
クリニック、内装材料の選び方~コスパ良く快適空間を作るには
「クリニックの内装材料選びに悩んでいる」「患者さんに快適な空間を提供するにはどうすればよいか」という声をよく耳にします。実際に、内装材料は、クリニックの雰囲気や機能性に大きく影響を与え、患者さんの安心感や治療効果にも関わるため、慎重に選択する必要があります。本章では、内装材料の重要性や選び方について見ていきましょう。
内装材料の持つ重要性
クリニックの内装材料は、単なる見た目の問題ではありません。衛生面、安全性、快適性など、多岐にわたる機能を果たします。例えば、抗菌性の高い材料は感染予防に役立ち、耐久性のある素材は長期的なメンテナンスコストを抑えられます。また、適切な色彩や質感を選ぶことで、患者さんにリラックスした雰囲気を提供できるでしょう。
また、内装材料の選択は、クリニックの運営方針や診療科目とも密接に関連します。小児科であれば明るく温かみのある素材、整形外科なら滑りにくい床材が求められるでしょう。さらに、省エネ効果の高い材料を選ぶことで、長期的なランニングコストの削減にもつながります。
用途に応じて機能性・デザイン性に優れたものを選ぶ
内装材料の選び方は素材・用途に応じて異なります。
床材
クリニックの床材選びでは、耐久性と清掃のしやすさが重要です。待合室や診察室には、人の出入りが多いため、摩耗に強く、汚れが付きにくい素材が適しています。例えば、ビニル系の床材は耐久性に優れ、メンテナンスも容易です。
また、転倒防止の観点から、適度な滑り止め効果のある素材を選ぶことも大切です。特に高齢者や歩行が不安定な患者さんが多い診療科では、この点に留意する必要があります。色調については、落ち着いた色味を基調としつつ、アクセントカラーを効果的に使用することで、清潔感と温かみのバランスの取れた空間を作れるでしょう。
壁材
壁材は、清潔感を演出するため、光沢のある素材や明るい色調を採用するのが好ましいでしょう。また、過度に無機質な印象を与えないよう、木目調の素材を部分的に使用するなど、温かみのあるデザインとのバランスを取ることも考えてみてください。
機能面では、防汚性や耐久性に優れた素材を選ぶことで、長期的なメンテナンス性を高められます。例えば、クロスよりも塗装仕上げの方が、傷や汚れに強い傾向があります。また、診療科目によっては、放射線遮蔽性能のある特殊な壁材が必要になる場合もあるため、法規制にも注意が必要です。
天井材
天井材の選択は、空間の印象や照明効果に大きく関わります。一般的に、白色や淡い色調の素材が使用されますが、それは空間が広く明るく見える効果があるためです。また、天井の高さや形状を工夫することでも、圧迫感を軽減でき、開放的な雰囲気を演出できます。
また、メンテナンス性の高い素材を選ぶこともポイントです。例えば、汚れが付きにくく、軽量で取り外しやすいタイル状の天井材は、メンテナンス性が優れており、清掃や補修の手間を軽減できます。
防音材
クリニックでの防音対策は、患者のプライバシー保護と快適な診療環境の確保に不可欠です。防音材の選択では、遮音性能と吸音性能の両方を考慮する必要があります。遮音性能は音の伝達を遮断し、吸音性能は室内の反響音を抑制します。
例えば、診察室の壁には高い遮音性能を持つ材料を使用し、待合室には吸音性の高い素材を採用するなど、場所に応じた使い分けが効果的です。グラスウールやロックウールなどの繊維系材料は遮音効果があるため診察室などに有効です。
一方、待合室には室内の反響音を抑える吸音性の高い素材が効果的です。ポリウレタンフォームなどの発泡系材料は、表面積が大きく吸音性に優れているため、待合室の壁や天井に適しています。
ただし、防音材の使用は室内の空気質にも影響を与えるため、換気設計との兼ね合いにも注意が必要です。
直接診療にかかわらないところ「だからこそ」戦略性をもって
内装材料の中には直接的に診療内容にかかわらないところもあり、それゆえに検討が後回しにされがちで、業者の言われるがままになってしまうケースが珍しくありません。その一方、だからこそ院長が戦略性をもって「どこにお金をかけて、どこにお金をかけないのか」を考える必要がある項目でもあります
クリニックのコンセプトと関わるような譲れない部分はあると思いますが、診察室とバックヤード間の間仕切りを壁からカーテンに変えるだけで費用削減につながるケースもありますし、院長ご本人のこだわりと、患者さん目線の意見をすり合わせ、許容できるかを細かく判断していくことが重要です。