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医院開業コンサルタント、見つけ方・選び方は?

クリニックの開業準備をしていると、土地選定・設備・採用など、多くの項目を検討する必要に迫られます。とはいえ、これらは多くの医師にとって専門外の領域です。判断軸がなく混乱するかもしれませんし、普段の業務と並行して行えば時間と労力もかかります。

そんなときに活用したいのが、クリニック開業の専門家である「クリニック開業コンサルタント」です。

クリニック開業コンサルタントの役割とは

「クリニック開業コンサルタント」と一口に言っても、支援内容は業者によって違います。開業に必要な業務は多岐にわたり、開業医もそれぞれの領域で得手・不得手を感じるところではないでしょうか。

開業コンサルタント(以下コンサル)を検討するときは、まず「どの領域の支援を必要としているか?」を洗い出し、自覚することが必要です。そのためには

  • 開業に必要な「領域」を知る
  • 自身の「負担・苦手」を知る
  • 苦手をサポートする「コンサル」を知る

開業戦略の立案

クリニックの開業は「会社の設立」と同様であり、開業医は経営者にあたります。筋の通った経営には「全体戦略」が欠かせず、曖昧なままでは成果に繋がりにくい選択をしてしまう危険性が。開業戦略をサポートするコンサルは医師からヒアリングを行い、方向性や計画などを明確化するための支援を行います。

特に理念は集患や人材育成などを含む全体の指針となるため、最初に明文化しておきたい項目です。

  • 開業スケジュール作成
  • 開業目的のヒアリング
  • 理念のヒアリング
  • 経歴やスキルの棚卸し など

開業地の選定・調査

開業地には「住宅街か駅チカか」「都市部か郊外か」「ビルか戸建てか」など、さまざまな検討事項が存在します。クリニックの立地は集患に大きく影響し「立地で売上が変わる」と言っても過言ではありません。ここで土地選定に詳しい専門家が入ることで、要望に合った土地・テナントを選びやすくなります。

  • 競合調査
  • 土地・テナントの選定・調査
  • 法規制の指南
  • 敷地境界などの権利関係調査
  • 費用見積もり
  • 契約サポート
  • 行政や業者との調整

事業計画書の作成・資金調達

クリニックの資金繰りを計画した書面が事業計画書です。「どのくらいの費用がかかり、どのくらいの期間で回収できるのか」を明確にするため、開業資金や設備費、借入金、費用などを計算し、それを「収支予算書」「キャッシュフロー計算書」に落とし込みます。

  • 事業計画書の作成サポート
  • 資金調達方法の提案
  • 申請書類の作成
  • 調達先との交渉
  • リスクの特定
  • 収支計画の改善提案

広告の戦略立案・集患

広告には大きく、交通、紙媒体、ネット媒体の3種類があります。とくに近年はインターネットの情報を元にクリニックを選定する患者が増えていることもあり、ターゲットにあった広告戦略の重要性が増していると言えるでしょう。ネットに悪意のある口コミが残り続けると集患にも響くため、多くの知識・経験を持つコンサルの力を借りることはリスクヘッジにもなります。

  • 広告戦略の立案
  • WEBサイト制作・最適化
  • 「Googleビジネスプロイール」の最適化
  • オフライン広告の企画
  • 広告効果の測定
  • ブランディング支援

院内設計・工事

待合室・診察室・受付など、院内のレイアウトは患者の過ごしやすさや診察の効率性にも関わる項目です。コンサルタントは診療内容や患者の属性、導線、予算などを踏まえて設計・設備・工事のアシストをしています。

  • 内装設計のヒアリング・アドバイス
  • 建築会社の紹介
  • 法令の指南
  • 医療機器の手配、サポート
  • 工事の進行管理

スタッフ採用・研修

労働人口の減少もあり、スタッフ採用の難易度は増しています。採用には「募集」「面接」「採用」「研修」といった4つのプロセスがありますが、どこかで躓くと採用が進まないどころか、現スタッフの離職などトラブルに発展することも。コンサルは採用計画から労務面のアドバイスまでサポートします。

