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  5. 診療科別レイアウト上のポイント

医院レイアウトでの要注意点【診療科目別】

医院を実際に建てようと考えたときに考えなければならないのが、「医院内のレイアウト」です。この記事では、診察室や処置室といった診療上重要なスペースはもちろん、待合室や会計スペースといった、運営上必要不可欠な場所を決めていくうえでのポイントについて解説。特に診療科目ごとに差分が出はじめる領域でもあるため、各科目の院内スペースに関して、大切だとされている要所についてもご紹介します。

診療科共通のポイント

どの診療科を営むかによってクリニックのレイアウトは異なりますが、共通するポイントもあります。ここでは、多くの診療科に共通する、レイアウト上のポイントについて解説します。

(1)受付

受付は、診察室や事務室との連携を考慮し、人・モノ・情報のやり取りがスムーズに行えるよう配置することが重要です。例えば、受付カウンターは、オープンカウンタータイプが望ましく、外部からの出入りと待合の患者さんの様子が把握できる位置にカウンターを設置するとよいでしょう。カウンター内の事務作業やパソコン画面が患者さんから見えないよう工夫し、患者さんの荷物置き場にも配慮が必要です。書類棚は患者さんから直接見えない位置に設置し、各種事務機器のレイアウトも効率的に検討しましょう。

(2)会計

会計は通常、受付カウンターの延長で行います。会計では、患者さんの流れを把握し、機能性とデザインのバランスを取りつつ、セキュリティ対策も忘れずに設計することが重要です。これにより、効率的で安全な会計処理が可能となり、患者さんの満足度向上にもつながります。

また、レジやコンピューター、プリンターなどのスペースを考慮し、高齢者用の座席の確保も必要です。大金を扱う際は待合からの視線に配慮したスペース作りが望ましいでしょう。院内処方の場合、服薬指導の方法や担当者に応じたレイアウトが必要となります。

(3)待ち受け・中待ち

待合は患者さんがストレスなく過ごせる空間づくりが重要です。椅子の配置は受付方向ではなく、中庭や絵画を見られるようにするなど工夫します。

患者さん同士や新規来院者との視線が交差しないよう配慮し、トイレの位置にも注意が必要です。院内情報発信用の設備や、小児科などではキッズスペース、授乳室の設置も検討します。診察室の前に設けられる待合スペース「中待ち」は診察室が離れている場合や特定の診療科で必要となりますが、中待ちは廊下を広げて椅子を設置しましょう。

(4)トイレ

トイレは可能な限り男女別にし、車いす用トイレの設置も検討します。設備面では自動蛇口やハンドドライヤーの導入、壁から少しだけ浮いているタイプの小便器などを採用し、清潔感・清掃性を高めることが大切です。照明は人感センサー式、換気扇は常時作動させるのがよいでしょう。BGMの設置で、利用時の音が漏れないよう心理的に配慮することもポイントです。尿検査用のパスBOXなども考慮し、診察室等との位置関係を踏まえて配置を決めましょう。

(5)診察室

診察室数はドクター数+1が理想的です。基本サイズは幅2.8m×奥行3.5m程度とし、裏動線用通路を確保してカーテンで仕切ります。作業カウンターや各種モニター、診察机、処置ベッドなどを効率的に配置します。電子カルテの場合もPC操作を考慮したレイアウトが望ましいです。エコー検査を行う場合は機器の配置も検討します。入口は引き戸か内開き戸で、ドクターから患者さんの入室が見える位置に設置しましょう。

(6)処置室

処置室は採血や注射、各種検査に対応できるよう設計します。点滴や心電図検査用のベッドをカーテンで仕切るのが一般的です。点滴数が多い場合は別室を設けるとよいでしょう。外科での小手術用に無影灯を設置する際は、天井の補強が必要です。奥には職員用通路と作業カウンターを設け、準備や消毒作業ができるスペースを確保します。また、アンプル類や注射針の保管場所、流し台、オートクレーブ、冷蔵庫、ゴミ置き場なども必要です。具体的な機器や物品を想定して、細かく寸法を検討することが重要です。

(7)内視鏡検査室

内視鏡検査室の設計は、実施する検査の種類に応じて考慮すべき点が変わってきます。上部消化器のみを対象とするか、下部消化器まで含めるかで、必要な機能が大きく異なるためです。

