傘開業も2割と健闘を見せました。
では具体的に、この場所に開業した理由についてご紹介していきます。
それぞれの診療科や土地・環境によってその大きく異なる、開業場所の選択基準。上記以外では全体を通して、『たまたまよい開業物件が見つかったから』 という回答も少なくありませんでした。
開業場所と開業物件。家探しと同じで、自身の希望する条件と物件側の条件が100%合致するということはほとんどないでしょう。しかし、こればかりは‘ご縁’…と割り切らずに、日ごろから積極的に情報収集することで、思わぬ‘棚ぼた’が舞い込んでくるかもしれません。理想の開業への宝物がどこに潜んでいるか、わからないものですね。
では次に、実際に開業してみて感じた、その場所の良かった点、悪かった点をご紹介していきます。
・知り合いが患者になったり他の患者を連れてきたこと(50代・胃腸科)
・通勤しやすい(70代・精神科)
・地元に貢献できる。(40代・眼科)
・医師会、集患、銀行などスムーズにいったと思います。(50代・産婦人科)
・親、祖父母の近くにいることができ、死に目にも会えたこと。(30代・腎臓内科)
・新鮮味がない(40代・小児内科)
・父親と比較された(50代・循環器内科)
・人口が思っていたほど多くなかった。 (40代・糖尿病科)
・道を歩けば知り合いに会う(30代・眼科)
・勤務医時代の患者に来てもらえない。(40代・泌尿器科)
・悪い噂が出ればすぐながれる、(スタッフがやめるとか)(40代・消化器内科)
・妻が転居によって土地勘がないところにきたこと。経営。(30代・腎臓内科)
・以前の患者が来院してくれる(50代・内科)
・後方支援病院が近い(40代・耳鼻咽喉科)
・軌道に乗るのが速い(40代・産婦人科)
・連携がしやすい(40代・整形外科)
・同じ医師会でシステムが同じ(50代・循環器科)
・患者さんに高度の医療サービスを提供できる。(40代・脳神経外科)
・自宅から遠い(40代・消化器科)
・元の勤務地のスタッフから患者さんを横取りしているとの誤解をもたれたことなど。(40代・内科)
・開業当初から患者さんがたくさん来てくれて、毎日が大変だった(40代・小児科)
・元上司と仲が悪い(50代・産婦人科)
・治療に病院と同じスタイルを求められること(40代・耳鼻咽喉科)
・新規の患者さんの開拓が遅れた。(50代・糖尿病科)
・一歩一歩足場を固めて進んでいける(50代・眼科)
・仕事とプライバシーを分けられる(40代・小児科)
・ゼロから自分を評価して頂ける事。(40代・内科)
・自分のやりたいことができ、やりがいを感じる。(40代・呼吸器内科)
・どこに何があるか、地域の特性を把握するまでに時間がかかった(50代・眼科)
・困ったときに誰にも聞けない(30代・美容外科)
・入院の紹介先に困る(40代・精神科)
・集患がたいへん(40代・消化器内科)
・やはり代々住んでいる方(とくに医師会)から見て、よそ者と思われていること。受け入れられるのに時間がかかりそうです。(40代・新生児科)
・患者さんの生活パターンが類推しにくい。(40代・眼科)
半数近くの先生が開業した「出身地や地元の近く」ですが、その弱点は、『出かければ患者さんに会う』『情報がすぐに広がる』など、医院以外の様子(情報)も垣間見られてしまうこと。継承の場合も、開業準備こそ多少楽かもしれませんが、先代や同業者の親族と比べられるなど、そのプレッシャーとは戦う必要があるようです。
また、意外に多くあげられた意見としては、プライベートと診療との線引きに関するもの。開業医も人間ですから息抜きの時間は必要です。休息のさじ加減は個人の性格によって大きく異なってくるところですが、どういったスタイルが自分に一番合っているのか、は一度じっくり整理しておく必要がありそうです。
「元の勤務地の近く」については、病院と医院の形態の違いに戸惑う患者さんの対応や、元勤務先との関係を上手に構築することにポイントがありそうです。
「土地になじみのない落下傘開業」は、自身の診療方針を一からつくりあげていく事ができる反面、集患や環境への慣れにはやはり少し時間がかかってしまうよう…予測できたこととはいえ、波にのるまでは忍耐が必要なようです。
と、主に弱点をあげてきましたが、それ以上に「良かった点」にも多くの意見があがってきました。 出身地ならではのあたたかい人間関係、いつの間にかできあがっていた勤務医時代の患者さんとの信頼関係、自身で懸命に取り組んだ事に感謝された瞬間--- それぞれに利点・弱点はありますが、長く過ごすことになる開業場所に、心から愛着がもてるように十分、吟味したいものです。
【アンケート概要】
対象 | : | m3.com医師会員 開業医 |
調査方法 | : | m3.com医師会員向けインターネット・アンケート |
調査期間 | : | 2012年2月9日~12日 |
サンプル数 | : | 201件 |
第2回は、「診療圏調査」にスポットを当て、調査結果で出た患者数と実際の患者数の違いやその要因について、アンケート結果をもとにご紹介していきます。2012年3月16日(金)掲載予定です、お楽しみに! |