
これからの医院開業は「厳しい」?医院同士の競争状況
厚生労働省の調査によると、クリニックの数は20年にわたって増加傾向を示しており、2022年時点で約10万5,000施設。新規開業を目指す医師が増えたことや、高齢化に伴う在宅医療のニーズが高まったことが要因と考えられてます。内訳として地域による温度差があるとはいえ、都市部を中心にクリニック同士の競争も激化しているとされ、「これからの開業は厳しい」といった声を聞く方も多いのではないでしょうか。今回は、その実情について考察します。
クリニック新規開設数は8000弱…総数は増加傾向に
厚生労働省による2022年医療施設調査の結果によると、現在一般診療所は10万5182施設。開設・廃止等を差し引きによって前年より890施設増加しており、新規開設数は年間7847施設にも上ります。ただここで注意が必要なのは、診療所の開業・閉業には地域差が大きいことです。
例えば、東京都では人口10万人当たりの一般診療所の数は104.6施設なのに対し、埼玉県や千葉県、茨城県、沖縄県、北海道では60施設台。人口当たりでみても大きな差が発生しているのが実情です(2022年『医療施設調査・病院報告』)。診療所の密度が高くなってくると集患対策にも工夫が必要になり、運営の在り方そのものが大きく変わってくるため、自身が開業する立地や診療領域がどのような競争状態にあるのか把握しておくことはとても重要。
昔なら半年から1年で、開業準備にかかった投資資金を回収できていたところ、今だと2、3年かかるという事態もあるほか、最近ではコロナ禍を経て患者の受診動態にも変化があり、一昔前とと同じような考えで開業するのは危険な状況だと言えます。

「開業のスタイルも多様化」いろんな開業スタイルを知ろう
都市部を中心に競争が激化している…とはいえ、当然ながらなす術がないわけではありませんし、むしろこれまでとは違う開業スタイルで成功を収めているケースは数多く存在します。繰り返しにもなりますが、「都市部」では競争が激化している反面、地方ではむしろ、現役開業医の高齢化に伴い、クリニックの廃業が進んでおり、第三者継承という形でクリニックを譲り受けるケースもまったくもって珍しくありません。また地方で新規開業する場合、現地の自治体から助成を受けられる地域もありますし、場所と制度を理解することで活路を見出している先生も多くいらっしゃいます。
診療領域においても、ほかのクリニックが手掛けないような専門外来に特化したり、夜間帯や土日の診療にも注力したり、DXを通じて患者の診療体験を効率化させるするなど、他院との差別化を図りながらクリエイティブに自院を盛り上げていっている先生も多く、そうした事例を学んでみるのも良いかもしれません。
クリニックの運営は情報戦。開業前にどこまで自身の戦略を磨きこめるかが、その後の運営に大きな影響をもたらします。
- 厚生労働省『医療施設調査』(2022年)
- m3.com『盛り上がる医師限定コミュニティ、裏にある「医師達の孤独」』(2024年10月)