共通して重要なのは、患者さん用の更衣スペースと、処置前後のケアに使用するベッドやリラックスチェアの設置です。また、快適な環境を維持するために、通常以上に効果的な換気システムを導入するのがおすすめです。

検査の精度を上げるため、室内を暗くする必要があるので、窓がある場合は遮光性の高いカーテンを用意し、照明は明るさを調整できるタイプを選びましょう。下部消化器の検査も行う場合は、検査室の近接地に患者さん専用のトイレを複数設けることが望ましいです。予定している検査数に応じて適切に配置しましょう。

内視鏡検査室のサイズの目安としては、約2.7m×4.5mが一般的ですが、洗浄エリアやモニターの配置方法、医師の作業スペースなどによって変動します。

(8)X線室・CT室

X線室・CT室は放射線遮蔽のため、鉛シートによる防護工事が必要です。一般的には厚さはX線室で1.5mm、CT室で2.0mm程度が好ましいですが、詳細は保健所に相談しましょう。

コンクリート壁でも配管穴などには注意が必要です。鉛シート施工時は継ぎ目やドア枠に注意し、照明やコンセントの裏側も覆います。窓には鉛ガラスを使用します。

完成後は漏洩線量測定を行い、結果を保健所に提出します。なお、X線撮影装置の設置には、壁や床、天井の補強が必要な場合があります。CT装置は重量が1t以上あるため、搬入経路と床の構造検討が重要ですので、テナントでの開業時は特にその点に注意しましょう。

(9)MRI室

MRI室は電磁波遮蔽のため、室内全体にシールド工事が必要です。照明は非磁性体材料のものを使用します。超電導タイプと永久磁石タイプがあり、必要な設備が異なります。超電導タイプはヘリウムガス関連設備が必要です。いずれも更衣室と前室が必要で、搬入経路の確保が重要です。装置は6〜9t以上あるため、建物の構造検討も行いましょう。また、室温管理のため、独立した空調システムが必要です。機種選定時はメーカーと細かく仕様を確認し、構造や設備を決定していくのがよいでしょう。

(10)リハビリ室

リハビリ室は、多数の医療機器を設置するため、電気容量の事前計算が不可欠です。テナント物件の場合、ビルの電気供給量を確認し、必要に応じて増設を検討します。

水治療法やホットパック用の給排水設備にも注意が必要です。具体的には、十分な水量と排水能力、適切な温度調整機能、水漏れ対策などが重要です。

バリアフリー設計もポイントで、手すりの設置は患者さんの安全と利便性を高めます。物理療法、運動療法、作業療法、言語療法など、各種リハビリの特性に合わせた設備や空間設計も重要です。

  • 物理療法:発熱量の多い機器に対応した空調設備、適切な電源配置
  • 運動療法:機器固定用の床・壁・天井補強、騒音・振動対策
  • 作業療法:日常生活動作の練習スペース(調理、入浴など)
  • 言語療法:防音設備、プライバシー確保のための個室

ドクター、機器メーカー、設計者で綿密な打ち合わせを行うようにしましょう。

(11)手術室・前室・クリーンルーム

手術室の「クリーン度」は行う手術の内容により決定します。通常のクリニックでは高性能フィルター付きエアコンと適切な換気で十分ですが、より高度な手術にはHEPAフィルター付き空調設備が必要です。

前室の設置や自動ドアの採用でクリーン度を維持しましょう。また、細胞培養室など特殊な用途には、機器配置や動線を慎重に検討します。

内装は消毒可能な素材を使用し、照明や無影灯の設置をすることがポイントです。電気系統は専用にし、ガス配管も計画的に設置します。

なお、全体に通じることですが、必要以上に高スペックな設備は避け、適切な投資を心がけましょう。

診療科別レイアウト上のポイント

レイアウトの細やかなポイントは、診療科別に異なります。ここでは、各診療科で特に注意すべき点について解説します。

消化器内科

消化器内科の診療空間を設計する際は、患者さんの快適性と診療の効率性を両立させることが重要です。

診察から検査・治療へのスムーズな流れを作ることがポイントになります。診察室と各種検査室、処置室の配置を工夫し、患者さんがストレスなく移動できる動線を確保しましょう。

