
医療機器、新品or中古の判断基準は?
開業時の医療機器への初期投資は、大きな負担となりがちです。そのため、限られた予算内でどの機器に投資すべきかを判断する視点が重要といえますし、「新品と中古どちらで揃えるか」も大きな判断ポイントです。そこで今回は、医療機器を新品で揃えるか中古で揃えるかを考える時の基準についてご紹介します。
自院の主力機器か、補助的機器か?
医療機器を新品と中古、どちらで揃えるべきかを考えるうえでまず大事なのは、その危機が「主力的機器」なのか、「補助的機器」なのかという点です。
例えば消化器内科のクリニックでは、消化器内視鏡など開業後の目玉となる機能を持つ機器に最新型や高機能のものを導入することで、他院との差別化が図れます。これにより、近隣の医療機関から紹介患者を集めることも可能です。
一方、家庭医的な機能を目指すクリニックで、例えば院長が外科出身だからという理由で備えておきたい小外科手術器具など、戦略的重要性が低い機器には中古で揃え、できるだけ費用を抑える判断も有効といえます。
稼げる機器か、稼げない機器か?
CTやMRIのように、使用するたびに診療報酬が発生し、機種によって点数に差がある機器も存在します。これらの機器への投資は収入に直結するため、投資額をどの程度で回収できるかを計算しやすいともいえるでしょう。
仮にリースでCTを導入する場合、月額リース料と保守管理料を1例あたりの撮影料と画像診断料で割ることで、赤字にならない月間撮影回数を算出できます。
例えば、月額リース料が1,000,000円、月額保守管理料が200,000円、1件あたりの撮影料と画像診断料の合計が20,000円とします。その場合、まず月額リース料と月額保守管理料を合計すると1,200,000円に。この金額が毎月必要な固定費用となります。
次に、赤字を出さないために必要な月間撮影件数を求めます。月間総コスト1,200,000円を1件あたりの収入20,000円で割ると、必要な撮影件数は60件となります。つまり、月に60件以上のCT撮影を行うことで、リース料と保守管理料をカバーできます。
週1日休院で、1ヶ月の開院日数を26日とすると、1日あたり約2,3件の撮影が必要になります。利益を出すためには、60件以上の撮影が必要となります。また、その他の経費(人件費や消耗品費など)も考慮する場合は、その分もコストに加えて計算する必要があります。この計算結果を参考に、CT装置の導入を検討することで、選んだ装置が経済的に見合うかを判断できます。
一方、電子カルテや画像サーバーなど、診断精度や運営効率に直結するものの、直接収益を生まない機器については、費用をどこまでかけるかの判断が難しいでしょう。
医療機器類は最低限に絞って開業するのも一つの手
地域包括ケアに向けた医療制度の改定が進む中、外来での総合診療や家庭医的診療機能に加え、訪問診療を想定したクリニックを開業するケースが増えています。その場合、高額な機器で「重武装」するよりも、機器類を最低限に絞り、その分フットワークを良くする選択もあり得ます。
自院では主力でない医療機器については、中古機器で信頼できるものを活用し、初期費用の低減を図ることも可能です。また、必要な検査は近隣の連携先を紹介して受けてもらうことで、自院にはレントゲン装置すら置かないという選択肢もよいでしょう。
「中古医療機器」の基礎知識
中古医療機器の使用年数はどの程度か?
中古医療機器の年数について気になる方も多いでしょう。市場に出回っている中古医療機器の多くは、使用開始から5~6年経過したものが主流です。新品購入時に5年のリース契約を結ぶ医療施設が多く、その契約満了後に機器が市場に出回るためです。
具体的にどれくらい節約できるか?
一般的に、医療機器は発売から5年経過すると新品価格の半額程度にまで値下がりすると言われています。例えば、購入時に1,000万円だった機器が5年後には500万円で手に入る可能性があります。この価格差を得に感じるか、「5年使用しているから妥当」と考えるかは医師によって異なるでしょう。資金面の事情から中古を選択する場合、この節約効果は大きなメリットとなります。
中古でも問題が起きにくい機器、中古だと問題が起きやすい機器例
どの機器を中古にすべきかは、「中古でも問題が起きにくいか」という視点で判断すると良いでしょう。
中古でも問題が起きにくい機器
- 画像診断系機器:超音波診断装置、内視鏡システム、眼科機器などは長年使用しても劣化が少なく、新品と比較しても品質に大きな差がない
- 耐久性の高い機器:婦人科診察台や手術台などは耐久性に優れており、5年程度の使用では性能に問題が生じにくい
- 高額な機器:回診用X線撮影装置など新品価格が高額な機器は、中古を選ぶことで大幅なコスト削減が可能
中古を利用する場合注意が必要な機器
- 血液に触れる機器:内部を清潔に保つのが難しく、故障しやすい傾向も
- 手術で使用する機器:人命に直接関わるため、万が一のリスクを最小限に抑える必要
- 整形外科のローラーベッド:使用頻度が高いと見た目の劣化が目立つ場合があり、患者の印象に注意
中古機器の選択は、機器の種類や用途によって適切に判断することが重要です。品質や安全性を確保しつつ、コストを抑えるために、中古と新品を効果的に組み合わせることを検討してみてはいかがでしょうか。
医療法、医薬品医療機器法に要注意
クリニックの管理者には、医療法(およびその施行規則)に基づき、医療安全に関するさまざまな義務が課せられています。特に医療機器の安全管理においては、以下の責務を果たす必要があります。
- 医療機器の安全使用を担当する責任者の配置
- 従業員に対する医療機器の安全使用に関する研修の実施
- 医療機器の保守点検計画の策定と適切な保守点検の実施
- 安全な医療機器使用のための情報収集と改善策の実施
小規模なクリニックであっても、大規模病院と同様の法律上の義務があります。万が一の管理責任を問われないよう、医療機器メーカーに研修ツールの提供や講師派遣を依頼し、責務を確実に果たすことが重要です。
また、医薬品医療機器等法(旧薬事法)では、機器故障による健康被害発生時の責任を明確化するため、医療機器の移動や設置に製造者(メーカー)の承認が必要な場合があります。さらに、医療機器の販売や保守管理には、同法に基づく免許が求められます。中古機器を取り扱うディーラーと取引する際は、免許を有しているかを確認してから進めることが大切です。無免許の業者を経由した機器は、その後のメーカー補償が受けられない可能性があるため、注意が必要です。