方法1:開業予定地の診療圏調査を行う
開業の立地について考えるとき、まずは、診療圏の市場性を検討しなければなりません。
また、都市部、郊外、下町、山の手など、それぞれの地域事情により医療ニーズは異なるため、自分が行おうとする医療の競合状態も調べる必要があります。
ニーズの低い地域や競争の激しい地域で開業したのでは、成功は望めません。
診療圏調査イメージ画像(出典:マップソリューションズ)
「診療圏調査」とは、その物件の半径500m~1km以内の人口や医療機関の数などから、診療科別に推定受診患者数を割り出します。人口は動かしようのない競合するクリニックや病院をどう評価するかは、解析者の情報量と経験にかかっています。
開院後、期待したほど患者さんが来院しないというケースの中には、診療圏調査での患者数の読み違いもあるため、楽観的に予測せず、なるべくシビアに検討すべきでしょう。
方法2:開業地の将来性を予測する
現時点での市場性を把握するだけではなく、将来性を予測することも必要です。
その地域は今後どのように発展していくのか、人口や住民の年齢構成比はどのように変化するか把握する必要があるでしょう。
例えば下の図の江東区は、今後20年にわたり人口が増加し、子供の数も僅かですが増えていきます。
一方で台東区は人口が減少し、高齢化率が上昇していきます。
また、医療モールや病院ができる予定はないのかなどの調査も必要です。
開業して順調にスタートを切ったのに、競合するクリニックが近所にオープンして患者数が激減したという事例はいくらでもあります。
また、将来性を見込んでニュータウンで開業してみたら、計画通りに街づくりが進まず、閉院せざるを得なくなったという事例もあるのです。
将来人口動態の対比(出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口)
方法3:現地に足を運んで自分で確認する
統計データには現れない定性的な情報は、ぜひ自分の足で調べたいものです。
・役所の担当者から都市計画を聞く
・駅前の不動産屋で情報を収集する
・タクシーの運転手さんに近隣病院の評判を聞いてみる
・競合しそうな医療機関を視察する
など、先生ご自身で可能な限り何度も現場を訪問することをお勧めします。
そして、候補物件は、平日と休日に訪れるだけでなく、昼、夜、雨の日にも行ってみることで、人の流れがどのように変化するか肌で感じることができるでしょう。現場を何度も見ることによって、自信のある判断が可能になります。
方法4:発想の転換を行う
ひと昔前は、自分が勤務していた病院の前で開業するのは背信行為とみなされました。
しかし、今日では、外来機能と入院機能の役割分担が進んだため状況が一変し、勤務先病院の真正面に開業して、病院からも患者さんからも支持され順調なスタートを切っている事例もあります。
また、医療過疎地に単身赴任で開業した先生もいます。住民から感謝されクリニックは大繁盛、子息の教育を考えて家族は都会に留まり、院長は土日だけ帰宅するというライフプランを選択しました。