
クリニックの内覧会、開き方・参加者の呼び方は?
費用と手間はかかるものの、地域での認知度向上や患者との信頼関係構築に大きく貢献する可能性がある内覧会。実施した医師の62.5%が「期待通りの効果があった」と回答しています。その具体的な実施方法から、見落としがちな注意点まで詳しく解説します。
開業医に聞いた!内覧会は実施するべきか?
m3.comでは「内覧会しましたか?」と題した調査にて、開業医の先生方162人に内覧会の実施状況を伺いました。その結果、過半数の54.9%が内覧会を実施していないとの回答がありました。開業と内覧会はセットと思われがちですが、実際には開催しない先生も多いようです。

続いて、内覧会を実施したと回答した先生方に、一日あたりの参加者数を尋ねたところ、50人以下が47.2%と約半数を占めました。しかし、11.2%は200人を超える参加者がいたことがあるようです。多くの場合、一日あたり数十人程度が平均的な参加者数といえますが、内覧会が成功すると数百人の集患も見込めるようです。

内覧会の効果について尋ねたところ、「期待通りだった」と答えた先生が62.5%でした。
具体的な回答としては、「開業直後から患者数が安定した」(60代以上・男性・脳神経系)、「コロナ禍でも多くの方が来てくれた」(50代・男性・内科)といったポジティブな声が聞かれました。一方で、「知り合いが数人来た程度だった」(60代以上・男性・産婦人科系)と、期待に届かなかった先生も37.5%存在しました。
集患施策の1つの方法として内覧会は開催しよう
近年、内覧会を開催する割合は減少傾向にありますが、地域の患者に頼られる医療機関づくりのスタートとして、内覧会は有効な手段の一つといえるでしょう。
内覧会の目的は、正式なオープン前やオープン直後に、地域の人々にクリニックの存在や設備を知ってもらう機会を提供することです。一度でも院内に足を踏み入れて院内の雰囲気を体感してもらうことで、受診の際の敷居を低くし、親しみを持ってもらえるはずです。医療機関の広告には制限があり、宣伝が難しい面がありますが、そうした制約を受けない内覧会を実施することで地域住民に対して合法的かつ効果的にPRできます。成功すれば、開業時の集患効果やその後の安定的な運営に大きく貢献するでしょう。
また、内覧会は院長やスタッフの人柄に触れてもらえる場でもあります。患者との初めての直接的な交流の場として活用し、懇切丁寧な対応をすれば、信頼できるクリニックとしての口コミ効果も期待できるでしょう。口コミは広がるまでに時間がかかりますが、内覧会を通じて早期にその効果を実現できるかもしれません。

