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クリニックの集患に効く、広告の打ち方とは

クリニックが持続的に患者数を増やし続けるためには、多面的な広告展開が欠かせません。特にクリニック開業直後には、即効性のある広告を出稿し、短期間のうちに患者を集患する必要があります。一方、単発的な集患対策では一時的な効果しか得られず、長期的な成長を支えることは難しいとも言えます。ホームページの定期的な更新や、地域密着型の看板広告など、持続性のある広告媒体も活用し、時間とともに認知度を高め、新規患者の来院を促進していくことが重要です。

広告の種類・使い分け・ポイント

広告には即効性があるものと持続性があるものがあり、それぞれの特性を理解して適切に使い分けることが大切です。

即効性がある広告

折込チラシやポスティングといった即効性がある広告は、実施するとすぐに反応が得られる一方、効果の持続期間は概ね1〜3か月と比較的短いのが特徴です。

新聞等の折込チラシ

内覧会の2〜3日前に新聞に折り込むチラシは、即効性の高い広告手段です。各新聞社の販売店ごとに配達エリアが決まっていますが、診療圏内に柔軟に配布でき、費用はデザイン費や印刷代、折り込み代によって変動します。予算が許すならターゲットとなる患者層を踏まえたうえで広範囲または複数の新聞社での折り込みを検討するのも一つです。開院前に開院のお知らせをする広告を1回のみ出稿する医院も珍しくありません。

ポスティング

ポスティングはリーフレットを直接、診療圏内のご家庭のポストに投函する方法です。開封率が高く、直接手元に届けられるため広告効果が高いとされています。

ポスティングはポスティング業者に依頼して、業者に配布してもらうのが一般的です。とはいえ、信頼できる業者を選ばないと、禁止区域への投函によるクレームが発生することがある点には注意が必要。効果は高いものの人件費がかかるため、費用は新聞折込より割高になる傾向があります。

持続性がある広告

ホームページや駅看板などの広告は、即効性は見込めないものの、効果が長期間持続するというメリットがあります。

ホームページ

ホームページは、クリニックの情報を24時間いつでも提供できる、いわばオンライン上の看板です。診療内容や医師のプロフィール、アクセス情報などを詳しく掲載することで、患者の来院意欲を高められます。また、ブログやお知らせを定期的に更新することで、最新の情報や医療に対する姿勢を伝えることも可能です。

検索エンジンでの上位表示を目指すSEO対策や、必要に応じてネット広告を出稿することなどが重要になりますが、成功すれば遠方の患者の集患も可能です。

駅看板

駅看板は、駅の乗降者数に応じて広告料が変わるのが特徴です。看板を設置する場所は、下り階段の正面や電車待ちのホームから見える目立つ箇所が効果的です。心療内科や泌尿器科、不妊治療の婦人科など、診療圏が広い科目の場合は、最寄り駅で良い設置場所が確保できなければ、1〜2駅離れた駅での広告も検討するとよいでしょう。

野立て看板

野立て看板は、いわゆる「ロードサイン」で、信号待ちなど車が停車する場所に設置する広告です。野立て看板の出稿費用は盤面制作費と地代で構成されており、契約形態は盤面制作費と地代を個別に支払うものや、全てを含めたレンタル形式など様々です。

希望の場所に枠がない場合は地主との交渉が必要となり、広告開始まで時間がかかる傾向にあります。

電柱広告

自院への道案内として有効な電柱広告は、公道上に設置できる唯一の看板です。歩行者の目線に近い巻き広告と、電柱上部に突き出した掛け広告の2種類があります。歩行者が多い道路では巻き広告、交通量が多い道路では掛け広告が視認性に優れます。一本だけでなく連続して設置することで、誘導案内や周知効果も高まるでしょう。

広告作成時には医療法広告規制に注意が必要

クリニックのホームページやチラシを制作する際、医療法広告規制に注意を払う必要があります。医療法広告規制では、広告として扱われる媒体に掲載できる内容や禁止事項が細かく定められています。違反を避けるために、表示可能な内容と禁止事項をしっかり確認しましょう。

以下はあくまでもその概要ですが、広告制作時には行政が公開する情報を参照し、当該規制に違反しないようにしましょう。

医療法で広告可能な事項

  • 医師または歯科医師である旨
  • 診療科名
  • 名称、電話番号、所在地、管理者の氏名
  • 診療日や診療時間、予約診療の有無
  • 法令に基づき指定を受けた医療機関の情報(例:特定機能病院)
  • 施設・設備に関する事項、従業者の人員配置
  • 医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴、専門性に関する資格名
  • 医療相談や医療安全、個人情報の適正な取り扱いに関する措置
  • 他の医療機関との連携に関する情報
  • ホームページアドレスや医療情報の提供内容
  • 提供される医療の内容に関する事項
  • 手術件数や平均入院日数など、適切な選択に資する情報
  • その他、上記に準ずるもの

