
クリニックのホームページ開設、進め方と活用事例
クリニックのホームページは、患者への認知向上や予約数の増加、効果的な集患に欠かせないツールとなっています。本記事では、クリニックのホームページ開設における具体的なメリットや、制作時の注意点、失敗しないための対策、実際の活用事例までを詳しく解説します。
クリニックでホームページを作るメリットは
新規開業のクリニックがホームページを持つことには多くのメリットがあります。以下でその理由を詳しく解説します。
メリット1.クリニックを認知してもらえる
ホームページを持つことで、院長の顔やクリニック名を患者に覚えてもらいやすくなります。ホームページ上では、院長の経歴やプロフィール、技術力を示す実績などを写真やイラスト付きで掲載できますが、そうして視覚的な情報と合わせてクリニックの情報を提供することで、「どんな人が診療を行っているのか」を印象付けることが可能です。また、専門領域や施術内容など患者がクリニックを選ぶ際の判断材料となる情報が詳しく掲載されてあることで、患者の来院意欲を高められます。
メリット2.予約数の増加につながる
ホームページを開設していれば、患者はホームページのお問い合わせフォームから予約を行えます。ホームページでは電話のように受け付け時間が定まっていないため、患者は好きなタイミングで予約でき、手軽にクリニックを受診しやすくなります。また、公式LINEでの予約受付など、患者が予約しやすいサービスを提供することで、患者の利便性をより高められます。こうした理由により、予約数の増加が期待できるでしょう。
加えて、メールなどで受け付けた予約は情報がテキストとして残るため、クリニック側が正確に予約を管理しやすくなるメリットもあります。
メリット3.SEO対策や広告との掛け合わせで、集患力が上がる
ホームページを持つことで、SEO対策や広告を掛け合わせた多面的な集患が可能になります。SEO対策とは、検索エンジンで上位に表示されるための施策のことです。狙ったキーワードで上位に表示されれば、クリニックを探しているユーザーにホームページを見てもらいやすくなり、集患につながります。
また、即効性を求めるのであれば、インターネット上に広告を掲載する方法もあります。ホームページの存在を知らせる広告を出稿することで、ホームページを訪れるユーザーを増やすことができ、さらに集患効果を高められるでしょう。
ホームページ制作時のポイント
クリニックのホームページに掲載する医療情報は、正確で信頼性の高いものであることが求められます。そのため、所在地、診療時間、予約方法などの基本情報はもちろん、クリニックの強みやドクターの経歴、対応可能な症状・治療方針などを分かりやすく掲載することが大切です。
また、患者が目的の情報を迷わず確認できるよう、見やすく使いやすいホームページを目指しましょう。加えて、公開後もクリニックの運営状況に合わせて情報を更新したり、アクセス状況に応じてサイトをブラシュアップしたりしていくことも大切です。
ホームページ制作は、制作会社への依頼が一般的
クリニックのホームページに掲載する医療情報は、正確で信頼性の高いものであることが求められます。そのため、所在地、診療時間、予約方法などの基本情報はもちろん、クリニックの強みやドクターの経歴、対応可能な症状・治療方針などを分かりやすく掲載することが大切です。
制作会社にホームページ制作の依頼をする際によくある失敗例
制作会社に依頼する際には注意すべき点もあります。以下では、よくある失敗例とその対策を解説します。
よくある失敗例1:制作会社の対応が遅い
「ホームページを公開するまでは親切に対応してくれていたが、公開後のサポートが悪く、修正依頼の返答に時間がかかる」という声をよく耳にします。制作会社に修正の連絡を入れてから反映されるまでの時間が長すぎると、ホームページ運営のスピード感が落ちてしまいます。
対策は、あらかじめ制作会社の担当者のスピード感を確認することです。事前に「簡単な文字修正を依頼した場合、通常どれくらいで対応してもらえますか?」などと質問しておくとよいでしょう。スピーディーな対応が可能な会社であれば、「当日中か翌営業日には対応します」といった返答が期待できます。
よくある失敗例2:制作したものの集患につながらない
「きれいなホームページだが、ホームページ経由の患者が少ない」と悩む先生もいます。クリニックのホームページは、検索エンジンからの流入が主なため、SEO対策が重要です。SEO対策がなされていない場合、せっかく作ったホームページに患者が訪れない、という本末転倒な結果になりかねません。
そのため、制作会社を選ぶ際には、SEO対策に関する考え方や過去の実績を確認しましょう。どのキーワードで、どのくらいの期間で順位が上がったのかを聞くことで、SEOに精通した会社かどうかを判断できます。
また、アクセス解析の報告の頻度や内容も確認し、具体的なデータを提供してもらえるかをチェックすることが重要です。ホームページはアクセス数やユーザーの行動をデータで確認できる媒体ですので、具体的な数字を提示してもらい、可能であればその数値に基づきPDCAを回してもらうことで、効果を実感しやすくなります。
よくある失敗例3:部分的な内製によりホームページの品質が中途半端になる
「開業前の忙しい時期に、ホームページの原稿をゼロから自分で作成しなければならず、満足のいくものにならなかった」という先生もいます。
