
診療所は薬局とどう連携する?課題と具体例を解説
診療所は薬局とどう連携する?課題と具体例を解説
院内処方が普及していた依然と比べ、現在では多くの診療所が院外処方を選択しています 。この変化は、医療機関と薬局の役割分担を推進する医薬分業という政策と、コスト効率や専門性の重視という背景によって進んでいます 4。このような状況において、院外薬局との連携を深く理解し、活用することが不可欠。医薬協業という、処方と調剤の分離を基盤とした上で、医療機関と薬局の連携モデルも多様化してきています。
診療所と薬局の連携における一般的な落とし穴と課題
診療所と薬局の連携においては、円滑な情報共有と相互理解が不可欠ですが、いくつかの課題が存在します。医師と薬剤師は、診療と調剤という異なる専門分野に焦点を当てているため、コミュニケーション不足や期待のずれが生じやすいのがまず挙げられるでしょう。
例えば、診療所では診断と治療計画に重点が置かれる一方、薬局では調剤と服薬指導が中心となるため、連携が不十分な場合、患者への情報伝達に齟齬が生じる可能性があります。
情報共有の面でも、診療所と薬局で使用する情報システムが連携していない場合、手入力による情報伝達が必要となり、業務の煩雑化や誤入力のリスクが高まります 。また、患者に対する服薬指導の内容が診療所と薬局で異なる場合、患者は混乱し、治療へのアドヒアランスが低下する可能性があります。連携を推進するためのシステム導入などには、初期費用や運用コストが発生する可能性があり、その点も考慮に入れる必要があります。
診療所と薬局の関係を規定する法的および規制の枠組みの理解
診療所と薬局の連携においては、法規制を遵守することが重要です。特に意識すべきなのは、お互いの経済的、機能的、構造的な独立性を維持すること。これは、特定の薬局への処方箋誘導や、医療機関と薬局が一体的な経営を行うことを防ぐためのものであり、具体的には、資本関係や役員の兼任、近親者による経営などが禁止されていま 。診療所が特定の薬局に処方箋を斡旋するような約束をすることも当然ながら禁じられています。
患者紹介料の授受も厳禁です。診療報酬に公的資金が用いられていることもあり、診療所は特定の薬局に処方箋を誘導したり、薬局から患者を紹介してもらい、その見返りに金銭などを支払うことはできません。
連携における倫理的考慮事項
診療所と薬局の連携によって患者の利便性が向上する一方で、「患者が自由に薬局を選択できる権利」も尊重する必要があります。特定の薬局との連携を強調しすぎるあまり、患者の選択肢を狭めないよう、配慮することが求められます。
また、患者情報を共有する際には、事前に患者の同意を得る必要があります。電子的な情報共有を行う場合には、情報漏洩のリスクを最小限に抑えるためのセキュリティ対策を講じる必要もあり、特に個人情報においては細心の注意が必要です。
診療所と薬局の「連携の在り方」
非常に日常的なことにもなりますが、診療所と薬局間の連携を深めるためには、日常的な情報交換を円滑に行うためのコミュニケーションチャネルを確立することが重要です 。処方内容の確認や在庫状況の問い合わせなど、頻繁に発生する事項に関して、迅速かつ正確な情報伝達が可能な体制を構築することで、患者がスムーズに薬を受け取れるようになります。
定期的な合同会議や研修会を開催し、医師と薬剤師が新薬や治療プロトコル、患者事例について意見交換を行うことも有効です。このような協働学習の機会を通じて、相互理解を深め、一貫した患者ケアの方針を共有することができます。
広がる連携の地平:従来のドラッグストア以外の薬局との連携
地域薬局および独立系薬局との連携
地域に根差した独立系の薬局は、地域住民との強い信頼関係を持ち、きめ細やかな患者ケアを提供できるという点で貴重な存在です。これらの薬局は、地域の医療ニーズを深く理解しており、患者一人ひとりに合わせた丁寧なサービスを提供することができます。
こうした薬局のオーナーや管理者と診療所の院長が個人的な関係を築くことは、より良いコミュニケーションと連携につながり、直接的な対話を通じて、互いの診療方針や患者ケアに対する考え方を共有し、協力体制を構築することができるようになっていきます。
連携先の薬局を選ぶ際には、立地だけでなく、サービスの質、専門性、診療所の価値観との適合性など、多角的な視点から検討することが重要です。地域住民からの信頼が厚く、質の高いサービスを提供している薬局を選ぶことが、患者満足度の向上につながります。
専門薬局(地域連携薬局、専門医療機関連携薬局など)の患者ケアにおける役割
地域連携薬局は、医療機関や在宅医療との連携を強化し、患者を継続的にサポートすることを目的に2021年8月より認定がスタートした薬局です 。これらの薬局は、入退院時の情報共有や、在宅医療における薬物管理など、地域包括ケアシステムにおいて重要な役割を担っています。
専門医療機関連携薬局も地域連携薬局と同様に2021年8月からスタートしたもので、がんなどの特定の疾患に対して、高度な専門知識に基づいた薬学的ケアを提供する薬局です 。これらの薬局は、専門的な知識や設備を備えており、複雑な治療を受けている患者に対して質の高いサポートを提供することができます。特定の疾患を持つ患者のケアを強化するために、これらの専門薬局との連携を模索することは有益といえるでしょう。
在宅医療における薬局との連携
このほか、国全体として在宅医療の重要性が高まる中、薬局は患者が自宅で安心して療養できるよう、重要な役割を担っています。薬剤師に求められるのは、在宅患者の薬物療法を管理し、服薬指導や副作用のモニタリングを行うこと。薬局と連携して、薬の配送、在宅での服薬指導、薬の管理支援などのサービスを提供することで、在宅医療を受けている患者の利便性と服薬アドヒアランスを向上させることも期待できます。
患者の診療体験向上まで視野に入れた連携は、医院の差別化にも
患者体験を考えれば、クリニックで受診し、薬局で処方薬を受け取ってまでが「診療」という見方もでき、診療所と薬局が適切に連携ができれば、患者アウトカムの向上、業務効率の改善、地域包括ケアシステムの機能強化に貢献する多くの利点をもたらします。院外との連携を深め、医院の差別化要因の一つとして検討してみても、良いかもしれません。