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電子カルテ

2021/03/11   有識者が語る 人気電子カルテ5種の長所短所

有識者が語る 人気電子カルテ5種の長所短所

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画像素材:PIXTA

新規開業・医院継承のタイミングで電子カルテの導入を検討している、紙カルテからの移行を考えているけれど、電子カルテの選び方がよくわからない…そんな悩みをお持ちの医師の皆さまへ。今回は、各社の電子カルテ事情に精通し、数多くの開業をサポートしてきたエムスリー株式会社 開業・経営コンサルタントに取材を実施。後編となる今回は、人気の高い電子カルテをピックアップ。それぞれの長所短所についてご紹介します。

教えてくれた方

m3.com開業・経営コンサルタント
近藤 雄資さん、行武 李紗さん

院内サーバー型(オンプレミス型)とクラウド型の特徴をおさらい

人気の電子カルテ機種それぞれについて言及する前に院内サーバー型(オンプレミス型)とクラウド型の特徴についておさらいします。より詳しい情報はvol.1をご参照ください。

【院内サーバー型(オンプレミス型)】

  • 多くの大学病院や市中病院でも採用されている電子カルテ。電子カルテとしての歴史も長い。院内で電子カルテ情報を管理する。
  • PHC、富士通、東芝、日立などの大手メーカーのほかに、新たなメーカーも参入してきている。
  • 機能が充実しており、個々の要望に応じてカスタマイズも可能。
  • 導入時の操作研修や、開業日の立ち合いなど、対面でのサポートが充実。
  • 初期費用、ランニングコストともにクラウド型と比較をすると高額になる傾向。
  • バックアップやセキュリティ上の対策が、クラウド型とくらべて劣る傾向。

【クラウド型】

  • 近年人気が上昇している電子カルテ。クラウド上で電子カルテ情報を管理する。
  • 機能は必要十分でシンプルな傾向。
  • サポート体制はオンラインや電話が中心の場合が多い。
  • その分、初期費用、ランニングコストが抑えられる。
  • バックアップやセキュリティに優れるのも特徴の1つ。

※代表的な機種のおもな特徴の概要をまとめたものです。
必ずしも、すべての機種に該当するものではないことをご了承ください。

使いやすさは横並び。病院で使っていたから…にこだわる必要はない

これまでサポート面や費用面で解説していただきましたが「使いやすさ」という点に着目して選ぶなら、どの電子カルテがいいでしょう?

行武さん
どの電子カルテも、診療する上で行う操作は基本的に一緒ですが、先生が重視される軸により操作のしやすさは変わってきますので、操作性については、ご自身が重視する軸に適して機種を選んでいただければと思います。

使い慣れているという点で、病院時代と同じメーカーを、という考え方もありますよね。

行武さん
病院向けの電子カルテと、クリニック向けの電子カルテは大きく差があります。例えば、病院向けの電子カルテの場合、専属のSEがそれぞれの病院に合わせて設定を変えているなどのサポートを行っています。したがって、病院で使用していたものを選ぶ、という考え方はクリニックではフィットしないかもしれません。全くの別物とお考えいただき、ご自身に合った電子カルテを選択されることが良いかと思います。

例えば、無床診療所向け電子カルテシェアNo.1のPHC社※(Medicom-HRVや、富士通社(HOPE LifeMark-SXの電子カルテはいずれも代理店が多数あり、対面でのサポートという意味で、安心です。ただし、導入時や5年毎の買い替えでまとまった費用がかかるほか、月々の保守費用も考慮された方が良いと思いますので、予算を抑えたい新規開業の際などは、その点も検討されるとよいと思います。
※旧パナソニック ヘルスケアホールディングス株式会社

近藤さん
病院とクリニックの電子カルテにおける、最大の違いは「入院機能の有無」です。病院で採用されている院内サーバー型(オンプレミス型)の電子カルテは、クリニックでは機能が多いというご意見もあります。シンプルな操作性で選ぶ場合、勤務医時代にご使用されていたものにこだわる必要はないかもしれません。

