
クリニックに必要な医療機器・備品は?各種スペース別に解説
クリニックを開業する際には、診療に必要な医療機器や備品を適切に準備することが不可欠です。これらの選定や手配は、診療の質や患者の満足度に直結するため、計画的に進めることが求められます。以下では、開業時に用意すべき主な医療機器や備品について解説します。
医療機器・医療器具
一般的に「医療機器」と聞くと、レントゲンやMRI、CTなどの大型機器を想像する方が多いかもしれません。しかし、医療機器には大小さまざまなものが含まれます。小型の器具としては、体温計やメス、ピンセットなどがあり、中型の機器には人工呼吸器や血圧計、心電計などがあります。さらに、ペースメーカーや人工透析器、補聴器なども法律上は医療機器に分類されます。
また、「医療機器規制国際整合化会合」によって、医療機器は人体へのリスクが小さい順にクラスIからクラスIVまでの4つに分類されています。薬事法上では、クラスIが一般医療機器、クラスIIが管理医療機器、クラスIIIおよびクラスIVが高度管理医療機器と定義されています。
診療科目や提供する医療によって必須の医療機器・医療器具は変わってきますが、開業時の注意点として、中型・大型の機器は納入に時間がかかる傾向があるため、クリニック開業計画の初期段階で必要な機器をリストアップし、早めに手配を進めることが重要といえます。
什器・電化製品
患者が快適に過ごせる環境を整えるためには、待合室やトイレなどの設備にも心を配る必要があります。ソファやマガジンラックなどの什器、テレビや空気清浄機といった電化製品を設置することで、居心地の良い空間を提供できます。
また、医師やスタッフが円滑に業務を行うための机や椅子、受付で使用する会計機器やパソコンも欠かせません。これらの備品はホームセンターや家電量販も店で購入できますが、医療機関向けの製品を取り扱う専門業者から選ぶことで、耐久性や機能性に優れたアイテムを手に入れられるケースも。ご予算やクリニックのコンセプトとも相談しながら、納得のいくものを選びたいところです。
事務用品や医療衛生材料、ユニフォームなど
クリニックの運営には、文房具やコピー用紙、クリアファイルといった事務用品も必要です。さらに、紙カルテや診察券など、医療現場特有のアイテムも含まれます。
診療で使用する包帯やガーゼなどの医療衛生材料や、医師・スタッフが着用する白衣やユニフォームも準備が必要です。これらの消耗品は使用頻度が高く、使い捨てのものも多いため、常に十分な在庫を確保しておくことが大切です。適切な品質のものを選ぶことで、診療の効率化や衛生管理の徹底につながり、患者に安心感を与えることができるでしょう。
クリニック開業で必要な備品【スペース別】
クリニックは部屋によって目的が異なるため、必要な備品も変わってきます。そこで、玄関・待合室・診察室などスペースごとに必要な備品とポイントをご紹介します。
玄関
玄関はクリニックの印象を左右する「顔」とも言える場所です。玄関マットを設置することで、靴に付着した泥やホコリの持ち込みを防ぎ、清潔な院内環境を保てますし、観葉植物や絵画を飾れば、患者に温かみのある雰囲気を感じてもらえるでしょう。
また、手指消毒スタンドや傘立てを用意することで、利便性を高められます。土足禁止の場合は、下駄箱やスリッパ、スリッパラック、靴ベラなども必要になります。これらの備品を配置し、患者に好印象を与える玄関づくりを心がけましょう。
受付
受付は患者とスタッフが最初に接する場所であり、双方のニーズを考慮した備品が求められます。診察券入れや手荷物台、杖ストッパー、老眼鏡などを用意すれば、患者の負担を軽減できます。スタッフ用にはレジスターやパソコン、プリンター、シュレッダーなどの事務機器が欠かせません。飛沫防止パネルや非接触式体温計を設置することで、感染症対策も徹底できます。最近では、自動精算機やセルフレジを導入し、業務効率化と患者の利便性向上を図るクリニックも増えています。
待合室
待合室は患者が快適に過ごせる空間であることが重要です。ソファやテレビ、雑誌や新聞を備えることで、待ち時間を有意義に過ごしていただけます。空気清浄機や加湿器を設置し、室内環境を整えることも大切です。小児科や子どもが来院しやすい診療科では、キッズスペースを設け、安全なおもちゃやクッションマットを用意しましょう。子どもが退屈せずに過ごせる環境をつくることで、付き添いの方も安心できます。また、観葉植物や絵画を配置し、リラックスできる雰囲気を演出することも効果的です。
診察室
診察室は診療の中心となる場所であり、必要な医療機器や備品を揃えることが不可欠です。診療科目によって必須品は変わってきますが、診察ベッドや診察机、医師用と患者用の椅子などの基本的な家具はもちろん、聴診器や診察用ライト、注射台、消毒器具といった医療器具も必要ですし、血圧計や体重計、身長計、パルスオキシメーターなどの測定機器も欠かせないケースは多いでしょう。
また、電子カルテやパソコンを導入し、業務効率化を図ることも重要です。診察室は医師が長時間過ごす場所でもあるため、医師にとっても快適な環境づくりになるよう配慮しましょう。
トイレ
トイレは患者の満足度に直結するスペースです。清潔かつ快適な空間を提供するために、トイレットペーパーやハンドソープ、ペーパータオルやハンドドライヤー、ゴミ箱などの基本的な備品を揃えましょう。消臭剤を設置し、常に良い香りを保つことも大切です。産婦人科や婦人科では、生理用品やサニタリーボックスを用意し、女性の患者への配慮をすることも。小児科では、おむつの交換台を設置することで、子育て中の方に安心感を与えられます。
こうした要領で備品を整えることで、患者が快適に利用できるようになり、満足度の向上につながります。
スタッフルーム・バックヤード
スタッフルームは医師やスタッフが出退勤時に着替えたり、休憩時間を過ごしたりする場所です。ロッカーや名札ラック、白衣やユニフォームを用意し、快適な環境を整えましょう。冷蔵庫や電子レンジ、食器類などを備えることで、リフレッシュしやすい空間になります。
一方、バックヤードは備品の保管や業務の準備を行うスペースです。消耗品のストックや予備の白衣、掃除用具や防災備蓄品などを管理します。スタッフルーム・バークヤードともに、治療内容やスタッフの要望に応じて必要な備品を選定し、業務の円滑化と安全性の向上を目指しましょう。