  • 採用計画の立案
  • 求人広告の作成・掲載
  • 面接のアドバイス・同席
  • 雇用条件の設定
  • マニュアルの作成支援
  • 労務管理のアドバイス

各種届出・申請

クリニックの開業では申請書や届出など、多くの書類を提出する機会があります。提出先が多数あるだけでなく、診療科によっても提出書類は変わってくるため、抜け漏れせずに管理するのは大変です。コンサルはこれらの書類作成や申請を代行し、医師の負担を軽減します。

  • 書類の一覧化
  • 書類の作成
  • 書類の提出代行

開業後のサポート

開業までのプロセスも大変なものですが、開業後も「思ったほど患者が増えない」「予想外の支出があった」「システムに不具合がある」など、さまざまなトラブルに直面する可能性があります。コンサルはクリニック運営のサポーターとして、課題のヒアリングや改善点の特定、提案を行います。

クリニック開業コンサルタントの種類

コンサルには「コンサルティングを生業とする会社」がある一方、本業に付帯させたサービスとしてコンサルティングを提供する会社もあります。それぞれ得意領域が違うため「どんな支援が欲しいか」の目星をあらかたつけてから選定するとよいでしょう。

専業コンサルタント

クリニック開業の全般を支援するコンサルタントです。開業まではもちろん、開業後の運営や事業継承などをサポートします。ほかのサービスが付帯していない純粋なコンサルティングなため費用は高めですが、営業の必要がないため、フラットな目線でサポートを受けることができます。

とはいえ、専業コンサルタントでも技量・得意領域に差があるため、事前の見定めは欠かせません。

コンサルティング営業

別商品・サービスの営業として開業支援を行うコンサルタントです。

  • 製薬・医薬品卸
  • 医療機器ディーラー
  • 建築・工事業者
  • 調剤薬局チェーン など

上記のコンサルは費用が無料(低額)であることが多く初期負担は少ないものの、「サービス・商品の購入」が暗黙の了解となるため、自分なりのカスタマイズをしたい方にとってはしがらみとなります。一方で「既に信頼関係がある」「サービスを継続的に利用したい」といった場合は良いパートナーとなり得るでしょう。

士業系コンサルティング

専門業務の一環として行われるコンサルティングです。

  • 会計事務所
  • 税理士事務所
  • 行政書士事務所
  • 社会保険労務士
  • FP(ファイナンシャル・プランナー)

士業系コンサルティングも顧問契約を結ぶことを条件に、無料(低額)でコンサルを受けられる場合があります。とはいえ、専門性の高さから支援領域が固定化されがちなため、広い領域での支援を依頼したい場合は不向きと言えるでしょう。

クリニック開業コンサルタントの費用と利用実態

前述したように、依頼するコンサルの種類によってかかる費用も違い、専業コンサルタントの場合は200~400万円が費用相場となります。コンサルを利用したことのある開業医を対象としたアンケートでは、約36%が有料、約63%が無料のコンサルを受けていることが分かりました。

コンサル相談料についてのヒアリング

また、無料のコンサルを受けた医師の多くは医薬品卸や調剤薬局が提供するコンサルを受けており、コンサル専門業者と同程度の利用率です。

どんなコンサルタントに相談したかのヒアリング

とくに医薬品卸や調剤薬局のコンサルサービスでは診療圏調査や事業計画の策定など、包括的な支援を行う会社も多く継続的に付き合いやすいため、利用ハードルが低いと考えられます。

クリニック開業コンサルタントを選ぶ際のポイントは?

コンサルを選ぶときは、以下のような点に注目してみましょう。

料金と支援内容

「思ったより支援の幅が狭かった」「追加料金がかかると言われた」など認識の齟齬を起こさないよう、コンサルを選ぶときは「いくらで、どこまでを」支援してもらえるのか、入念に確認することが大切です。

サービスが付帯するコンサルの多くは無料で利用できますが、内容によっては有料なこともあります。例えば広告では「戦略立案まではするが、HP制作の費用は別途」といった可能性もあるため、できるだけ支援範囲と料金を細かく確認しておくと安心です。

