医院の譲渡により、ハッピーリタイアを実現

収益性を高めるプランで継承者探し
山王医院
清宮 俊春先生
父の代から30年余にわたり地域医療に貢献
医院の歴史を教えてください。
山王医院は昭和55年(1980年)1月に群馬県前橋市山王町で開業しました。
私の父は産婦人科の開業医でしたが、当時は医療機関が拡大路線をとっていた時代でしたので、産婦人科に内科、眼科、歯科の医師が順次加わり、35床の医院となりました。
以来30年余にわたり地域医療に貢献してきましたが、ここまで経営を続けてこられたのは、診療報酬制度への理解を深め、半歩先を見据えた経営施策をいち早く打ち出してきたからだと考えています。
群馬県・前橋という土地は、群馬大学医学部付属病院があり、医療圏の特徴としては人口の割に規模の大きい公立病院が多いことが挙げられます。さらに近年では、群馬大学を卒業した地元の先生の開業や、東京の先生の落下傘開業などで医院の数は増加していますので、特徴を打ち出さないと医院経営は厳しくなってきていると感じます。
また、前橋はバリウムではなく内視鏡で胃がん健診を行っていますので、内視鏡ができる先生が多い点も特徴だと思います。
患者さんやスタッフが職を失うことが気になった
譲渡を検討された背景やきっかけは何ですか?
これまで堅調な経営を続けてきましたが、二人三脚で働いてきた眼科医の妻からは、「できれば早めにリタイヤしたい」という意向を聞いていました。
また、施設の老朽化も進んでおり、修繕コストや光熱費など毎月支払う多額の維持費に悩んでいたこともあります。
私も60代中盤に差し掛かり、体力的な不安もでてきたため、今後について真剣に考えるようになりました。
実は、当初は閉院する方向でした。群馬県の医務課には、半年以内には閉院して施設を取り壊すと話し、業者に取り壊し費用の見積もりを取っていたほど話が進んでいたのです。
ただ、やはり、これまで診察してきた地域の患者さんやスタッフが職を失うことが気になったため、何とか存続できないかと考え直し、譲渡を検討し始めました。
この頃にエムスリーに問い合わせました。すぐに決算書を送って譲渡先を探し始めてもらったのですが、親族に医師が多いものですから、まずは親族間での譲渡を模索しようと考え、一旦保留にしたいと申し出て決算書を戻してもらいました。
その後、親族の医師に譲渡を打診し、関係の会計事務所に譲渡プランを考えてもらいましたが、お互いの距離が近すぎる分、経済的な条件などを冷静に判断することが難しく、なかなかまとまりませんでした。
また、親族に譲渡するプランでは、私がこの先何年も診察するという条件でしたので、体力的にも厳しいと考えました。知人の医師に聞いても、親族間での継承は泥沼になることもあると聞き、それは避けたかったというのが本音です。
そこで、改めてエムスリーに、本格的に譲渡先を探してもらうことになりました。
4カ月以内に見つかれば存続、見つからなければ閉院
譲渡を検討する上で、懸念していた事はありましたか?
一番大きかったのはタイムリミットです。エムスリーへの依頼時点から4カ月以内で譲渡先が見つからない場合には医院を取り壊すことを県の医務課に申し出ていましたので、期限までに良い先生が見つかるのかと心配は尽きませんでした。
見つかれば存続、見つからなければ閉院という、まさに0か100かという感じでしたので、候補が見つからない日々の中で落ち込んだこともあります。
あとは、相手(買い手)の先生のお考えです。職員の待遇は守られるのかと気になりましたし、医療をお金儲けの道具と考えて、地方で稼げれば良いというだけの方だと困るなと思っていました。
多くの先生は真面目だと思っていますが、譲渡される側の先生にも利点がないといけませんので、そのあたりの条件がどのくらい折り合うかは懸念していました。
とにかく、継承される先生の人柄を重視
譲渡を検討する上で、希望された条件を教えてください。
いくつも条件を設定したわけではなく、とにかく継承される先生の人柄を重視しました。
数回お会いするだけで全てが分かるわけではありませんが、第一印象や、医療に対する考え方に共感できるかといった点です。
院長職から解放され、患者さんの診療に専念
譲渡後にクリニックや先生の診察はどのように変わりましたか?
譲渡後も基本は変わりませんが、スタッフはやりやすくなったと思います。
以前は、経営者と従業員という立場でしたので、どうしても上下関係ができていました。いまは経営や人事の責任を負う院長職から解放され、週2コマのペースで、患者さんの診療に専念できています。
譲渡が決まってから医院経営が悪化してしまっては心苦しいなと思っていましたが、直近でも保険点数は微増しましたので安心しています。
医院の譲渡は、最終的には人と人の信頼関係
譲渡できた要因は何だと思いますか?
医院の譲渡は、最終的には人と人の信頼関係だと考えていましたので、エムスリーの継承コンサルタントに安心してまかせられたことが大きかったと感じています。
私がフィーリングでは分かっている医院の価値をエムスリーは数字として明確に示していただき、
お話に説得力がありました。
当院は、売上の割に大きすぎる建物で維持費ばかりがかかり、誰も引継いでくれないのではと思っていましたが、建物の建て替えと診療科を内科に収集させ、収益性を高めるプランを前提に継承者を探してくれたことが大きかったと思います。
また、私とお相手のどちらに肩入れするわけではなく、公平にマッチングを進めていただけました。
この公平さが、スムーズに譲渡できた要因だと思います。

譲渡を計画するのは早ければ早い方がいい
譲渡を検討されている先生方に対し、経験者としてアドバイスをいただけますか?
まずは、譲渡を計画するのは早ければ早い方がいいと思います。経営が厳しくなってから考え出したのでは少し遅いと思います。
よりよい相手と巡り合うかというマッチングですから、十分に時間をとって検討すべきです。
お相手とのマッチングは当然ですが、間に立って橋渡ししてくれる人とのマッチングも大切です。
医院の譲渡は、売る方は高く売りたいし、買う方は安く買いたいですから、両者が譲歩しなければなりません。
そこで、なんとなくではなく、お互いに納得感のある説明があるかどうかが重要です。それを公正に取り持ってくれる方ではないと任せられません。
あと、後継者としてお子さんや親族を考えている先生もいらっしゃると思いますが、親子で喧嘩して失敗している医院の例をよく聞きます。
何か意見が対立したとき、他人の先生だと遠慮して言えないことも親子だと平気で言ってしまうことが原因ではないでしょうか。
親子、兄弟、夫婦、親族への継承は、うまくいけばベストですが、そうでないケースもあると考え、それ以外の選択肢も視野に入れるべきだと思います。