2015/10/29 医院開業に必須の事業計画書とは
開業へ向けて物件選びと並行して準備するのが事業計画書です。資金調達の際は、金融機関などから事業計画書の提出を求められますが、書き方や作り方が分からないと悩まれる先生が多いのが実態です。事業計画書は、「収支計画書」、「患者見込み計画書」、「設備計画書」などで構成されます。今回は事業計画書作成のポイントや、外部からアドバイスを受けた開業医の先生の割合などをご紹介します。事業計画書作成のご参考になさってはいかがでしょうか?
一言で事業計画書といっても、医院開業までに銀行からの資金調達、保健所への届出、厚生局への申請の3つの場合で必要になります。それぞれの提出先によって求められる書式が異なりますので、ご確認の上で提出してください。
銀行などの金融機関(資金調達のため)
銀行や公的金融機関で開業のための融資を受ける際には必ず事業計画書が必要になります。銀行による医師向けの融資にもいくつか種類があり、メガバンクなどが取り扱っている診療所向けの融資パッケージ商品は、審査が厳しくない一方で利率が少し高めになっています。一方で公的金融機関や銀行から通常通り融資を受ける場合は、事業計画をチェックされます。
厚生局(保険医療機関申請のため)
保険診療を行う場合は保険医療機関指定申請書を各都道府県の厚生局に提出する必要があります。この際、医療法人としての申請には、事業計画書が必要になる場合があります。医療法人としての申請を計画されている先生は各地の厚生局にご確認ください。
保健所(診療所開設届出のため)
診療所(クリニック)を開設するためには、診療所所在地を管轄する保健所に届け出を行い、立ち入り検査後に認可を得る流れとなります。開設の届出に必要な書類は、各保健所で異なりますので確認が必要ですが、事業計画書が必要になるケースがあります
■ 収支計画書
収支計画書に記載する代表的な項目は下記になります。
<収入>
・患者見込み計画書にも基づく収入予測
<支出>
・人件費
・賃料
・減価償却費(リース料)
・借入金の返済額
診療圏調査などの結果から得られた患者見込みに診療単価を掛けた収入から、人件費、賃料などの固定費と借入金の返済額を差し引いた収支を記載する書類が「収支計画書」です。この収支計画書が事業計画書の中でも最も重要になります。
開業後数カ月は計画通りの患者数が見込めないので、当面の資金繰りと、軌道に乗った後の損益計算書は別々に検討することをお勧めします。開業当初に資金がショートしないよう、毎月最低でも1,000万円の手元資金を確保すべきとされてきましたが、最近では競争環境が厳しくなってきており、2,000万程度が手元に残るよう可能な限り借入をする必要があるという指摘も増えてきました。
また、軌道に乗った後の損益計算書は楽観的、通常、悲観的の3パターンを作成すると、固定費の大部分を占める人員計画などを立てる際に参考になります。
■ 患者見込み計画書
患者見込み計画書は、開業支援企業が行っている診療圏調査の結果で得られる、1日あたり来院する患者の数を参考にするのが一般的です。診療所の収入は下記で表すことが可能です。
診療所の月収=1日当たりの患者の数×平均診療単価×診療日数
ただ、いわゆる上記の数値も重要ですが、開業予定地の患者の層の現状と今後の変化と、近隣の競合医院の先生の年齢や後継者の有無などどれだけ精度の高い情報を把握しているかが事業計画には重要になります。
■ 設備計画書
「設備計画書」に記載するのは、基本的に初期投資です。具体的には物件の賃料や保証金、建築、内装費、医療機器などがあたります。初期投資では内装費のウエイトが大きくなります。医療機器も設備に該当しますが、手元の資金に応じて購入かリースか選択することになります。リースの場合はトータルで支払う額は多くなりますが、毎月少額のリース料だけで医療機器を使用できる点がメリットとなります。
■ 担保明細
担保明細は不動産の場合は登記簿謄本が必要になります。保健所や厚生局に事業計画書を提出する場合は、同時に必要書類として、賃貸物件の場合は賃貸借契約書、金銭消費貸借契約書が必要になる場合もあります。
これまでご説明した事業計画書をお1人で全て作成するのは非常に時間がかかります。そこで、事業計画書の作成を開業支援企業を活用することも一つの選択肢です。事業計画書作成時のコンサルタント活用状況について開業医の先生にアンケートを実施しました。どのくらいの先生が外部のアドバイスを活用されているか、参考になさってはいかがでしょうか?
調査期間 2015年10月16日~19日 n=57
今回は事業計画書についてご紹介しましたがいかがだったでしょうか?開業を検討しているが事業計画書の書き方が分からない、自分に合っている開業支援企業をどのように選べばよいかわからないという先生は、m3.com開業・経営コーディネーターにお気軽にご相談ください。