この問題の対策は、作業負担の範囲を事前に確認することです。制作会社を選ぶ際に、「原稿はどの程度作成してもらえるのか」「自分の作業負担はどれくらいか」を確認することが大切です。制作会社は他のクリニックのホームページの制作も行っているため、全てを任せるとオリジナリティに欠ける可能性もあります。独自性を出すため、院長自身が執筆する部分も予め決めておくと良いでしょう。
よくある失敗例4:医療広告ガイドラインへの注意不足
「制作会社に任せてホームページを作成したところ、掲載内容が医療広告ガイドラインに抵触してしまい、修正や削除を余儀なくされた」というケースもあるようです。
医院経営のホームページの場合特に気を付けなければならないのが「医療広告ガイドライン」です。例えば、治療の効果を過度に強調する表現や、ビフォーアフターの写真を無断で掲載することはガイドライン違反となります。「絶対に治る」「完全無痛」などの断定的な表現や、事実と異なる内容を記載すると、行政から指導を受ける可能性があります。これらの問題が発生すると、クリニックの信頼性が損なわれるだけでなく、法的なリスクも生じかねません。これらのことから、医療広告ガイドラインを熟知した制作会社に依頼し、内容を慎重に確認することが重要になってきます。
ホームページ制作の流れ
ホームページ制作の一般的な流れは以下の通りです。
- 制作会社の選定
- 打ち合わせと役割分担の確認
- デザインの作成
- デザインの確認と修正
- コーディング作業
- 最終確認
- 公開
まず、複数の制作会社から相見積もりを取り、実際に話を聞いて最適な制作会社を選びます。その後、制作会社との打ち合わせを通じて、コンテンツの文章作成や写真の用意など、自院が担当する範囲を明確にします。そして、制作会社に理想のホームページ像を伝え、デザインの作成に着手してもらいます。
デザイン案が提示されたら、内容を確認し、修正指示を出します。デザインの方向性が定まったら、ホームページのコーディング作業に進みます。完成したホームページを細部まで確認し、誤字・脱字やリンクの不具合などをチェックします。最後に、公開の準備が整ったらいよいよホームページの公開です。
ホームページ制作の着手から公開までには、最低でも3か月は要するでしょう。そのため、早い段階で制作会社を選定し、計画的に準備を進めることが重要です。
ホームページ制作費用の目安
ホームページの制作費用は、制作会社の設定価格や依頼する範囲によって大きく異なり、30万円程度から100万円以上まで幅があります。
費用を抑えたい場合は、デザインのみを制作会社に依頼し、更新作業や一部のコンテンツ作成を自院で行う方法もあります。特に、WordPressなどのCMS(コンテンツ管理システム)を利用すれば、自院で比較的簡単に更新作業が可能です。
制作会社にどこまで依頼するかをよく検討し、必要な部分だけをプロに任せることで、コストを抑えながら効果的なホームページを作成できます。ただし、制作費用だけでなく、公開後の集患効果や自院の運用体制も考慮に入れて、総合的に判断することが大切です。
クリニックでのホームページの活用事例
クリニックにおけるホームページの活用例・効果をよりイメージできるよう、ホームページの活用事例を2つご紹介します。
ホームページの工夫で、子ども自身が見つけて来院数が増加した事例(小児科)
関東圏の都市部にあるA小児科クリニックは、商業地域に位置し、近隣に複数の小児科があり、また駐車スペースに制約があるという立地上の課題がありました。さらに、クリニックが得意とする小児特有の慢性疾患は「治療できる病気」という認識が広まっておらず、受診のタイミングが遅れがちでした。また、基幹病院への患者集中により、診療体制の逼迫や待ち時間の長期化という地域医療の課題も存在していました。
この課題に対し、クリニックでは専門性を活かした差別化戦略を展開しました。具体的には、ホームページに主要な小児慢性疾患について世代別の詳細な説明を掲載し、特にお子様向けのメッセージを充実させました。また、クリニックでできる検査・治療の範囲を明確にし、必要な際は高次医療機関への丁寧な紹介を徹底。さらに、学会や勉強会への積極的な参加により、最新の医療知識の習得に努めました。
こうした取り組みにより、お子様自身が症状を検索して来院するケースが増加しました。また、専門性の向上と丁寧な医療連携により、基幹病院からの逆紹介も受けられるようになり、小児慢性疾患の安定期患者の継続診療が可能になっています。これにより、患者満足度の向上と地域医療における適切な機能分担の実現にもつながっています。
ホームページリニューアルとリスティング広告の掛け合わせで来院数が増加した事例(泌尿器科)
首都圏の政令指定都市にある泌尿器科専門クリニックは、2年前に開業しましたが、開業当初、ホームページは構成や予算配分を十分に検討せず、制作会社に依頼したため、専門性の高い特殊治療の集患に効果的なコンテンツになっていませんでした。また、一般泌尿器科の診療も行っているという情報が伝わりにくい内容となっていました。さらに、診療の特性上、数回の受診で終了するケースが多く、常に新規患者の確保が必要な状況でした。
これらの課題に対し、開業から半年後にホームページを全面的に作り直しました。同じ医療モール内にある提携医療機関の戦略的なホームページ制作を参考にし、集患効果の高いWebサイトの制作に強い会社に依頼しました。また、リスティング広告を開始し、オンラインでの集患対策を強化しました。
その結果、ホームページやリスティング広告などによる集患効果が現れ、患者数が増加しました。開業初月の延べ患者数は100名程度でしたが、8ヶ月後には延べ400名を超えるまでに成長しました。また、自費診療が約6割、保険診療が約4割という、当初の予想を上回る専門診療の割合を達成できました。