特に注意が必要なのは、下部消化管の検査を行う際のトイレの問題です。下剤を使用する検査では、十分な数のトイレが不可欠です。予想される患者数に応じて、適切な数のトイレを配置することが大切です。

がん検診などで内視鏡検査を実施する場合は、患者さんのプライバシーへの配慮が欠かせません。周囲の目を気にせずリラックスして検査を受けられるよう、個室型の検査室を設けるのも一案です。このような配慮が、患者さんの心理的負担を軽減し、スムーズな検査の実施につながります。

眼科

眼科のレイアウトは手術の有無で大きく異なり、手術なしで30〜40坪、手術ありで60〜100坪が標準です。車椅子利用者も多いため、通路や待合室には余裕を持たせましょう。

診察室は暗室化可能な構造とし、照明制御を工夫します。視力検査は5mの距離が理想的です。検査室では機器のコード管理が重要で、フロアコンセントやOAフロアなどの検討が必要です。処置室には適切な照明と調光機能を備えます。

手術を行う場合はリカバリー室が必要で、手術数に応じたベッド数を確保しましょう。集団説明用の部屋も有用です。弱視患者のため、段差や手すりは目立つ色で強調するなど、全体的に患者の安全と快適性に配慮したレイアウトが重要です。

産婦人科

産婦人科の診察室では、スムーズに対応できるよう、患者さんの動きと各種検査の流れを考慮し、効率的なレイアウトを心がけましょう。診断効率を高めるためには、エコー機器の配置や内診室へのスムーズな移動経路、スタッフの作業エリアなどを綿密に計画することが大切です。照明の調整や壁面の強度確保など、細部にも気を配ることをおすすめします。

患者さんのプライバシー保護と診療効率の向上を実現するため、内診室は診察室のすぐ近くに設けるのが理想的です。できれば診察室と内診室を1対1で設置し、患者さんのプライバシーを守りつつ、医師の待機時間を最小限に抑える工夫が求められます。

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科の診療空間設計では、効率性とプライバシーのバランスが鍵となります。

診療ユニットや検査エリアのレイアウトを工夫し、他の患者さんの視線を遮る工夫が求められます。例えば、待合室からユニットチェアに座る患者さんが見えないよう、パーティションや適切な動線設計を行うことが大切です。

同時に、医師が診療全体を把握しやすい配置も重要です。X線撮影室への移動など、医師の動きを考慮したレイアウトで診療効率を高めましょう。聴力検査室の設置には、観察窓とドアの位置関係に注意が必要です。

また、小児患者の泣き声対策として、防音設計にも気を配るべきです。さらに、使用済み器具の洗浄・消毒エリアを適切に配置し、衛生管理の流れをスムーズにすることも重要です。

皮膚科

皮膚科は、保険診療と自費診療のどちらを主軸にするかで大きく方針が変わります。保険診療中心の場合、診療の効率性を重視する必要があります。そのため、診察室周辺の動線を簡素化し、患者さんの移動をスムーズにすることが重要です。また、待合室は広めに設計し、多くの患者さんに対応できるようにしましょう。

一方、自費診療中心の皮膚科では、パウダールームやレーザー治療用の専用処置室など、特殊な設備が必要になることがあります。これらの設備は後から追加するのが難しいため、開業前に十分な検討が必要です。

内科

内科の場合、幅広い年齢層の患者さんが来院するため、多様なニーズに対応できる設計が求められます。診療の質を保ちつつ効率を上げるため、診察室と処置室を近接させることが有効です。また、受付から診察室までの動線をシンプルにし、患者さんの移動をスムーズにすることも大切です。

高齢の患者さんや身体に不自由がある方への配慮として、バリアフリー設計を心がけましょう。出入口にスロープを設置したり、院内の段差を極力なくしたり、廊下や通路を広めに設計したりすることで、より多くの患者さんが快適に過ごせる環境を作ることができます。

どちらの診療科でも、患者さんの快適性と診療の効率性のバランスを取ることが重要です。

精神科・心療内科

精神科・心療内科では、患者さんのプライバシー保護が重要です。少なからずの患者さんは、通院していることを他人に知られたくないと思っています。そのため、駅から少し離れた場所や、ビルの上層階を選ぶことがポイントで、このような患者さんの心理的な負担を軽減することができます。