実績・能力と価値観

「似たような診療科の開業実績があるか」「担当者にノウハウがあるか」なども選定ポイントです。名の知られていないコンサルが怪しいのはもちろんですが、大手コンサルでも経験の浅い社員が担当となった場合は技量が低いこともあります。

またクリニックの理念は開業プロセスの根幹になりますが、汲み取ってもらえない、共感してもらえない……となると長期的なパートナーシップを築くのは難しいと言わざるを得ません。事前にある程度のビジョンを開示し、共感を得られるか、コンサルティングの方針とマッチするかを確認しましょう。

各業者の選定の自由度

業者の自由度も確認しておきましょう。既存サービスに付帯しているコンサルは契約が前提となりますが、そのサービスが多岐にわたった場合は自由度が非常に低くなります。また専門コンサルティングでも、別業者と利害関係を持ち「紹介」してくるケースがあります。

自由度が低くなると相見積もりがしにくく、高額出費になることも少なくありません。支援範囲を確認することはもちろん「自身で選んだ業者は利用できるか」など、単刀直入に聞いてみるのも一つの手です。

【成功事例と失敗事例から学ぶ】選定と依頼、ここに注意!

満足度の高い優良なコンサルがいる一方で、開業医を虎視眈々と狙う「悪徳コンサル」も存在します。開業医を対象にしたアンケート「相談したコンサルが『悪質だ』と感じた経験はありますか?」という質問では、約3割もの開業医が「悪質だと感じたことがある」と回答しました。

相談したコンサルが悪質と感じた経験についてのヒアリング

「どんどんコストが膨れ上がる方向に話を持っていかれた」「発言と実態が違った」など誠実でない対応をされた医師もいれば、実際に借金を抱えてしまった例もあります。

クリニック開業コンサルタントを選定するとき

選定のとき念頭に置いておきたいのは「コンサルも商売である」といった点です。「うまい話には裏がある」と言うように、こちらにとってメリットのある提案でも「なぜそうしてくれるのか」「コンサルにとってのメリットは」まで考えられると、詐欺的な業者を見抜きやすくなります。

また情報を集めることも大切です。業者間で相見積もりをしたり、知り合いから評判を教えて貰ったりするのもよいでしょう。

クリニック開業コンサルタントに依頼するとき

コンサルタントに任せきってしまうと、提案内容の良し悪しを判断できません。クリニックの舵を取るのは開業医であるため、コンサルの言うことを鵜呑みにしないことが自分の身を守ります。リサーチは大変ですが、その時間を作るためにも「結論を急がない」「すぐに判子を押さない」といった対応をとれると安心です。

また、途中でコンサルの対応にモヤモヤしたら「関係の見直し」を視野に入れても良いかもしれません。ときには「損切りする勇気」が試されることもあるでしょう。費用を払った後の契約解除は痛手ですが、被害を拡大させないため必要な行動となることもあります。

よくある質問Q&A

質問1.クリニックの開業にコンサル会社を利用したほうがいいですか?

コンサルを利用するかは医師の開業知識や時間、バイタリティによって変わるため一概には言えません。開業医を対象としたアンケートでは約6割が「コンサルは必要」と回答していることから、必要性を感じている医師は少なくないようです。一方で「経営を学ぶ良い機会になる」と、1人ですべてこなすことをポジティブにとらえる方もいます。

質問2.クリニック開業に自己資金はどれくらい準備が必要ですか?

開業費の10~20%が一般的な相場です。自己資金が多いほど融資を受けやすいため、1000万円以上の貯金があると安心でしょう。一方で「自己資金ナシ」で開業した方もいるため、自己資金の有無は必須条件でないと言えます。

質問3.医療法人と個人開業、どちらがいいですか?

法人にするか、個人開業にするかは「規模」や「経営の自由度に対する考え方」によって変わります。法人には税制優遇、社会的信用、福利厚生といった面でメリットがありますが、その分手続きも多く運営コストもかかるでしょう。また個人開業は反対に手続きの煩雑さが少ないものの、クリニックの資産が個人と結びついているため、事業継承の際に問題が生じることも。一長一短なため、自身のスタイルに合った方法を選択しましょう。

専任コンサルティングサービスについて