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クリニック継承(譲渡)を考える

2020/12/30   内科継承「サブスぺ」よりも重要なポイントとは

内科継承「サブスぺ」よりも重要なポイントとは

 
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厚生労働省の調査(※1)によると、2018年の全国診療所数(民間経営)は約9万件、そのうち院長が60歳以上の割合は約半数にのぼると報告。さらにエムスリーのアンケート調査では、その約7割が「後継者不在」ということが判明。自身や家族、医院、スタッフ、そして患者さんの未来を前向きに検討するために知っておきたい「クリニック継承(譲渡)」について紹介する本連載。今回は「内科継承」に特化した情報をお届けします。

※1厚生労働省「平成28年医療施設(動態)調査」「平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査」

【プロフィール】

村田 耕平氏 エムスリー株式会社 医院継承チームリーダー

ヘルスケア専門のコンサルティング会社にて、医療機関の運営・再生支援、自治体の医療計画策定支援、事業会社の戦略策定支援等に従事。その後、エムスリー株式会社にて医院の第三者継承支援に携わる。

サブスペが違っても…勤務医の4割は「内科」

これまで医院の第三者継承の概要についてお話を聞いてきました。今日はとくに内科に特化した情報についてお話を聞かせてください。

はい、まず内科の第三者継承は、他科と比べて件数が多く、スムーズに決まりやすい、後継者を見つけやすいという特徴があります。

病院では、臓器別に循環器、呼吸器、消化器の上部・下部など細かく分類されているものの「内科」という大枠で見れば勤務医の約4割が内科です。次いで多い整形外科でも約7%ですから、そもそも人数が圧倒的に違うのです※。また、開業を希望される医師の診療科も内科が約6~7割を占めるといったことも要因として挙げることができます。

※厚生労働省「平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査」

内科医院に求められている役割は感冒や予防接種など、いわゆるプライマリケア、「一般内科」がメインですから、サブスペシャリティ(以下サブスペ)を気にしすぎることなく、多くの候補者から後継者を選ぶことが可能です。

そうは言っても、たとえば消化器内科を、循環器内科や呼吸器内科の先生が継承するというのはどうなのでしょう…サブスぺの違いは気になりませんか?

もちろん、サブスペを限定して継承を希望される先生もいらっしゃいます。たとえば内科よりも“消化器内科”をメインにしており、1日の患者さんの半数近くが消化器系疾患、内視鏡検査の数も多い…という状況であれば、サブスペまで気にして後継者を選ぶ必要があるでしょう。

継承する側にとって、クリニック継承(譲渡)の最大のメリットは、患者さんをそのまま引き継げることですから、サブスペが違うがために患者さんを逃してしまっては、継承の意義が薄れてしまいます。ただし、専門性が要求される患者さんが全体の約2~3割程度までなら、それほど気にされないことが多いようです。

患者さんの割合によって検討するということですね。

はい、サブスペが異なる場合、継承後の患者さんへの対応として4通りが考えられます

①近医へ紹介。継承のメリットは低減するが、患者数の約1割程度ならば許容範囲。
②継承までの期間、新院長が非常勤として勤務し、勉強をする。
継承後も前院長が非常勤として残り、週1回程度の専門外来(検査含む)として対応する
④サブスぺの一致した非常勤医師を新たに雇用して対応する

コンサル側としては、まず②③を提案し、③を選ばれるケースが多いです。新院長は前院長から経営面のアドバイスをもらったり、昔からの患者さんについて相談したりしながら医院の運営を軌道に乗せることができますし、前院長もアルバイト代として収入を得ながら無理のない立場で医院に関わり続けることができます。患者さん含めて三方良しの方法ではないでしょうか。

また、サブスペが異なる新院長が就任することで、これまでできなかった検査や治療ができるようになり、さらなる集患に繋げられるという可能性も十分に考えられます。継承する側、される側ともに、専門性にこだわりすぎるよりも、人柄や相性を重視されることをおすすめします。

では、注目すべきポイントはどのあたりになるのでしょうか?

