2016/11/17 医院経営 医療法人になるには?
医院経営の方法として、個人事業主によるものと、医療法人によるもの2種類があります。以前ご紹介した「個人事業主と医療法人の違い」では、診療所の約43%が医療法人化していることが分かりました。今回は、医療法人になるための条件、どのようなステップがあるのかについてご紹介します。
医療法人は社団型と財団型の2種類がありますが、ほとんどの診療所は医療法人社団になりますので、こちらに絞ってご説明します。
医療法人社団は、原則は医師であれば誰でも自由に設立が可能です。例外として、欠格条項で次のような制限が設けられています。
・医師法、医療法などに違反して罰金以上の刑の執行が終わってから2年以内の方
・刑事事件を犯して禁固刑に処せられている方
・著しく判断能力が乏しい方(成年被後見人の方)
医療法人を設立しようと思った場合、まず先生を含めて3名以上の設立者を集める必要があります。通常、医療法人社団の設立者は、全員が成立後の医療法人社団の社員となりますが、その人数は3名以上でなければならないという規定があるためです。なお、診療所の場合は、常勤医師が1人でも設立できる「一人医療法人」が一般的ですので、その他の方は医師である必要はありません。
医療法人社団は社員で構成される社員総会と、理事会を設置する必要があります。社員総会で理事を選び、理事会に人員や財産などの管理、運営を委任することが一般的です。理事会では、理事長(多くの場合は院長先生)を選び、医院運営を行います。
先生単独の判断で医院運営を行えた個人開業の時代と比べ、重要な事項は社員総会や理事会で決定することになります。仮に、先生の意に沿わない決定がされたとしても理事会の決定には従わなければなりません。
医療法人を設立するためには、各都道府県知事の許可が必要になり、設立の申請を自治体に行わなければなりません。
ところが、この手続きは各都道府県によって全く異なります。申請の受付時期や回数や、説明会・事前審査の有無などの詳細は、法人を設立する都道府県のホームページに掲載されていますので、必ずご確認ください。中には、千葉県や愛知県のように、説明会への参加が必須になっている場合もあります。
東京都の場合は福祉保健局 医療政策部 医療安全課 医療法人担当に問い合わせることで不明点などを教えてくれます。
都道府県 | 設立認可申請の受付回数 | 事前(予備)審査 | 説明会 |
東京都 | 年2回(9月、2月) | なし | あり |
神奈川県 | 年2回(5月、10月) | あり | なし |
埼玉県 | 年2回(8月、1月) | あり | なし |
千葉県 | 年3回(5月、8月、12月) | あり | あり※参加必須 |
大阪府 | 年2回(4月、10月) | あり | あり |
愛知県 | 年4回(5月、8月、11月、2月) | あり | あり※参加必須 |
平成28年度の場合 出典:各都道府県のホームページより m3.com開業・経営作成
それでは、適切な時期に不備がないように書類を自治体に提出して手続きさえすれば、必ず医療機関は設立できるのでしょうか。実は申請はできても、審査が通らないことがあります。こちらも都道府県ごとに基準があるとされています。
・黒字が○年以上出ていること
・○か月分の運営資金があること
上記は一例ですが、新規で医院開業をした直後に法人化をすることは現実的には難しいことがお分かりいただけるかと思います。医療法人化に関しては、医院経営に精通した税理士が多くの情報を持っています。これから開業をご検討の先生で、将来の法人化を目指される場合は早めの情報収集と周到な準備が必要といえそうです。