落ち着いた雰囲気づくりも大切で、壁紙の色や仕切りの配置にも気を配るとよいでしょう。

小児科

小児科クリニックの設計では、効率性と快適性を両立させることが求められます。特に、子どもの診察は時間がかかりがちなうえ、感染症をはじめとする多種多様な疾患に対応する必要があるため、動線設計が重要です。

診察ユニットを中心に、検査や治療を効率よく完結できる動線を設けることで、患者さんの移動を最小限に抑えられます。これにより、診察時間を短縮しつつ、多くの患者さんに対応することが可能になります。また、感染症対応の観点から、待合室や診察室の動線を分離する設計も有効です。

さらに、診察室からクリニック全体の様子を把握できるようにすることで、医師やスタッフが患者さんの流れを効率的に管理でき、迅速な対応が可能になります。

待合室の広さにも配慮が必要です。来院者数が多い場合でも快適に過ごせる十分なスペースを確保するとともに、親子での来院を想定してテレビやキッズスペースを設置することで、子どもたちの待ち時間中の退屈を軽減し、保護者の負担を軽減する工夫が求められます。

整形外科

整形外科のクリニック設計では、多様な診療メニューと患者さんの特性を考慮した細やかな配慮が必要です。

まず、診療メニューの豊富さに対応するため、効率的な動線設計が重要です。X線検査室や尿検査室、診察室などを適切に配置し、受付から各所へスムーズに移動できるようにすることで、患者さんの利便性が向上します。この際、わかりやすい案内表示を設置することも大切です。患者さんが迷うことなく目的の場所に到達できれば、クリニック全体の効率も上がり、待ち時間の短縮にもつながります。

次に、整形外科を訪れる患者さんの多くが怪我や身体の不自由を抱えていることを考慮する必要があります。松葉杖や車椅子を使用する方が安全かつ快適に移動できるよう、バリアフリー設計を徹底することが大切です。具体的には、院内をできるだけ平面に保ち、段差を極力なくすことが有効です。また、出入口や廊下の幅を十分に確保することで、車椅子やストレッチャーの通行がスムーズになります。

循環器内科

循環器内科では、慢性疾患の患者さんが多いことを念頭に置く必要があります。高血圧、心不全、不整脈などの患者さんは定期的な通院を要し、その都度様々な検査を受ける必要があります。例えば、血圧測定、心電図検査、採血などは頻繁に行われます。このため、一人の患者さんが複数の検査を受けてから診察を受けるというパターンが一般的です。

効率的な診療フローを作ることで、患者さんの待ち時間を減らし、身体的な負担を軽減することができます。多くの循環器疾患患者さんは高齢者であり、長時間の待機や院内での移動が負担になる可能性があります。検査室と診察室を近接させることで、患者さんの移動距離を最小限に抑えられるでしょう。また、息切れしやすい方や車椅子利用者も多いため、移動しやすい環境づくりが重要です。

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科は施設数が少ない割に来院患者数が多いという特性から、診療の効率化が重要になります。そのため、診察ユニットを中心に検査・治療を完結できる動線を設計することが大切です。これにより、患者さんの移動を最小限に抑え、短時間で多くの方に対応することが可能になります。

待合室の広さも重要な要素です。来院患者数が多いことを考慮し、十分なスペースを確保することで、混雑時でも快適な待機環境を提供できます。

脳神経外科・脳神経内科

脳神経外科・脳神経内科のクリニック設計では、高度な医療機器の導入を考慮する必要があります。MRIやCTなどの大型医療機器を導入する場合、十分なスペースと適切な電源容量の確保が不可欠です。これらの機器は後から追加するのが難しいため、開業前の段階で診療内容を明確にし、必要な設備を計画的に組み込むことが重要です。

また、この診療科では患者さんの身体状況に特に配慮が必要です。しびれや麻痺を抱える方が安全に移動できるよう、院内は段差のない平面構成が望ましいです。バリアフリー設計を徹底することで、患者さんの安全性と快適性を確保できます。

さらに、頭痛やめまいを抱える患者さんへの配慮も重要です。照明は柔らかく調整可能なものを選び、インテリアの色も刺激の少ない落ち着いた色調を選ぶことが推奨されます。これにより、症状を悪化させることなく、リラックスして診療を受けられる環境を整備できます。

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