これは主に継承する側に対してですが、まずは自身の経験を振り返り、「強み」「弱み」を把握し、いかに強みを活かすか、弱みを少なくするかを考えることが重要です。

内科系は競合医療機関が多いため、専門性の生かし方・差別化が重要になります。そのため、地域・立地をしっかりと調べる必要があります。開業を希望する地域の特徴、つまり人口動態、競合医療機関数・特徴、地域のルール等を徹底的に調べあげ、自身の強みを生かせるか、差別化を図り、患者を集めることが可能か等を考えます。その上で、新規開業だといろいろとハードルが高そうということであれば、継承開業を検討されてみてはいかがでしょうか。

既に患者さんから評価を得ている医院を引き継ぐ、つまり地域で強みが認識されている、差別化できている医院を引き継ぐので、スタート時点で大きなアドバンテージを持つことになります。

また、地域によっては新規開業では医師会への加入が困難なケースもあります。医師会に加入できなければ、行政が公費で実施する予防接種や検診・健診を請け負うことができません。予防接種や検診・健診は、新規開業時に患者さんに医院を知っていただき、定期通院に繋げる大きなチャンスのひとつですから、これができなければ事実上、大きな苦境に立たされるでしょう。一方、継承であればスムーズに地域に入り込むことができます。さらに、あとから新規開業でライバルが増える可能性も極めて低いので、安定した経営が見込めます。

また、2020年度以降、外来医師多数区域では新規開業に一定の条件を設けられることが議論されるなど、新規開業の要件が厳しくなる可能性がありますから、こうしたエリアでの独立を考える場合にも継承はよい選択肢になり得るでしょう。

内科継承で考えたい「在宅医療」への意欲

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内科クリニック継承(譲渡)の大きな特徴として、在宅医療への取組みについても挙げられます。

現院長は高齢のため体力的な事情から在宅医療を行っていないが、人口動態(高齢化率が高い)や競合医療機関の状況(在宅医療を行って医療機関が少ない)等から、在宅医療への地域ニーズがとても高い場合に、継承する側は在宅医療を新たに実施すべきかの判断を迫られることになります。

在宅医療は患家の求めに応じて24時間365日対応が必要なことから、ハードルがとても高いと感じられています。但し、実際には想定していたよりも負担が少なかったという声をよく聞きますし、地域の病院・訪問看護ステーションとの連携体制を構築したり、院内オペレーションを工夫したりすることにより、医師の負担を軽減することも可能です。

なにより、在宅医療は外来医療と比較して診療報酬が高いので、短期間でしっかり収益を確保したい先生にはおすすめではあります。たとえば、こんなケースがありました。

昔ながらの、団地の多いエリアにあったA医院。前院長は高齢と体力不足のため在宅医療はせずに細々と外来診療を続けていましたが、収益はさほど多くはありませんでした。収益性の低さからA医院をリーズナブルに継承した新院長は、団地に住む高齢者を対象に在宅診療を開始。一気に患者さんが増え、瞬く間に購入資金を回収。多くの患者さんやご家族に喜ばれながら高い収益を上げ続けています。こういった“お宝継承”の事例は全国各地にありますから、将来性も含めて、やはり立地や在宅診療への考え方は重要です。

プライベートを重視するのか、収益を重視するのか、自身価値観やの在宅医療への意向も考えながら、自分にあった継承案件を探すことが重要ですね。


数々のクリニック継承(譲渡)を手掛けてきた医院継承コンサルタント 村田耕平氏に内科の事情に合わせた第三者へのクリニック継承(譲渡)についてお話を伺いました。連載 人生100年時代に考える、クリニック継承(譲渡)では今後も様々な角度からクリニック継承(譲渡)にまつわるトピックスを紹介して参ります。