PHC社(Medicom-HRV)
【院内サーバー型(オンプレミス型)】無床診療所向け電子カルテシェアNo.1。様々な機能がついており、オプションで入院機能も付帯可能。代理店が多く、対面サポートが受けられる。導入時、ランニングコストともにクラウド型よりは高額になる傾向。

富士通社(HOPE LifeMark-SX)
【院内サーバー型(オンプレミス型)】レセコン大手メーカーのひとつ。様々な機能がついており、処方欄に直接入力して薬剤検索が可能。PHC社(Medicom-HRV)同様、初期のセットアップ、初期の研修、緊急時の訪問などのサポートが充実。ただし費用はクラウド型より高額になる傾向です。

費用を抑えるならクラウド型、オプションで手厚いサポートも可能に

手厚いサポートは魅力ですが、やっぱりコストは抑えたいですよね。

行武さん
近年クラウド型電子カルテへの導入が増加しているのも、機能とコスト、両面で検討される先生がいらっしゃるからと考えられます。現在クラウド型でのシェアNo.1はエムスリーデジカル社のM3 DigiKar(エムスリーデジカル)。このほか、MEDLEY社、Donuts社など比較検討されている先生も多いのではないでしょうか?

院内サーバー型と比べコストが抑えられるクラウド型ですが、クラウド型同士を比較する場合、どこに注目すべきでしょうか?

近藤さん
院内サーバー型(オンプレミス型)と比較して、新しく参入する企業が多いクラウド型では、コストだけでなく会社の信頼性も合わせて検討されることをおすすめします。前回もお話しましたが、クリニックを長期間続けていかれるなかで、その会社の存続性はどうか?という目線は非常に重要です。

MEDLEY社/CLINICS(クリニクス)
【クラウド型】予約システムやオンライン診療などの自社サービスを複数持っており、機能連携のしやすさが特徴の1つとして挙げられます。精神科の先生など、オンライン診療希望の先生が使用されることが多いです。

株式会社Donuts/CLIUS(クリアス)
【クラウド型】ゲーム事業で成長してきた企業が参入し発売した電子カルテ。Mac、Windowsどちらでも利用可能。他社製品との連携に関しても対応しています。

費用で選ぶならクラウド型…ただ、院内サーバー型(オンプレミス型)のサポートも捨てがたいです。

行武さん
さきほどお話したエムスリーデジカル社(M3 DigiKar)については、院内サーバー型(オンプレミス型)と同様、導入時のセッティングや操作方法の講習、操作不具合時に駆けつけての修理対応などのサポートを、オプションにて実施しています※。地域により難しい場合もありますが、初期費用やランニングコストをクラウド型でおさえつつ、院内サーバー型(オンプレミス型)のような手厚いサポートも必要という先生方はぜひ一度ご相談いただければと思います。
※実施条件がございます。詳細はお問合せください。

また、Mac、iPadとの連携が可能というのもポイントです。iPadとApple Pencilを使用すれば、紙カルテと同じように手書きでの入力も可能になります。とくに、大先生と若先生が一緒に診療されるクリニックや、紙カルテに慣れた世代の先生に好まれる傾向があります。

エムスリーデジカル社(M3 DigiKar)
クラウド型電子カルテ導入数No.1の電子カルテ。iPad連携が可能なため、紙カルテ同様の使い心地も実現。iPadで撮影した写真をそのままシェーマのように使用できるため、皮膚科など写真を多用する診療科で利用されるケースもあります。月々のオプション料金で院内サーバー型(オンプレミス型)同様の手厚いサポートも選択することが可能です。

各社、様々な特色があるのですね。

行武さん
はい、費用や機能など、気になるものを比較して選択されるといいのではないでしょうか。

各社の電子カルテ事情に精通し、数多くの開業をサポートしてきたエムスリー株式会社 開業・経営コンサルタントに取材を実施し、人気の高い電子カルテをピックアップ。それぞれの長所短所について解説いただきました。次回は、2020年版 電子カルテ人気ランキングをご紹介します。