内覧会開催の手法と段取り
内覧会は、クリニック開院前に地域住民や関係者に施設を紹介する重要なイベントです。成功させるためには、適切な手法と段取りが欠かせません。ここでは、内覧会を効果的に開催するための準備から当日までの流れを詳しく解説します。
準備段階
まず、開院日が決まったら、その直前で地域住民が訪れやすい日程を選定します。特に日曜日や祝日など、人々が自宅で過ごすことが多い日が理想的です。連休の場合は、遠出から戻ってくる後半の日程を選ぶと、集患効果が高まるでしょう。時間帯も重要で、朝早すぎると来場者が少ない傾向があるため、10時から16時の間が適切です。
次に、院内の準備状況やスタッフの配置を確認し、余裕を持って準備を進めます。内覧会はクリニックを効果的にアピールする絶好の機会ですので、しっかりと宣伝することが重要です。例えば、外から見える場所に「開院日」と「内覧会日」を大きく掲示し、地域住民への周知期間を長くとることで、多くの方に興味を持ってもらえるでしょう。また、チラシの配布や地域のコミュニティへの情報提供など、多角的に宣伝することがポイントです。
当日
内覧会当日は、来場者に診療の雰囲気を感じてもらうため、スタッフは各自の持ち場を守ることが大切です。医師は診察室、看護師は処置室、受付スタッフは受付に配置することで、開業後のイメージを伝えられます。来場者の案内は協力者に任せるとスムーズで、院内を一巡できる順路を設け、各所でスタッフから挨拶や説明を受けられるよう工夫します。なお、多くの見学者を期待するなら、土日祝日に内覧会を開催するのが効果的です。
関係者向けは別の日に
内覧会当日は地域住民への対応が中心となるため、取引先や医療関係者とゆっくり話す時間が取れないことがあります。これらの重要な関係者には、別の日にお披露目会やレセプションを開催するとよいでしょう。その際には、クリニックに足を運んでもらい、最新の医療設備やスタッフを紹介しながら、今後の連携体制を共有するのが望ましいです。それにより、関係者とも信頼関係を深められ、スムーズな協力関係を築けるでしょう。また、関係者同士のネットワーキングの場としても機能し、情報交換やビジネスチャンスの創出にもつながるはずです。
内覧会を成功させるポイント5つ
医院が医師を採用する際には、固定観念にとらわれず、多様なニーズに対応することが求められます。優秀な医師を確保するため、以下のポイントに注意して採用活動を行いましょう。
ポイント1. 内覧会の目的を明確にする
内覧会を成功させるためには、最初に実施の目的をはっきりと定めることが不可欠です。例えば、地域での認知度を高めたい、スタッフの人柄やクリニックの雰囲気を伝えたい、健康意識を啓発したいなど、達成したいゴールを設定します。その上で、目的に合わせた準備や施策を計画すると、内覧会の内容が具体化しやすくなります。もし計画立案が難しい場合は、専門のコンサルタントに相談するのも一案です。ただし、提案内容が目的に合致しているか、費用対効果が見合っているかを慎重に判断しましょう。
ポイント2. 来場しやすい雰囲気を作る
内覧会当日は、協力者やスタッフの服装や対応にも気を配ることが大切です。スーツ姿で入口に立つと、見学者が入りにくい印象を与えてしまうため、リラックスした服装を心がけます。例えば、クリニックのロゴが入ったポロシャツや明るい色合いの制服など、親しみやすい雰囲気を演出します。また、笑顔での挨拶や丁寧な言葉遣いなど、接客マナーを徹底し、来場者が気軽に質問や相談をしやすい環境を整えましょう。温かみのある対応が、クリニックの印象を高める上で重要です。
ポイント3. スタッフへの周知を徹底する
内覧会の成功には、スタッフ全員の協力が欠かせません。事前にスタッフミーティングを行い、内覧会の目的や当日の役割分担、対応方法を共有します。患者からお祝いの品をいただいた場合は、受付で預からずに院長が直接受け取るようにするなど、細かなルールを決めておくと当日の対応がスムーズになります。また、終了時間が近づいても、見学者がいる間は片付けを始めないなど、来場者を最優先する姿勢を全スタッフで共有するとよいでしょう。見学者への配慮が、満足度を高め、良い口コミにつながります。
ポイント4. 見学者との交流を積極的に図る
内覧会では、見学者とのコミュニケーションを積極的に図ることが重要です。例えば、健康に関するクイズやミニセミナーを開催すると、家族連れの来場者を増やせるでしょう。これにより、クリニックの専門性をアピールしつつ、楽しい体験を提供できます。また、院長やスタッフが知人とばかり話すのではなく、積極的に見学者に声をかけ、質問や相談に応じるよう心がけましょう。ただし、病気の詳しい相談などで長時間話し込むのは避け、必要に応じて開院後の来院を促すなどの工夫も必要です。
ポイント5. 見学者のニーズを把握する
親しみやすいクリニックを探している方、単に新しくできた施設を見学したい方など、内覧会に訪れる見学者の目的は様々ですが、そのニーズを把握しておくことが重要です。スタッフ全員が積極的にコミュニケーションを取り、見学者の声に耳を傾けることで、サービス改善のヒントを得られるでしょう。アンケートを実施して感想や要望を集めるのも効果的です。見学者のニーズを理解し、それに応える姿勢を示すことで、クリニックの信頼度を高められるでしょう。
- m3.com『やらない派が増加?「知り合いしかこない…」内覧会の実態』(2023年4月)