広告での禁止事項

  • 広告可能とされていない事項の掲載
  • 虚偽の広告(根拠が不明確なデータや「絶対安全な手術」など)
  • 比較広告(「日本一」「No.1」「最高」などの表現)
  • 誇大な広告(事実を不当に誇張したり、誤認させる表現)
  • 客観的事実を証明できない内容(主観的な体験談など)
  • 患者の主観に基づく治療効果の体験談
  • 誤認を招く治療前後の写真や画像
  • 公序良俗に反する内容
  • 品位を損ねる内容や他の法令で禁止される内容

広告とみなされる媒体の具体例

  • チラシ、パンフレット、ダイレクトメール、ファクシミリ
  • ポスター、看板、ネオンサイン、アドバルーン
  • 新聞、雑誌、放送、映写、電光掲示板
  • インターネット上の広告やEメール
  • 説明会や相談会で使用するスライド、ビデオ、口頭での演述[1]

これらの媒体を使用する際は、医療広告ガイドラインに従って適切な情報を提供する必要があります。

広告やロゴの制作は、医療分野に精通した制作会社へ依頼しよう

クリニックのチラシやロゴマークなどの制作物は、医療業界に詳しい専門の制作会社に依頼しましょう。医療法広告規制に違反しないためには、医療の規制に精通した人物が制作することが重要です。

また、医療特有のコンセプトやメッセージを的確に伝えるためには、業界の知識と経験を持つデザイナーが適しています。特にロゴマークは、クリニックのアイデンティティを象徴するものであり、患者に親しみを持ってもらいやすく、一生使えるデザインを目指しましょう。

診察券などの印刷物もまとめて発注するのもおすすめ

販促物の制作と同時に、診察券や薬袋、問診票などの印刷物も一括して発注すると効率的です。これらのアイテムはクリニック運営に欠かせないもので、デザインを統一することでブランドイメージの向上にもつながります。

印刷物 備考
診察券 耐久性の高いプラスチックカードタイプがおすすめ。リライトカードなら次回来院日をその場で更新可能。
薬袋 プリンターで薬品名や服用方法を印刷できるタイプが便利。
注意事項記載票・
問診票
注意事項記載票は、治療後の注意事項や薬の飲み方を記載する票。自前のプリンターで出力することが多いが、印刷専門店に大量発注するとコスト削減が可能。
はがき 定期検診のお知らせやキャンペーン情報の送付に活用できる。
封筒 封筒は紹介状や案内を郵送する際に必要。角2サイズと長3サイズを用意すると便利。
名刺 医師の専門分野や略歴を記載したオリジナルデザインにすれば信頼感を高められる。

これらの印刷物をまとめて発注することで、時間とコストの節約が可能です。一貫したデザインは患者さんに安心感を与え、クリニックのブランドイメージ強化にも寄与します。

集患過多によるキャパシティオーバーを防ぐためのポイント

多面的に広告を出稿することで患者の来院数が増加しますが、急増してしまうとキャパシティオーバーにより診療が回らなくなるリスクもあります。集患過多によるキャパシティオーバーを防ぐためには、効率的な診療体制の構築がポイントです。予約システムを活用して来院時間を分散させたり、問診をデジタル化して診察時間を短縮したりするなど、DXツールを導入して診療の効率化を図りましょう。

また、スタッフの教育や訓練を徹底し、増加する患者にも質の高いサービスを提供できる体制を整えることも重要です。開業初期から効率的で品質の高い運営を目指すことで、待ち時間の短縮やサービス品質の維持が可能となり、クリニックの評判は高まっていくでしょう。クリニックの評判が高まることで、長期的な集患も期待できます。

クリニックの広告施策の実施事例(内科・循環器内科)

都内住宅地に2019年に開業したB内科・循環器内科クリニックにおいて、地域特性に合わせた広告戦略の最適化などを行い、患者数増加を実現した事例をご紹介します。

同クリニックでは、開業時の広告施策として、新聞広告、電柱広告、バスステッカー広告を実施しましたが、電柱広告は患者が通らない場所にも掲載され、バスステッカー広告も十分な効果が得られていませんでした。また、開業2ヶ月後に新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、開業半年ほどは患者数が伸び悩む時期が続きました。

広告施策を見直し、電柱広告はクリニック周辺のみに絞り込みを実施。バス広告も運転席後部のポスター広告に変更し、最寄りバス停での車内放送も開始しました。さらに、近隣の大学病院の待合室の連携クリニック地図への掲載も実施。また、周辺のクリニックに先駆けて新型コロナウイルスの検査を導入し、コロナ禍での医療ニーズに対応しました。

開業初月(9診療日)の60名程度から、4年後には1日30~40名、月間800~900名の患者数まで成長しました。特に近隣大学病院の待合室での掲載と、新型コロナウイルス検査の早期導入が効果的だったようです。また、電柱広告の最適化により、道案内としての機能も果たしています。

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